表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/17



大坂の力ない声のお願いに了承したわたしは、その熱すぎる額と手から一度身を引き、寝支度を整えた。



電気を消す前にもう一度大坂のおでこを触り、冷えピタを張り替える。

熱が下がる気配はまだなくて、相変わらず熱い体。

少しだけ体を起こしてやり、水分を取らせる。




「なぁ、この看病した記憶明日には全部忘れてて?」



力ない声で何を言い出すのかと思えば。


「ばっちり覚えとく。むしろ同期女子に言いふらしてやる。」




どうだ、という感じで大坂を見れば、


「おまえはそういうことしないでしょ。」


と、まっすぐに目を見て言葉を伝えてくる。





「あ、あと今日もソファで寝ちゃだめだから。隣で寝ろ。」




さりげなく隣で寝ることを強制するなんてぬかりないやつ。


「いや風邪うつるから。」



「そしたらまた俺が看病するから。」



「永遠ループじゃん、それ。」



「それもいいかも。」




帰宅した頃よりは少し元気が出たのか、いつも通りの口が達者な大坂に戻ってきたようだ。





そしてまんまと、一つのベッドをシェアして眠ることになった。


電気を消すと、熱い熱い体にぎゅーっと抱きしめられ、「おやすみ」と、いう言葉が降ってきた。





人肌って心地いいな、なんてのんきに考えてしまったけど、さっき告白されたことをふと思い出し、顔まで一気に熱くなる。






朝起きると、相変わらず隣の同僚は苦しそうな顔で。


覚悟はしていたが致し方なく、上司に電話し、半休とった。

そして、この男にも。


「一旦起きて。電話して。はい。1日休みね。」



「あー。仕事溜まってる、、」



「ダメ。あんたを休ませるためにわたしはここにいるんだからね。」



あーだこうだ、辛そうな顔でいまだに言い訳を続けるので、携帯を取り上げ、有給申請の内容のメールを大坂の上司宛に送信した。




「あーーー!」


「ほら。あと一時間後に病院いくからね。」



「なんか、、無理やりがすごい、。」


「早く治したいなら従ってください。」



「へーーい。」



一時間後、まだうだうだと言い訳をしている男を病院の前まで連れて行き、中に連れそう。



「子どもできたらこんな心境なのかな。」


「どんなだよー。」



明らかにまだ熱でしんどそうな彼は、ほんの少し体の重さをわたしに預けていて、油断すれば、「かわいいな。」「頼られてるな。」という感情で、君の「好き」を受け入れてしまいそうになった。




待合室で彼の名前が呼ばれたところで、サヨナラを告げ、会社へ向かう。



時間の関係というよりも、これ以上近くにいてはいけないと、感覚的に恐れを感じた。




この心地いい関係に甘えるのは、彼を傷つけてしまうことになるから。

わたしは、彼を解放しなくてならない日が来るから。

それができるだけ早くないと、彼をより一層、深く深く傷つけてしまうことになるから。


今はただ、早く熱が下がって欲しい、



そして、君の幸せがいつかいつか。



いつかいつか、君の大大大好きになった人によって、作られていって欲しいと



優しく優しくと願う。



冬の寒空でも、さっきまで寄りかかられていた右腕あたりだけが、ふんわりと温かさを保っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ