第四章。
「…………」
「…………」
沈黙が続いた。
その間に、先程まで騒がしかったクラスメート達は散ってしまった。
そして。
「何となくよ」
カグヤが沈黙を破った。
「は?」
泪は再び呆けた。
「だから。何となく。」
繰り返してカグヤが言う。ともすれば邪悪ともとれる笑みを浮かべて。
「…自分の名前がカグヤだから、カグヤ姫のことに興味があるとかじゃないわけ?」
カグヤの意外な答えに戸惑いながら泪は言った。
「…ああ。なるほどね。んじゃそういうことにしといてもイイわ」
「Σなんだそりゃ」
「…で。どう思うの?」
突然、雰囲気が変わる。
「…なにが?」
ひどく張り詰めた雰囲気。
「『どうしてカグヤ姫は月に帰れたのだと思う?』」
カグヤは、初めてカグヤと会った時と同じ台詞を同じ表情、同じ雰囲気で繰り返した。
気圧された。
カグヤの、その強い眼に。
「…おじいさんとおばあさんを幸せにしたからじゃないの?」
泪も、あの時思ったことを繰り返した。
「一般的だなぁ」
カグヤは可愛く笑いながらそう言った。
「違うとでも言いたそうじゃん」
「違うよ」
あっさりはっきり。
「じゃあなん…」
キーンコーンカーンコーン。
『じゃあなんで?』と泪が聞こうとした瞬間、チャイムが鳴った。
「そのうち解る。」
ボソリとカグヤが言った。
「………」
それは、辛うじて聞き取れるくらいの小さな声だったが確かに泪の耳に届いた。