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第一章。
「ねぇ。カグヤ姫はどうして月に帰れたのだと思う?」
突然、そんなことを聞いて来た。見たことのない女の子。転校生かな…と、どこか冷静に考えながら。
「はあ?」
眉を寄せ、沖田泪はそう言った。
そんなのオジイサンとオバアサンを幸せにしたからじゃないわけ?
だいたいなんでそんなこと聞くんだいきなり。
不審に思っていることを隠しもせず表情に出す。
転校生らしき女の子は、そんな泪を珍しいものでも見るように目を細めた。そしてクスリと笑った。
その笑みを形容するとすれば。
艶っぽく。
どこか陰を帯びて。
全てのモノを魅了するような。
魔性の笑み。
「そろそろ時間だわ。また後でね」
その笑みを浮かべたまま、転校生は消えて行った。
「…なんだソレ」