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結局、恩だなんだかんだと言っていた割に、愛の告白紛いの大坂の言葉に動揺して、

「熱出てるから、ほら。頭おかしくなってんだよ。」

なんて最低なセリフを吐いて、熱の下がらぬ彼を放って家の外へ出てきてしまった。





熱が出てるせいじゃないことは、声のトーンや目の真剣さでわかったのに。

まるで聞かなかったふりをするように。

とても困ったと言う風に。

彼を傷つけてしまった。



ぼーっと歩きながらコンビニへ行き着き、みかんのゼリーと簡易の雑炊を手に取り、会計へと足を進める。

会社のバックは、大坂の家に置きっぱなしで帰らざるを得ない。


ただコンビニへ行ってただけですよー。を装って、また会話を続ける?

それとも、しっかりと話を聞いてあげる?

どちらも正しくない気がして。

というよりは大坂と向き合いたくなくて。

冷たくて最低な私は、彼をどうしてあげたらいいのだろう。





カチャ、と扉をあけて中に入るとスースーと寝息が聞こえた。

冷えピタは1時間前に貼ったばかりなのに、大坂の熱を吸い取り一部カピカピになっている。


大粒の汗をかいているこの人を、告白さえ無視したのに放って帰るのか?と自問自答する。

まだ今日は月曜日。

きっとこの男は明日、起きても病院ではなく仕事に向かおうとするだろう。それを阻止するために、朝を共に迎えるべきか否か。




入社当時から、男女の垣根なくフレンドリーな大坂をはじめは冷めた目で見ていたけれど、飲み会や仕事での人と人とをつなぐ能力には才能と認めざるを得ないような部分があった。


ニガテからスタートした人のあるあるだけれど、あとは好感度が上がっていくばかりで気付けば半年で意気投合し、同期内で1番仲のいい間柄になっていた。




1番仲がよくて、職場とプライベートの垣根がない人間だと思っていたけれど、いつから大坂の中で私は女になっていたの?

思い当たる節がまったくない。

むしろ。思い当たりたくなかった。





そして思う。



ああきっと、


ハルにしたらこんな感じなのかな。


って。






自分が100パーセント友達だと思っている相手に好意を寄せられると、一瞬、なんで?と相手を責めたくなる。



私たち、いい関係だったじゃない。


と。







これは、予想以上にしんどい。

とてもとても、しんどいし、このしんどさを大坂に体感させてしまったのか。

熱があって、弱っている大坂に。








「ごめんね。」


自分の思いと大坂への申し訳なさがごっちゃになって、涙が溢れそうになる。


ベッドでスースーと深呼吸している大坂の冷えピタおでこに手を乗せて謝ると、

その手の上から熱い手が重なる。




「今日だけ、隣にいて。」









弱々しいその声に、「わかった」と静かに頷いた。


しっかりと大坂の左手が乗せられた手の甲はとても熱くて、とても重たくて、また涙が出そうになった。




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