身近なあの人の故郷は
誰よりも、太陽よりも、私はいつも早く起きて家事をします。
何故なら、「いい子」と思われたいから。
面と向かって褒められなくても、心の中では
「いつもありがとう」
と、思っていてくれていると信じていたから、無我夢中で頑張りました。
荒れてゴミだらけの部屋。
掃除をせず、何食わぬ顔でいつものように出掛けていく母。
残された私は黙々と掃除をする。
水道も凍るほど、寒い寒い冬。
外に出て、大量に溜まった洗濯物をしながら窓から室内を覗くと、暖かそうな室内で大きなイビキをかきながら眠っている母。
子供心に思いました。
「こいつは親じゃない」
でも、ちゃんといい子でいないとまた殴られる。
鼻血が出るまで殴られる。
父にすがろうと思ったけれど、父は母の言いなりで、殴られ、蹴られ、毎日ビクビクしながら過ごしています。
一つ違いの兄は、自分のことしか考えていない愚かなナマケモノ。
この世には、誰も私の味方はいません。
誰も私を守ってくれません。
ありえないこの環境から早く抜け出したかったけれど、私はまだ幼い子供です。
大人にならなきゃ、強くならなきゃ、逃れられない。
神様。
どうか、どうか…
殴られて痛い時。
「お前なんか産むんじゃなかった」と吐き捨てられ辛い時。
やりたくない事を、無理矢理させられて苦しい時。
どんな過酷な状況でも、自分を見失わず耐え抜く力を与えてください。
今は死にたくなるほど辛いけれど、私を待ってくれている場所が必ずあるから。
産まれ、育った場所。
この場所に心から思う事があります。
絶対に、二度と帰らない。
この場所で過ごした歳月は、まさに地獄だった。
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ねぇ、隣にいるのは誰ですか?
今、前を歩いているのは誰ですか?
ほら、早く気付かなきゃ…
後ろであなたを見ているのは誰ですか?
驚くほど、身近なところに「それ」は潜んでいます。
それは、ジーっとこちらの機会を伺い、光が全く入らない暗く臭い沼の底にあなたを引きずり落とそうとしている、化け物なのですよ。