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ネフィリム・ヒストリー  作者: 机上森
狭間の街
2/13

大食い女と猫の目少女

両開きのウエスタンドアドアを潜ると、アルコールの匂いがツンと鼻を挿した。中には大勢の人たちで賑わっている。炭鉱夫達が笑い声を上げ、酒を飲み、肉に喰らいついていた。騒がしいかったが、どこか雰囲気が暗かった。無理に笑っているようであり、誰もの目も暗かったのだ。

「昼間から酒か?」

メイギは呆れながらもテーブルに座る。腰に下げた剣が椅子に当たりカタンと揺れた。

「どうでもいいでしょう。それより御飯よ!」

アンナはメニュー表を開き、中に書かれた食事の内容に全神経を注ぐ。

「それにしても仕事もせず酒とは、よほど儲かるのか……」

「違います。仕事が出来なくて荒れているんです。酒で気分を慰めているんですよ」

メイギに水を出したウェイトレスの口調はきつかった。怒っているようである。

ウェイトレスはやや吊り上った猫の様な目をした愛らしい少女だ。肩まで伸びた茶色の髪がふわりとして、白いフリフリのエプロンをつけたメイドのような姿をしていた。

「この街の人を悪く言わないでください」とムッとした表情をしている。

「いやごめん、軽率な言い方だった。だけど軽率ついでに何があったのか、教えてくれよ」

メイギは、少し苦みのある水を飲んでからウェイトレスに聞いた。

「ここにいる人たち炭鉱の人たちなんですけど。今は野盗が出るっていうんで、近づけないでいるんですよ。本当は働き者のいい人たちなのに、野盗たちが鉱山に巣食っているから……実際、街の人も何人も被害にあっているんです。怪我だけじゃなくて連れ去られた人だって……」

「野盗? ならキョウカイシティ自慢の騎士団を派遣すればいいだろ? NFを完備している精鋭部隊だと聞いているぞ。街一つにNF三機など、なかなかない。流石独立自治を貫く街だ」

「既にやっています。二機出しましたが、全て大破しました。残り一機は緊急時に備えています。野盗もNFを備えているらしいのです。どうやら巨悪なNFみたいで……」

ウェイトレスは首を振って応えた。どこか憂いを秘めた悲しげな声だった。

「なら、ノア王国にでも、グリム王朝にでも泣き付けばいい。どちらもキョウカイの資源を狙っているだろうから、絶対に協力してくれるさ。どちらかと言えば、ノア王国がいい、あそこの方がまだ節度がある。歴史のある国だからな。グリムなんかに依頼したら、根こそぎ持って行かれるぞ」

「ノア王国ならもうしました。でも音信がなくて」

「“そうだったな”」

メイギはチラリとウェイトレスを見る、エプロンに隠れているが意外と胸がある。メニュー表に喰らいつくアンナに視線を移す、こちらの胸は一つ物足りない。というかメニューを早く決めろ。

「あの……“そうだったな”って知っているんですか?」

「噂くらいは聞くさ、俺だって“リッター”だからな」

ウェイトレスの質問に、メイギはチラリと腰に下げた剣を見せて答えた。

剣はお辞儀でもするように、きらりと輝いた。それは通常の光沢ではなく、プリズムのような不可思議な光り方だった。

ウェイトレスはその剣の正体も光る分けも、知っているようであった。

「それって……“召喚剣”じゃないですか!」

目を丸々と広げ、驚いた口調でメイギの剣に指差しするのだ。

「ふふん、そうさ、これが召喚剣、NFを呼び出す必殺兵器にしてリッターの免許書さ」

メイギはニヤリと笑って、剣、召喚剣を掲げた。刀身はやはり複雑に光っている。

召喚剣それはNFを呼び出す魔法剣のことである。

NFと同じ材質であるエンジェルジェムを素材として魔力によって錬成される剣であり、他のどんな武器よりも堅く、そして鋭い。どんな鉱物も魔物も切り裂くといわれる、最強の剣。

だがその最大能力は召喚剣の名の示す通り、NFを瞬時に呼び出すことにある。

剣を振りながらその刀身に刻まれたNFを呼ぶと、瞬時にNFを転送出来るのである。

目の前にNFを瞬間移動させることが出来るのだ。まさしく召喚である。

有効転送距離は数キロメートルが限界なためにどこからでも呼び出せるわけではない。

だがNFを前線まで移動させなくてもリッターのみが先行し、先端が開いたときに召喚するなど様々な運用が可能であり、NFが最強たる所以はこの召喚剣による所も大きい。

特に本土防衛の場合はNFの移動ルートを設定していなくても、保管庫から瞬時に呼び出せるため、“NFは最強の守りの要”とも言われている。各国の主要都市に必ずNFの保管庫があるのは、リッターがいつでも呼び出せるようにするためである。

召喚剣のないリッターはリッターとは認められず、NFの無い召喚剣はただの名刀に過ぎない。

メイギの持つ召喚剣は柄が金色で、片側にしか刃がなくまた薄く反り返っている。東洋で作られている刀と呼ばれる形状に似ていた。

そして刀身に走った波のような刃文が宝石のようにキラキラと光っていた。

「凄い……こんな召喚剣……見たこともない」

ウェイトレスはため息を着きながら、メイギの召喚剣を見ていた。

「こんな召喚剣、見たこともない? 他の剣なら見たことがあるのか?」

「えっ! いや、言葉のあやっていうか……。ほらっキョウカイシティにもNFはあるし、そこのリッターさんも召喚剣とは違って、何というか素敵だなと思って」

ウェイトレスは慌てた様子で汗を流しながら、必死に弁解をした。

「そんなに慌てなくてもいいだろ、軍関係者なら誰だって召喚剣を見るさ」

「わっ私はしがないレストランの、しがないウェイトレスですよ!」

ウェイトレスは顔を真っ赤に怒鳴る。

メイギはその様子は観察する。そしてさっきから動くたびに震える胸を見ながら、

「冗談だよ。そうだ名前を教えてくれないか、お近づきのしるしにさ。俺はメイギ・ケニーヒ」

「名前ですか、いいですよ。私は凛・アーミティッジ、凛って呼んでください」

「じゃあ俺はメイギでいいよ。凛」

「はい、メイギ、ではそろそろご注文よろしいですか」

「それはこちらのアンナ嬢しだいなんだけど……ん? 何睨んでいるんだ」

アンナは頬をピンク色に膨らませ、何かを訴える様にこちらを見つめていた。

凄い目つきであった。瞳の奥に執念の炎が紫色に宿っているのだ。

アンナの白く粉雪のような肌が溶けてしまいそうなほどの執念の炎だった。

「お、怒っているのか? 何でだ? 俺はお前がメニューを決めるのを待っていたんだぞ?」

メイギは顔を引きつらせながらも必死に弁解する。何を弁解しているのかは当人にも分かっていない。アンナが何を怒っているのかも知らないだから当然であろう。

アンナは火を噴きそうな勢いで口を開く。

「一緒に来た女の子をほっといて、ウェイトレスを口説くなんてすごい根性しているじゃないの!」

「それはお前がメニューばっかり見ているからだろ! それにこの辺りの情報収集は必要だろ」

「さんざん話したあげくに、途中から自分はリッターだと自慢して、しまいには、お近づきだとか言って名前を聞き出しといて、何が情報収集よ。夜のゴールを決めるための、綿密な調査のつもり?」

「誤解だ、アンナ。そういう多目的な意味はない。ただの時間つぶしだ」

「誤解なんですか? 私は別に構いませんけども」

ウェイトレス、凛・アーミティッジはにやにや笑いながら口を挟む。

「ほーらやっぱり、この色摩リッターめ! これはお仕置きが必要ね!」

「何をするつもりだ……お前は」

燃え上がるアンナを見てメイギは、顔を引きつらせた。

「昼食量倍プッシュよ! かつてないほど食べると思いなさい。じゃあまず、スパゲティにハンバーグ、かつ丼に、牛とじ丼、お寿司に、サラダ、天丼に、塩焼きそば、各二人前ずつで!」

「二人前? それは、半分は俺の……」

「全部、ワ・タ・シ! カスほども残さないと思えっ!」

「えーでは繰り返します。スパゲティにハンバーグ、かつ丼に、牛とじ丼、お寿司に、サラダ、天丼に、塩焼きそば、各二人前ずつで宜しいですか? メイギ様は何を注文されますか?」

凛は目配せする。

「じゃあ、俺は……」メイギは残った水をぐっと飲んで、「水のおかわりで」と肩を落とした。


「いやそれにしてもメニューの多いレストランだな」これはメイギの愚痴である。


ガツガツガツ、ガツガツガツ、ガツガツガツ。けたたましい音とともに、大量の食事がその口に入り込んでいった。食べたものは口から食道に、胃から腸へと流れていくのだろうが、とてもその少女の小さな体に収まるとは思えないほどの量が咀嚼されていった。

ガツガツガツ、ガツガツガツ、ガツガツガツ。アンナは止まらない。嫉妬の炎に燃えるアンナはその愛らしい口を一杯に開けて、次から次へと食事に喰らいついた。

ガツガツガツ、ハンバーグ。ガツガツガツ、天丼。ガツガツガツ「おかわり!」

アンナは唾をまき散らして次の注文を取る。

「えーと、ランチタイムだから、サービスとか、ああそんなサービスはない? そりゃね、不景気だもんね。野盗いて仕事にならないもんね。大変だよね。なるほど、だったら全部メニュー表通りの金額でいいのかな。アンナちゃんおかわりはちょっとまってもらっていいかな? 財布さんと相談した方がいいと思うんだ」

「メイギのばか! 知らない、おかわり!」

高速で金額の計算をするメイギだが、計算は追いつかない。

アンナの食べるスピードと注文速度が尋常ではないのだ。

「破産だ。破産だ。破産だ。小遣い一杯もらってこっちに来たのに。早くも破産だあああ!」

メイギは財布を投げ出して頭を抱えた。その姿は無残そのものである。財布は空っぽなのだから無残なのはあっている。経費はかさむ。アンナは咀嚼と注文を繰り返しているのだ。

ガツガツガツ。ガツガツガツ。ガツガツガツ。

その音色がなるたびに借金が増えていると自覚するのがメイギなのである。

ガツガツガツ。ガツガツガツ。ガツガツガツ。


目の前には屈強な強面の店長がいた。ニコニコとしているが眉間にはしわが寄っている。怒りを必死に隠しているのは明確だった。なぜ怒っているのだろう、メイギはそう考えるが答えは明白だ。

「で、あれだけ食って、お金がないとおっしゃられるのですか、お客様」

「別にお金がないわけじゃないんですよ。途中に無くなっただけですし、いや無いんですけど」

メイギは目をそらした。端正な顔立ちが今は焦りで歪んでいる。汗はだらだらである。

どうしてこうなったのか。考えるまでもあるまい。アンナが食べ過ぎたのである。上限額を超えて食べて財布は空。なおも食べ続けてあえなく無銭飲食となったのである。

払えないことを告げると、ウェイトレスの凛から、目の前の店長に変わったのである。

禍の根源であるアンナは、今は安らかに椅子の上で寝ている。

「で、どうやってお支払いなさるんですか、まさか逃げるわけじゃないですよね」

眉間を震わせて店長は聞いてくる。言葉こそ丁寧だが、明らかに怒気がこもっている。

「なんでもしますよ。なんでも……。だから仕事で支払わせてください」

「なんでも、ですか」

店長はニヤリと笑う。

『これはまずい。失言だったか!』メイギの脳内に瞬時に妄想が駆け巡る!

女装させられて、給仕をさせられる姿! 夜、様々なオジサマにもてあそばれる姿!

『ああ、俺ってどっちかと言うと美形だし、女の子にも間違われるし、着やせするタイプだし、その手のオジサマには人気あるらしいし、ああどうしよう、俺、このままじゃ身売りされちゃう!』

勝手に妄想を膨らませて七転八倒するメイギ。

店員は呆れ顔で、「あんたリッターなんだろう。だったら野盗を追い払ってくれや」と言った。

「え? 野盗? そんなこと……」

メイギはきょとんとした顔になった。それは残念そうな安堵したような複雑な表情であった。

「そんなの駄目ですよ! 死にいくようなものです!」

様子を見守っていた凛が飛び出してきた。その瞳は困惑で揺れている。

「店長さんも変なこと言わないでください! メイギさんもそれは無理だと言ってください!」

凛は動揺し声を震わせて、店長とメイギに懇願する。

「そういうがな、凛ちゃん。このメイギって奴は召喚剣を持つリッターなんだろ? だったら戦う力あるってことだ。戦力は少しでもあった方がいいだろ」

店長は凛をなだめる様に諭す。そして今度はメイギに向かって言ってのける。

「なあアンタは戦えるんだろ? やってくれるだろリッターの坊や。無理なら逃げてもいいんだぜ。凛ちゃんに免じて許してやってもいい」

そんな挑発にも動じることなくメイギはニヤリと笑って言うのだ。

「逃げても腹が減るだけだ。いくら食べ過ぎと言っても、野盗を倒せばお釣りは出るんだろう? だったらその釣りで俺にも何か一品作ってくれよ」

決して勢いで言っているわけではない。NFを持つ野盗を甘く見ているわけでもない。

メイギには確かな自信があった。誰が来ても負けぬという確信があった。

そもそも、ここキョウカイシティに来た目的は……。

「野盗はいつ出るんだい」

メイギの質問に「夜中さ」と店長は答える。

「じゃあそれまでそこいらを散策させてもらおう。安心しろ、逃げはしない。その証拠にその食い倒れ女を置いていく! そのゴミ女を置いていく!」

メイギは清々するといった風にアンナを指差して、レストランを後にした。

「いや置いていくって、それはそれで迷惑なんだけど」

店長のため息に、うんうんと他のお客も賛同するのだった。


砂利道であった。キョウカイシティは栄えた街であったが、すべてが舗装されているわけではなく、荒れた場所も多い。メイギは石を蹴り飛ばして、行くあてもなく歩いている。

「そろそろ後をつけるのも飽きたんじゃないか? 隣に来てくれると嬉しんだが」

ぼさぼさの黒髪を揺らし、メイギは振り返った。

「ばれていたんですか……」

路地裏から出てきたのは、レストランでウェイトレスをしていた凛・アーミティッジであった。

凛はレストランから出ているにも関わらず、フリフリのエプロンのついたメイド姿をしている。猫のように、探るような上目使いが何とも父性本能そそる。

どこか不安そうな表情だから守ってやりたくなるのだ。

だが何故後をつけていたのか……それは知る必要があった。メイギは流し目で凛を見て、

「騎士であるリッターは五感だって鋭いんだ。素人の追跡なんてすぐに気付くさ、三十分前くらいから着けてきただろ?」

「いや貴方がレストランから出てからすぐです。一時間前くらいです」

「あら、そう。でもせっかく俺がカッコつけたんだから、君も嘘ついてくれてもいいよね」

メイギは大ボケかまして、ずるっと、足を滑らせた。


雲一つない晴天である、絶好のデート日和ともいえる。

メイギと凛の二人は街並みを歩いていた。

キョウカイシティの大通りである。

赤い洋瓦の瀟洒な家の立ち並ぶ美しい光景だった。昼食の時間、シチューの匂いが鼻をそそる。

少し視線を上げれば鉱山も見える。壮大な頂が天空に吸い込まれるように伸びていて、これもまた美しい風景であった。本来なら採掘作業で活気に満ちているのだろうが、今は物音一つない。

野盗の襲来で閉山となっているのである。

平日だというのに、男たちが暇を持て余しているのもそのせいであろう。

人は多いが活気はない。それがこのキョウカイシティの現状であった。

「で、どうして俺を追っていたんだい。逃げるつもりはないんだが」

「止めに来たに決まっています。店長に謝ってください。今なら許してくれるはずです!」

優しげな視線を向けるメイギに、凛は食いつくように答えた。

彼女が本心から心配してくれるのが分かる。食い倒れて借金を重ねるアンナとはわけが違う。

『こんな娘もいるんだな……。パートナー選び間違ったかな』

メイギは思わず涙ぐむ。いろいろ辛かった。

お腹も空いていた。アンナは一人で全部食べたのだ。

「やっぱり本当は怖かったんですね」

凛は何か勘違いしたようだ。メイギの頭を優しくなでる。

「いや違う。巡り合わせの悲運を憂いていただけだ。別に野盗が怖いんじゃない」

メイギはバックステップで後ろに下がる。流石騎士たるリッター、凄まじい速さだ。

女子に頭を撫でられるというのは気恥ずかしかった。話題を変えようと口を開く。

「野盗はNFを持っているんだ。だったらリッターもNFも少しでも多い方がいい。協力するさ」

だが凛は首を振る。

「本当はNFなんて持ってないでしょう。召喚剣しか持たない。偽のリッターはよくいるんですよ」

「なんでそう思う! そりゃ戦場から召喚剣だけを盗み出すような、偽物もいるが俺は違うぞ」

メイギは自慢の剣を取り出して、俺は本物だと豪語する。まさか偽物だと勘違いをされているとは思っても見なかったのだ。ボロボロの服を着ていても、心は錦。リッターとしての品格は持っていると自負している。それが偽物だと? 決して許せることではない。

リッターとは彼にとって誇りそのもの。あらゆる困難に立ち向かう強き者。誰にも束縛されぬ自由人。今もそのようであるとも思う。そしてこれからもそのようにありたいと思う。

だが凛は勘違いをしている。

メイギは驚きから震えてしまった。

それがかえって嘘のようにも見える。下手な演技をしているように見える。

「だって貴方NFをこのキョウカイシティにNFを持ち込んでいないでしょう? いくら召喚剣で空間転送が行えるといっても、転送距離には限界があります。流れのリッターなら必ずNFを持ち込むはずです。NFを運搬する貨物車に乗せて街を入れるはずです。実際このキョウカイシティにはNFを保管する場所だってあります。有料ですけど」

凛は子供の嘘をたしなめる様な慈愛に満ちた口調である。

「召喚のための有効射程距離は数キロだ! 街の外に置いているってこともあるだろ!」

「じゃあ街の外にNFを放置しているってこと? 野盗もいるというのに、それじゃなくても、盗んで下さいと言っているようなものでしょう?」

「大丈夫な所に置いてあるんだよ……」

痛いところをつかれて、メイギはオロオロとしてしまう。

あまりツッコまれると、困るのだ。詳しくは説明できないわけがある。

本当にNFは持っているのだが……。

「ならここに貴方のNFを呼び出してください。ここにリッターの証を立てて下さい」

自分のNFをここに出すことなど出来ないわけがある。

「市街地で巨大兵器であるNFなんて出せるわけがないだろ」

メイギは如何にも正論のようなことを言った。だがこれは本音ではない。

「なんだかんだ言って、NF出さないんですね。やっぱり嘘なんですよね」

「ええい! 信じるも信じないもお前の勝手だ!」

メイギは大きく口を開けて叫んだ。

凛は最初から信じる気などなく、こちらも証拠を提示することはできない。

最早会話を打ち切るしかないのだから、声を荒げるしかなかった。

「勝手です! でも私は心配なんです。これ以上誰も関係ない人を巻き込みたくないんです!」

凛は大粒の涙を流し、叫び返した。

「どうして、そこまで心配してくれるんだ……巻き込むって言ったってな」

メイギは虚を突かれていた。凛とは、客と店員以上の関係ではないはずだった。

にも関わらず泣いてまで引き留めようとしてくれている。

「いったい、なんだってンだ」

メイギは頭を掻くしかなかった。

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