国王ー ルーラン視点
父は王で、母が王妃。
その間に生まれた俺は、当然ながら王子で、父が急死したために、成人してすぐに俺は王位を継いだ。
父は母を深く愛していたため、側室もおらず、王の子は俺一人だった。
母はもとより病弱で、父の死後、日に日にやつれて行き、静養の為に行った別荘で、亡くなった。
その後、まもなく俺の縁談の話が上がった。
相手は隣国の美しい姫だ。
外交に力を入れたいと思っていたので、ちょうどいいと思い、その姫と結婚した。
とても仲の良い両親を見ていたため、政略結婚と言えど、愛し、愛されたい、と思っていた。
しかし、相手の姫は違った。
彼女にとって、この結婚は望まぬものだった。
彼女には、祖国に婚約者がいたのだ。
そして、婚約者を深く愛していたらしい。
いつも悲しげに微笑むばかりで、姫は一向に心を開いてくれなかった。
しかし、彼女が嫁いで一年と少し経った頃、彼女は子供を妊娠した。
それが、ルイだ。
俺と彼女は夫婦にはなれなかったが、子供が出来れば、家族にはなれるかもしれないと、その時の俺はそう思った。
しかし、彼女は、王子ールイ出産して、すぐに死んだ。
出産時の、不慮の事故だと処理されたが、事実とは違う。
自殺だった。
出産した日の夜、彼女は自ら毒を飲んで死んだ。
彼女に死を選ばせたのは間違いなく、俺だ。
そう思うと、悲しみが押し寄せ涙を流すが、その涙は自分の罪の意識からのものだと気付くと虚しくて、やはり俺は泣いた。
そして、彼女の骨は祖国へと送り届けることにした。
彼女の愛する場所へ、愛する者の場所へかえした。
それが俺が彼女に出来る唯一の償いだと思ったから。
それからは、ルイに触れることに戸惑い、ルイの顔に彼女の面影を見つけると、またあの時の虚しさを思い出した。
ルイの世話に関して、問題が発生し、特に深くリスクなど考えず、異世界人を招き入れることに同意した。
そうして、その異世界人にルイを任せ、彼女を思い出させるルイから逃げるように、ルイと異世界人のニイナを離宮に住まわせた。
ただ、俺はひたすら政務こなした。
しかし、そんな日々はルイが6歳になった頃に変わる。
今まで一切の関わりを持って来なかった、異世界人のニイナが、王宮に来たのだ。
そして、俺に無責任だと言い出した。
何も知らないくせに、と思った。
だが、親子なのだ、と言われて、心臓が絞られるような感覚を感じた。
だから、ニイナの、ルイと夕食を摂るという提案を受け入れた。
結果から言えば、その夕食は失敗だった。
距離が縮まるどころか、離れて行ったくらいだ。
これで、ニイナももうここに来ないだろうと思ったが、懲りずに俺の所にやってきた。
そして、交流をしようと言う。
異世界交流だ、と。
最初は面倒くさいと思ったが、ニイナから聞く異世界の話はなかなか興味深く、暫く話しているうちに、ニイナの隣は居心地がいいのだと気付いた。
ニイナとの距離は縮まったが、ルイは全く俺に懐かない。
それどころか、ニイナにべったりのようで、困っているらしい。
「これじゃあ、ルイがマザコンになっちゃうよぉおおお」
というニイナの言葉を良く聞くようになった。
マザコンとは、母親が大好きな困った男のことをいうらしい。
確かに、あり得るとは思いながらも、家臣の息子が母親に暴力を振るったなどという話を聞くと、ルイの方が断然良い気がして、放っておくことにした。
しかし、ルイが嫌がるから、俺と会うのを控えるというのしっかりと止めておいた。
そんなの許せない。
ニイナに依存して行っている自分に気付いているが、どうにも止まらない。
それに最近、ニイナと結婚を…という声が出てきている。
ニイナが了解してくれるなら、それも良いと思い始めていた。
しかし、それには、一番のライバルは息子だと気付いたのは、ニイナが離宮からルイから逃げるように王宮に来た時だ。
ルイはニイナを取り返そうと必死に王宮に来ていた。
そして、ニイナにかける言葉が異常なのだ。
結局、ルイの言葉に負け、ニイナは離宮に帰って行ったが、何故かどうしようもなく悔しくなった。
そうして年月が過ぎ、着実にルイの成人の日が近付いてくる。
それはニイナとの別れを意味しており、ニイナはルイのことばかりを気にしていた。
それから別れの日はやってきて、最後まで、ニイナの心を揺らすものはルイだった。
ニイナが困るようなことは言わない。
だから、引き止めるようなことも言わないと、決めていたが、最後の最後に、俺もニイナのことを揺らす存在になりたかった。
だから、「 結婚してくれ」と言った。
はぐらかされてしまったが、言えて良かったと思った。
そうして、ニイナはいなくなった。
ルイが俺のところに
「どうして、ニイナを止めなかったんだ!」
と言いに来た時、純粋に羨ましいと思った。
俺はそんな風にニイナをとめることは出来なかったから。
その夜、久し振りに泣いた。
王妃がなくなって以来だった。
次の日、ルイの国王としての仕事を教える前に、「ルイの即位式の日、異世界人の召還を認める」と言った。
それは、ニイナもルイの立派な姿を見たいだろうから、という建て前と、ニイナに会いたくて仕方がないという本音があわさった結果だった。
その言葉のおかげか、ルイは一生懸命に勉強した。
とても理解力が早く、家臣に誉められる度に誇らしく思ったりもした。
そんな風に思えるようになったのは間違いなく、ニイナのおかげだ。
そして、ルイは夜が寂しくなったのか、俺を晩酌に誘うようになった。
好きな酒の種類、飲み方など、俺とそっくりで昔の俺は何を見ていたのだろうか、と呆れてしまうくらいだ。
確かにルイは王妃の容姿を多く受け継いだ。
しかし、性格的面では俺に似てしまったようだ。
それを強く感じたのは、ニイナがルイの即位式で再びここに召還された時だった。
「結婚しよ、ニイナ!」
と、ルイがニイナに突然言ったのだ。
唐突過ぎて、説明が足らなさすぎる。
そうして、ルイを止めてから、昔の王妃が来た時の俺は今のルイのようだったのだと感じた。
恵まれた環境にいたが故に、言葉にして説明するという行為が苦手で、無意識のうちに言わなくても伝わっていると思ってしまう。
次の瞬間には、ルイがニイナにキスをしていて、言うまでもなく拳骨を食らわせた。
剣を抜かなかっただけ有り難く思って欲しい。
その夜からルイは王宮に移らせた。
そうして説教して、仲直りのかわりにまた晩酌をする。
二人で明るくニイナの話を出来たのでとても楽しい時間になった。
しかし、一向にニイナが起き上がったという知らせがないことに二人共落ち着かず、離宮に行った。
ニイナが目を覚ますまでの二日間、離宮のニイナの部屋が臨時の執務室になったのは仕方がないことだと思う。
眠るニイナの手に触れる。
競うようにルイがニイナの手を俺から奪うように握った。
そんな息子が可愛くて髪を撫でようと手をのばせば、はじかれる。
無理やり触れ、髪をボサボサに撫でるとルイは不服そうな顔をしたが、とても幸せな気分だ
ふと、睡魔に襲われた。
そうして、眠りの中に吸い込まれていった。
夢の中で、あの美しい王妃が出てきた。
幸せそうに微笑んでいる。
「ごめんなさい、ごめんなさい。でも、ありがとう」
彼女はそう言って消えていった。
それは俺に都合の良いただの夢だったかもしれないが、すっきりした気分になった。
「国王様?おはようございます」
ニイナの声で、目を覚ます。
やっと目が覚めたようだった。
目が覚めるまで、最低一週間は覚悟をしろと言われていたので、意外と早くて驚く。
「おはよう。そしておかえり、ニイナ」
俺がそう答えるとニイナは嬉しそうに笑った。
近くのソファで寝ているルイはまだ起きそうにない。
ニイナはベッドを、降りてルイのもとにいった。
俺もそれに着いていく。
ニイナがルイの頬に触れる。
俺も昨日のようではなく優しくルイの髪に触れた。
どうしようもなく幸せで、ニイナに寄りかかる。
「なんですか?」
とニイナが聞いてくるので、
「幸せだな、と思って」
と答えると、ニイナは俺の言葉が意外だったのか大きく目を見開いて、
「私もですよ」
と笑った。
その言葉が思った以上に嬉しくて、気付いたら泣いていた。
ニイナは心底驚いた様子だったが、そっと抱きしめてくれた。
「やっぱり親子なんですねー」
というニイナの言葉が、こんな情けない姿を晒していても、嬉しいと思った。
こうして、三人が揃っていることがどうしようもなく幸せだ。
あー、やっと家族になれた。
お帰り、ニイナ。
心の中で、何か暖かいものが広がっていった。
もうしばらくのあいだ、涙は止まらないだろう。
これにて別視点でのお話は最後です。(実はナティウスさん視点も書きたかったけど、考え中…)
国王視点で、王妃について書きたかったので満足です!
国王は泣き虫さんみたいですね笑
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ここまで読んで頂きありがとうございました。




