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吊り革をにぎれば
そうだ。私なんかが釣り合うはずがない。
目の端に彼の姿をとらえるたびに思うこと。
それでも、もしももう一度、彼が私に話しかけてきてくれたのなら、
息がとまるくらい 幸せ
多くの人が知ってるだろう。
電車やバスの吊革につかまりながら携帯を見るとき、多くの人は左手で吊革をつかむということを。
私以外の誰かだって、きっと知ってるだろう。
私が右で、彼が左 携帯電話off車両のとき
右利きの私と左利きのあの人が並んで吊革をつかめば、お互いの肩がほんの少し触れるということを。
私以外に、誰か知っているだろうか。
私が左で、彼が右
左利きのあの人が携帯を見て、私がさりげなく左手で吊革をつかめば、
他の乗客を吊革に伸びた腕で遮断して、二人の空間が作れるということを。




