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結局、ハルが待っている座席へ帰れば、あっさりとまたくだらないいつもどおりの話の続きができた。




鹿児島にいつもつるんでるみんなで旅行がてら行けたらいいね。とか


九州女子は強そうだね。とか


ハルはそんなにお酒が長時間は飲めないタイプだから、向こうで潰れるなよ。とか


これ以上おっさんくさいお酒の趣味になったら、彼女さんに捨てられるんじゃないの?とか。





どうでもいいように聞こえるように、傷ついてなんかいないって思われるように。





「彼女とさ、別れるかも。」



「ん、、、、え?!」





口にハイボールを含もうとしていた瞬間にビックリ発言を聞き、声とともにほんのちょっとお酒を吐き出す。



「きったな。」


「いや、ハルのせいでしょ。」



ゲラゲラとハルは私の吹き出し顔に笑っているのに、どこか寂しそうで。

冷静なふりをして、口元とテーブルを拭きながら次に話す言葉を考える。




「転勤だから?」


「まあ、そうだな。」




「遠いもん、ねぇ。」



ああ、泣きそう。

しみじみと遠さを実感する。

でも、性格の悪い私は、彼女と別れるという言葉に少しだけホッとしている。





「向こう歳上だし。結婚も考えてたっぽいしさ。



だけど、転勤って聞いた時、


今の彼女連れてって結婚とか考えられなかった。」







少し遠くを見ながら話すハルは、まるでとてつもなく大人になってしまったようで。


好き、泣かない、


とかやっている私のこの恋が




とってもちっぽけに思えてしまうような話ぶりで。






なのに、彼自身の中身はそんなに大人になれていないことを私は知っていて。


そしてその、少しかっこつけて背伸びするかっこ悪いとこが好きだったなぁ、なんて。






「なんか、変なの。

大人の男みたいなこと言って。」




思わず、ふふっと笑ってしまった。


いつから私たちは、大人にならなきゃいけなくなったのだろう。


いつから私たちは、自分のことを「大人」と自覚できるのだろう。





「大真面目なんだから、笑うなよ。」





少し拗ねたように笑う彼は、中学時代となにも変わっていない表情で。



それが少し嬉しくて


どうしようもなく、悲しい。






こんなにも一緒に過ごした時間は長いのに、


私たちの人生はきっとこれから、




どんどんと遠ざかっていく一方なのだ。




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