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⑥ 天駆ける棺桶 -1-

 ルナは腰を落としていたベッドから、ゆっくりと立ち上がった。


 それは、机に頭を伏して眠りに着いていたライトを起こさないように。


 一日が五時間しかない為に、夜は約二時間しか訪れない。


 人間は、そんな環境に適応する為に、睡眠時間が短くなったものの、眠りの周期が増え、細かな睡眠を分けて多く取るようになっていた。


 ルナは、垣間見えるライトの寝顔をそっと見つめた。


 こうして人間と話したりして関わったのは、アランと離ればなれになって以来だった。これ以上、人と関わっていてはアランの事を思い出し過ぎてしまい、胸が張り裂けてしまう。


 ルナは、足音を立てずに部屋を出た。


 先ほどの部屋と同じで、むき出しになった配管や配線が壁を彩り、薄暗く低い天井で幅が狭く細長い廊下を壁伝いで進んだ。


 そして、廊下の突き当たり行き止まりに行き着くと、近くに備え付けられた梯子があるのに気がついた。


 梯子に視線を向けて顔を見上げると、小さな穴が空いており、そこから薄焼けの空が見えた。ルナは、ここから登れば外に出られると思い、梯子を登る。


 ルナの予想通り、梯子を登りきると外に出たが、そこは“潜水艦”の艦上だった。


 潜水艦の大きさは、まるでマッコウクジラが横たわっているようだった。

 そして艦体の半分が真っ二つとなっていた。潜水艦は既に壊れており、本来の役目を果たすことは出来ない状態であった。


 だがルナは、今自分が居る場所が潜水艦だと知る由は無い。


 地上から十五メートルほどの高さだった。杭と廃線で作られた手作り感が溢れる転落防止用の柵で囲われており、簡易的の船橋が設けられていた。ルナはその柵にもたれ掛かり、そこから見渡した朝陽が照らし出す景色は、何処までいっても枯れ果て、渇いた砂の大地が広がっていた。


 百年間……気候変動により降水量は大幅に減少し、海面上昇で騒がれていた海は、年月が経つにつれて海水が減少してしまい、やがて干上がってしまった。


 この潜水艦が、こうして姿をさらけ出してしまっている理由の一つだろう。


 あの蒼い地球は一体、何処へ行ったのだろうか。


 アランと一緒に行った海水浴の思い出が、ふとルナの脳裏によぎり、ルナの瞳から涙が溢れこぼれた。

 滴り落ちた涙は渇いた大地へと向かっていったが、途中で蒸発してしまい、大地を潤すことは無かった。


「アラン……」


 力無げに沈んだ声で呟いた。


 そして、ルナはその声と同じように身体の力が抜けると、そのまま倒れ込み十五メートルの高さから落ちていった。

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