雷雨と虚勢
アスファルトから
蒸すような熱気
風のない帰り道
むくむくと起き上がる雲と
唸り始めたごろごろ
遮られた光によぎる不安は
いつだって的中するから
走る閃光
瞬間の目映さの中での
地響き
土砂降りの雨が僕を打つ
さっきまで
ぎらついてた太陽
呆気なく覆われて
気まぐれな夕立に
いつだって逃げ遅れてる
こうなるような気がしてた、って
言うのは簡単で
傘を置いてきたのは
明らかに僕の驕りで
綱渡りの毎日
降られては
玄関にある乾いた傘が
羽を閉じたまま
雨を想っている
肌に張り付くシャツに
靴底で踏みしめる雨水
しょうがないさ、って
言うのは簡単で
竦めた肩をおろして
しょげた歩調で家路を行く
どうしたって
続かない雨雲を
罵ってみたところで
こうなるような気がしてた、って
身構えて張る虚勢
ほんのちょっとの手違いで
忘れてしまった傘が
玄関で僕を
一通り嘲りながら
濡れそぼつこの体を
少しだけ悔しそうに迎え入れる