第二章。
ホームルームの時間。先生が一人の転校生を連れて来た。それはもちろん、先刻の、
「カグヤ姫」
のことについて問い掛けてきた女の子だ。
その女の子が2−1の教室に入った瞬間、驚愕と歓喜と羨望に満ちたざわめきが起こった。
理由は簡単。
転校生の容姿が、この世のモノとは思えない程に美しかったからだ。
緩いウエーブの茶色がかった長い髪。すらりと伸びた手足。陶器のように白い肌。それとは対照的に漆黒の目。全てに於いて神々しいまでに整っていた。
泪も、ほかの者と同様、その姿に見惚れた。先刻は影と逆光で転校生の容姿をよくは見ていなかった。並の容姿ではないことは判っていたが、光の中で見るその姿はまた闇の中とは違った輝きを放っていた。
カツ…
先生の、転校生の名前を黒板に書く音が奇妙な静寂の中に響く。そこに書かれた名前は。
『夜神カグヤ』
−ああ。
さっきの問いを投げ掛けて来た意味が少しわかった。
(カグヤだからか…。いや、あんまり関係無いかな)
「席は沖田泪の隣だ。」
先生が言う。
(Σは?マジかよ汗)
泪が呆けている間に、カグヤが席につく。そして。
「よろしく」
そう言って不敵に微笑んだ。その微笑みを美しく思うとともに言いようのない不安を、泪は感じた。
なぜそう感じたのか、泪にもわからなかったが、その感覚は確かに。
けれども、靄がかかったように曖昧に。
泪をその感覚が包み込んだ。