スキル
光が収まり、だんだんと視界が開けてきた。クラスメイトは泣いたり、呆然としていたり、失禁していたりするがみな驚きと不安以外の感情はないようだ。
「どどどどどこだここは?」
いかんいかん。クールキャラの俺が取り乱してしまった!!
「意外だ。君は平静を保ててると思ってたのに……」
「いやいやいやいや超平成だし!!まだ10代だし!!!!」
「漢字が違う気がするんだが……まぁいいや。とりあえずみんなを冷静にするのを手伝ってくれないか」
「断る。むしろ何でお前はそんなに冷静なんだよ。」
「これでも動揺してるつもりなんだけどね。」
「なら動揺してる風に振舞えキモい。」
「ははは、辛辣だな。じゃあ僕だけで動くよ。」
「で、ここはどこなんだ?」
「わからない……おそらくどこかの教会のような場所なんだが。少なくとも日本ではないな。」
「じゃあ何本だ。」
「いい加減冷静になってくれ……見た感じ僕の知っている宗教ではなさそうだ。」
「原因はあの光か……信じたくはないが瞬間移動してしまったようだな」
「僕もそう思う。問題はどこにきたかだ。」
「あぁ、お前光で書かれていた文字がどこのかわかるか?」
「もちろんわからなかった。僕の中である仮説が立っているんだけど言ってもいいかい?」
「あまり聞きたくはないが念のため教えてくれ。」
「ここは異世界だ。」
「ウケた。」
「おい。」
「真剣な顔して何が、ここは異世界だ、だ。やめてくれ腹が痛い。」
「神倉くん、これどういう状況なの?」
愉快に話し合う俺たちをみて立花がこっちへ来た。おそらく何か知っているのかと思ったんだろう。
「いやそれが僕たちにもわからないんだ。」
「まぁ、とりあえずクラスの人気者のお前と立花でうるさいやつらを静かにさせてきてくれ。話はそれからでもできるだろ。」
「よ、横寺くん!!」
「わかった。いこう香織。」
「む、無理だよ!!緊張してるよ!!」
「目の前でポイントを稼ぐチャンスだよ。さぁ、行こう。」
なにやらわけのわからないことをいいながら人気者たちは教会の壇上らしきところに上った。
「みんな一旦冷静になってくれ!!どうやら俺たちは何者かによって異世界に召喚されてしまった!!帰る方法、そしてしばらくどうしていくか考えるためにみんなの知力を借りたい!!どうか協力してほしい。」
さすが人生イージーモードくん、みんな本当に静かになったよ。これが俺だったら「うるさいキモい死ね!!」って返ってきてみんな共通の敵を前に団結しちゃうよ。団結しちゃうのかよ。
「とりあえず状況を整理しよう。まず僕たちは教室にいた。すると横寺がドアが開かないということに疑問を感じた。そして地面が光りだして気づけばこの場所にいた。間違いないね?」
全員頷く。数人、横寺って誰?っていっていたやつがいたのは聞かなかったことにしておいた。
「そ、その……ここがどこかわかる人いますか?」
立花が恐る恐る尋ねた。無論返答はない。
「現状がどういう風なのかわかる人はいないってことか。とりあえず今後どうするかについて決めよう」
「神倉くん、私こんなもの見つけたんだけど。」
学級委員の女子のほう、神崎葵がポケットから紙切れを取り出した。
「なんかスキル?みたいなのが書いてあるの。周りのこと見比べても全然違うの。」
「なるほど、みんなポケットを調べてくれ!!」
俺も調べてみる。メモ帳サイズの紙切れに《生存》と書かれていた。どうやら俺のスキルは生存らしい。実にサバイバル向けのいいスキルじゃないか。
「ふぇ!!?」
突然ある女子生徒が叫んだ。
「どうしたんだい?」
「なんかじーっと見てたらふわーって文字が出てきたの!!」
「みんな試してくれ!」
なんて頭が悪い説明だ……と思ってじーっと見てたら本当にふわーって文字が出てきたよぉ。。。ふわぁ
《スキル生存:ゴキブリを超越した生命力を得る。》
なるほど……いらねぇぇぇっぇぇぇぇえ!!!
「みんな、できれば出席番号順に自分のスキルと詳細を教えてほしい。恥ずかしいのはわかるが生き残るためだ!!」
ま、まわりも似たような能力だよな?俺の捨てスキルじゃないよな?っと思い出席番号順に聞いているとみんな、化け物じみたチートスキルだった。中でもずば抜けていたのが神倉、神埼、立花、そして不良の倉田壮だった。倉田はクラスの問題児であり3留していたが、今年なんとか高校を卒業することに成功したらしい。
順に《勇者:なんだかんだあっても悪との戦闘で負けない。死にそうになったら覚醒する》、《剣士:剣に自然災害をまとわせることができる》、《絶対回復:死んでない限り一瞬で全治させる》、《絶対王政:相手に無条件で言うことを聞かすことができる。ただし一度きり》といった内容だった。
逆に驚くほど使えないのが俺と景山だった。景山の能力は《影マスター:影の形を変えることができる。》という意味わからないものだ。影を物質化することはできないらしい。
その他大勢はどれも利便性に優れたものばかりで《料理》や《建築》などといった生活に必要なものから《魔法》などの戦闘に役立つものまであった。
そんなこんなで俺たちの異世界生活は始まった。