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愛という形はそれぞれで、いつも俺は惑わされる。




昨日の夕方、アイツが風邪をひいて地元の飲み会に来ていないなんてどうでもいい連絡を男友達がよこしてきた。

それに対して電話をしてしまった自分に少し腹を立てていた。

いや、自分に、ではないのか。

そんなことを考えつつ週明けの月曜、少し憂鬱に出勤し、始業の挨拶もそこそこに上司に呼ばれた。





「九州、ですか。」


「そう。九州。酒が美味いぞー!」


「はは、ははは。そうですね!酒、強くなって帰ってきます!」




噂では聞いていたけど、なんなら少し前に人事面接も終わってはいたけど、転勤族って言葉が自分の身に降ってくる単語だとはまだ実感をもてていなかった。




ああ、こんな報告を聞いたらアイツはどんな顔するんだろう。

ここ一年近く、すれ違った関係を送っていることは何となく気付かないふりをしている。




彼女のことは、それなりに好きだ。

だけど、それは一時的なもののような気がしてならなくて。いつも、なんとなく頭に残ってしまうのはアイツの笑い声と美味しいものを食べた時やみんなで馬鹿騒ぎをしている時の幸せそうな笑顔で。

いつからこんな風になってしまったのか。

あいつの何がそうさせるのか。

同時にどうしても、この気持ちを認めたくない自分がいて。




だからこれは、好機なのだろう。

物理的に離れれば、こんな思いだってさっぱりと離れるに違いない。

それでもまだ、こんな風にふとあいつの顔が浮かぶ時にはまた考えてやってもいい。


今日はまだ週初めなのに、このどんよりとした気持ちとどう向き合えばいいのだろうか。









「俺さ、転勤することになった。」


「え、、、。」


2つ年上の彼女は、いわゆる結婚適齢期と言われている世代らしく顔が青ざめるのがわかった。


そこそこの大手企業に勤めている、温厚な彼氏。自分で言うのも変だけれど、彼女が周りに自慢できないことはなかったのではないかと思う。


「場所は、どこへ?」


一口、目の前のアイスコーヒーを口に含んでからしっかりと目の奥を見つめてくるこの女性と俺は心から向き合えていたんだろうか。



「九州。鹿児島だってさ。」


「、、、そっかぁ。」


「うん。」




賢い男だったらこの後、僕についてきてくれるかい?なんて一言を付け加えるんだろうけど、俺にはその言葉を発する気力も思いも持ち合わせていなかった。




「遠距離に、なっちゃうね。」


彼女の口から「遠距離」という言葉を引き出す小狡い男でしかない。

きっと聡明な彼女はそのことに気付いているのだとも思う。

きっと妻にするならば、何の非の打ち所がない物分かりのいい女性。




だけれど、


「そうだね。申し訳ない、、。」



今の俺には、謝ることしかできない。

その後の会話もあまり続かないまま、彼女がコーヒーを飲み干したことを確認して伝票を持って席を立つ。元々、夕食を食べに行きたいと彼女から誘いがあって応じた逢瀬だったが、この気まずさに耐えきれず、また会社に戻るという嘘をつき、店の前で別れた。


彼女の背中を見つめながら、週末会う予定になっている蓮田にどう伝えようか。

どう伝えれば傷つけないで済むのか。そんなことが頭をめぐる。





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