表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17


目に入ったのは、自宅ではない天井だった。




「ん?!」



カッピカピの肌と、肌寒いと感じる左半身と、カラカラに乾いた喉。



そして、右側には温かい物体。


多分それは、乏しい記憶の断片によれば大坂でしかないけれど、実際に右側を見て確認するには少しの勇気が必要で。




いかにも偶然です、という風に右腕を動かす。

幸いにも平らな背中の感触を認知し、ふぅ、と1つため息をつく。



「んんあ?」



横から大坂の声がし、びくぅ!!と身体が驚きを表現してしまった。




「あーーーんーーーー起きたぁ?」



「、、あー、、うん、、」


ぐるっと大坂の身体がこちら側を向いた気配を感じる。

今すぐ消えたいほど恥ずかしい。

穴があったら入りたいとはまさにこのこと。




「お前さぁ、化粧とかそのまんまだぞぉ。

シャワーてきとうにつかってぇ、いーからー。なー。ぐぅぅう」




凄まじく眠そうに忠告だけを残し、こちら側を向いて大坂は再度眠った。いや、ついでに片手を私のお腹の上に残してる。


よっこらせ、とその手を外し起き上がる。


ふらふらするし、頭が痛い〜。。。



忠告を素直に聞き入れ、大坂ハウスの洗面台の明かりをつける。


着ていたワイシャツはシワシワで、一番上のボタンだけ空いている。

今日は幸いにも、ゆるっとした素材のパンツだったので下半身に被害はない。

被害ってなんだ、と少し自分に笑いそうになる。

今更、大坂の横で寝ていたところで間違いが起きようもないことは分かってはいたけれど。


だけど事件はこっちだ。顔だ。もう、とてつもなくひどい。

冬の乾燥と化粧のしっぱなしで、そのうちひび割れでも起こすんじゃないかと思うほどに水分が全てなくなっている感じがした。


ひとまず、大坂が以前一生懸命語っていたいつぞやの彼女が忘れていったらしい化粧落としを拝借し、カピカピの顔を素の状態へと戻す。


シャーっとぬるま湯で顔を洗えばそれだけで生き返った感じがする。だけど、やっぱりだるい。



問題はここからだ。

確実に覚えていることは、たくさんお酒を飲んで、ハルのことについて泣きながら語ったこと。


以上。



恥ずかしすぎる。

今までも酒飲み友達のようなところはあったけれど、部屋に遊びに来たことだったあったけれど、こんな夜中まで、、というか介抱させたのは初めてのことで。



部屋から聞こえてくる、「ガァァア、、ピッ」というアホみたいなイビキの男に合わせる顔がない。


今すぐ帰りたいけれど、この体調でタクシーに乗ったら更に人様に迷惑をかけることになりそうで、働かない頭をうんうんを抱えた結果、ソファを借りてもう少しだけ寝ることにした。





「はっくしゅん!」




ブルルッと身体が震えて、気だるく目を開ければ世界は薄明るくなっていた。



「んあ?、、、あれ?!」


今度は頭上から大きな男の声。あ、大坂の声か。と頭ではわかるけれど、なんだかそれに反応する気力はない。瞼もまた自然と閉じてしまう。



「蓮田!?

あ、いた。


ってなんでソファーで寝たんだよ。」



「んーーー、」

突っ込まれても返答する気力がやはり起きない。

どうしようもなく、気だるい。やばい。多分、これ二日酔いだけじゃないだるさだ。





「お前、馬鹿か。」


声がどんどんと近づいてくる。

そして、冷たい手が頬に触れる。

目を開けていいものか、、。と考えていると、その冷たい手が首とおでこにも降ってきた。



「絶対熱あるじゃねーか。あほたれ。」



あ、やっぱり?

心の中で返答する。

そこでようやく重たい瞼をもう一度開くと、予想以上の近さに大坂の顔があった。




「お前さぁ、こんな真冬にソファーでなんもかけずに寝たらどうなるか想像つかない?」


「だ、、だってぇ。」



同期の、しかも男の隣で寝るなんて、気まずいでしょう。






「とりあえず起き上がれるか?俺のジャージ着替えて。そんでもって、ベッドで寝ろ。」




「うーーーん。」



ほぼ自力では何もできず、着替えさえ大坂の助けを借り介護されつつベッドにダイブする。

ほんと、昨夜から迷惑しかかけてない。恥ずかしいし情けない。




「とりあえずコンビニで必要そうなもの買ってくっから。寝てろ。いいな?」



「はーい。」


もはや争う気力すら、ありません。

ただただ、ありがとう。

それさえも言えないけど。






そこからぷっつりとまた記憶は途切れ、起きた時には部屋が赤く染まる時刻だった。




「お、おおさかー。」



誰も見当たらない部屋に少し恐怖を感じ、声を出してみる。

明け方に比べたら身体が楽になっている気がする。



「お、起きたか。」


閉まっていたキッチンとの境の扉が開き、見慣れた顔が覗かれた。

スルスルと近寄ってきて、なんの抵抗もなく私の首を触る。



「お、朝よりはぬるくなったな。」



「あ、あのさぁ、」


「ん?あ、雑炊食う?てか食え。」


「?!ふふっ」


「なんだよ!?」


「お母さんじゃん、もう。なんか。ぜんぶ。ふふっふ」



ありがとう、を言いたかっただけなのに、大坂のあまりのオカンっぷりに、笑いがこみ上げてしまった。



「お前が子どもみたいに泣きそうな顔で熱出してっからだろ!

まあ笑う元気出たみたいでよかったわ。」



そういうと、頭をポンポンと二回たたいて大坂はキッチンへ戻る。

チャラ男と言われる大坂だけれど、これはチャラ男ではなくて「モテ男」だな。なんて頭の片隅で思った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ