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結局、家に帰ってきたのは日曜日の昼過ぎだった。


オカンと成り果てた大坂は、甲斐甲斐しく熱風邪をひいた私を看病してくれた。

冷えピタとスポドリをはじめとして、体温計まで買ってきた。


すでに体温計を買ってきてもらった頃には熱は37.5℃になっていたのだけれど(体感でピークは38℃越えだった)、それでもありがたかった。



土曜日の夜に予定していた地元の飲み会も断り、帰るつもり満々の私を「もう少し安静にしないと来週の仕事に響くぞ」と脅し半分、オカン半分の大坂に諭され、一人暮らしの風邪の孤独さを痛感している私はその言葉に甘えた。


そして先ほど、家の前までタクシーで私を送り届けチャラ男もといモテ男大坂は帰っていったというわけである。



両手に抱えさせられたビニール袋には、既製品のおかゆ、雑炊、ゼリー、ヨーグルト、冷えピタ、スポーツドリンク、エネルギードリンク、などなど至れりつくせりのラインナップが入っていた。

それらを冷蔵庫に入れることも鬱陶しく、今の机にどかっとおくと、今度こそ自分の家のベッドにダイブ。


2日ぶりの我が家。落ち着く。




それにしても、大坂のオカンぶりは笑えた。

感謝しかないけれど、今度何を奢って恩返しをしようかな。なんて考えながら気付けばまた眠りに落ちていた。







ブー、ブー、という鈍い着信音で目覚めたのは、18時。


スマホの画面には、「ハル」の文字。




「え?!」


焦って着信ボタンを押すと、


ー 生きてる?


と呑気な声が聞こえてきた。



「あ、うん。どうにか。生きてる。」



寝起きということもあり、久々の電話ということもあり、なんだか頭がうまく働かない。




ー 風邪なんだろ?ご飯とか大丈夫?



「ん?!うん。あ、えっと、さっきまで職場の同期が看病しにきてくれてて。うん。」



間違ってはない。ちょっと事実を曲げただけだ。

昨日飲んでいた地元の誰かから聞いたのだろうか。素直に、嬉しい。



ー お〜。そっか、なーんだ。どう?熱は


「うーん。わからん。とりあえずたくさん寝たよ。」



ー ふっ。それはよかった。ちなみに同期って男?


「うん。男。だけど、別に普通の男。」


ー 普通の男ってなんだよ!w


妙に電話口でウケている。ケラケラと笑うハルの声が心地いい。



「心配してくれたの?」



そんな声を聞いて、ちょっぴり調子に乗りたくなった。



ー 一応な。まあでも、お前にも看病してくれる男ができて俺も安心だよ。




「そういうんじゃないって。」




調子に乗って、、後悔する。

なんという、お決まりのパターン。

あぁ、さっきまでの幸せな気持ちがしょぼしょぼと小さくなっていく。



ー いっつも週末は呑んだくれてばっかなんだから、たまにはゆっくりできてよかったな。



「うん。まあまた元気になったら飲みますけどね!てか飲も!」



ー じゅうぶん元気そうじゃん。じゃ、また今度な。


「うん。」


ー じゃ。


「あ!ありが」



全部を言う前に、無機質な音が響く。

ハルの中では、私との電話に友達以外のなんの他意もない。

電話の余韻なんてものもない。



あーあ。


それでも、それでも馬鹿の一つ覚えみたいに

君が好きだよ。




電話、ありがとうね!


可愛さのかけらもない文面をメッセージで送る。

少しだけ可愛い「まかせろ!」みたいなスタンプが送られてくる。彼女の前では、素直で可愛らしいハル。きっとこのスタンプも年甲斐もなく、彼女とお揃いなんだろうな。なんて考えてまた少しへこんだ。





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