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06

 最初の説明通り、異世界に来る直前の状態だから、高校生の身体に戻った。

 そして、日本の普通の高校生として過ごした。


 二度目の人生のようで不思議な気分だったが、ふとした瞬間に、ルイの気配を感じれず、不安になったり、ルイが泣いていないか心配になったり、国王と話したくなったりと、少し情緒不安定な時期があったが、それを乗りこえればなんともなくなった。

 だが、恋愛をする気にはならなかった。

 告白されたり、気になる相手がいたことにはいたが、ルイと国王のことを思い出してしまって、付き合おうなどとは思えなかった。


 そして、大学生になり、大学三年のある日、友人ーナルの妊娠をきっかけに、ルイを思い出し、また私はあの世界に呼び出されたのだ。


 よく知ったこの部屋ー、離宮の一室を見渡す。

 変わった様子はない。


「久しぶりだな。ニイナ」


 目覚めた私にかけられた声を私は知っていた。


「国王様?」


 声の方を見ると予想通りそこには国王がいた。


「あぁ、ニイナ!変わってないな」


 と国王は笑った。

 国王は確実に老けた。

 しかし、年を重ねてさらに良い男になっている。


「国王様は老けましたね。でも、さらに素敵になりました」


 思ったこと率直に言うと、


「そうか、ありがとう」


 と国王は言った。

 このような再会は少し嬉しいが、何が起きているのだろうか?


「どうして私はここに呼ばれたの?」


 私がそう聞くと国王は困ったように笑った。


「今日はルイの即位式の日なんだ」

「え?!ルイが即位!?」

「あぁ、そろそろ俺も年だからな。それで、ルイが即位をニイナに祝って欲しいと言って。ルイがニイナを呼んだんだ」


 私は驚いたが、純粋に嬉しかった。

 ルイは私を忘れていなかった。

 そして、あんな別れ方をしたのに招待してくれたのだ、自分の即位式に。


 それから国王と共にルイの即位式に参加した。

 ルイ個人とはまだ話せていないが、この数年でルイはさらに男前に成長していた。


 即位式の後、パーティーが行われるということで、私がパーティーの用意をしていた時、ルイと国王が部屋に入ってきた。


「ニイナ」


 ルイは長い脚を早めに動かしながらも優雅に、私の方に歩いてきた。

 あの最後の日の言葉が頭をよぎったが、それでも私はもう一度会えて嬉しい。


「久しぶりね、ルイ」

「うん。会いたかった」


 ルイは泣きそうな顔で笑った。


「ニイナ、十八歳の誕生日の時の言葉、覚えてるよね?」


 ルイは続けていった。

 そして間をおかず、ルイが答えを言う。


「ーもしニイナが嘘をついてたら、俺はニイナを許さないって」


 忘れていたというわけはない。

 むしろ忘れたかった。


「あの日、嘘ついてごめんなさい。ずっと謝りたかった。ずっと許さなくていいよ。私は良いお母さんじゃなかったね」


 私は心臓が痛くなるのを抑えながら言った。


「ずるいよ。そんな風に謝らないでよ」

「ごめん。うん、ずるいよね」

 

 私はそう言ってうつむくしかなかった。


「俺はどうしたってニイナを恨むことも、ましてや嫌うことすらできなかった」

「ごめん。私もルイを忘れたことはなかった。なにを見たって、ルイのことが思い浮かんじゃうんだもの」

「そういうところもずるい。ニイナ…、ニイナ…」


 幼い子供のようにルイが私の名前を呼びながら泣き出した。

 私はずいぶん大きくなった、ルイを抱きしめて背中をやさしくさすった。


 それを見た国王は驚いたような顔をして、溜息を吐いたが見ているだけだった。


 しばらくしてからルイは顔を上げ私を見た。


「やっぱり、ニイナは安心する」


 ルイは嬉しそうに笑顔を浮かべて言った。


「結婚しよ、ニイナ!」


 え?

 ルイの唐突な言葉に思わず、ルイの顔を呆然と見つめてしまう。


「ちょっと待て、ルイ。それは唐突過ぎるだろ。それに抜け駆けはあれほどダメだと言っただろう」


 今まで黙って見ていた国王が間に入るように言ってくる。


「うるさいよ。唐突とかなんでもいいよ。もういきなり、ニイナがいなくなるのは絶対嫌だ」


 ルイが国王を睨む。


「えっと、国王様?何が起きているの?」


 私はルイが怖い顔をしているので、国王に助けを求めた。


「ああ。というより、俺はもう国王ではない。ルーラン・オルタナシスというのが俺の名だ。ルーランとでも読んでくれ」


 国王ー、ルーランはそう言った。


「そして、ルイ、結婚がどうのという以前にやることがあるだろう。そう先走るな」


 とルーランはルイに言った。

 なんとなく二人がちゃんと親子になっていて安心した。


「分かったよ。あのね、ニイナ」


 ルイは私に向き直り言った。

 そして、いきなり距離を詰めて、私の耳元にルイの口が近付いた。

 ルイの息が私の耳にかかりそうだ。


「俺、昔からニイナのこと女の子として好きだったんだ」


 私にだけ聞こえる声でルイは言った。

 さっき、「結婚しよ」と言って平然な顔をしていたくせに、「好き」と言うだけで、顔を真っ赤にするルイはとても可愛かった。


 そして、がっちりと首を固定され、唇を重ねられ、口の中にルイの舌が入ってきた。

 私は思いがけない行動に目を見開き、結局は立っていられなくなって、私はその場に座り込んで眠りについてしまった。


 そこから二日間、異世界から飛ばされて来た影響のせいか、私は起きなかったそうだ。


「ニイナ、大好き」


 無邪気なルイの声。


 眠っている間、私は小さい頃のルイと遊ぶ夢を見た。

 いや、違う。

 ルイに似た別の子だった。


 ただ、夢中でその子のお世話をしていた。


 そして、起きた次の日から元息子?のルイと、元国王のルーランにストーカー並みに追いかけられ、求愛や求婚をされ、最終的には美味しく頂かれて、元の世界に戻れなくなるのをニイナはまだ知らない。


 そして、ニイナはあの離宮で二度目の子育てをすることになる。

 ルイに似た女の子と、国王に似た男の子を。





異世界で王子を育てた結果→マザコンになった


 というわけですね。



最後まで読んでいただきありがとうございました。

元々は短編の予定だったのですが、思ったよりも長い話になってしまったので連載にしました。

本文のおかしなところは訂正していきたいと思います。


短編の予定でしたので、もうちょっと書きたかったなんて思うところが多い話になっちゃいました(笑)

番外編とか続編とか書いてみたいいいい。



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