精一杯のありがとう
ここは、大学病院の診察室。今日は、検査結果を聞きにきた。私の名前は、石井美月、29歳。お医者さんからの、言葉に、絶句した。「大腸ガンです。余命1年です。」自分のこととして、受け止められなかった。何を言われたのかわからず、頭の中が、真っ白になった。
すぐに、自宅に帰って、母に、伝えた。母は、泣いていた。父も、驚いていた。私も、気持ちが、落ちついてきて、言われたことの意味を、今になって、はじめて、理解できた。
そして、次に、伝えなければいけない人がいた。彼氏の、佐々木新司、32歳だ。彼には、電話で、伝えた。「私、大腸ガンだったみたい。ステージ4だって。余命1年なんだって。」私は、人ごとの様に、伝えた。彼は、本当に、ビックリしていた。
すぐに、彼は、「結婚しよう。二人で、頑張っていこう。」と、言ってくれた。私は、嬉しかったが、余命宣告されていたので、それには、返事ができなかった。それでも、そう言ってくれたことには、感謝していた。
次の日、新司は、婚姻届を持ってきた。書くように言われ、私も、書いた。すぐに、市役所に、持っていって、受理された。あまりのスピードに、私は、ついていけなかったが、とても嬉しかった。
その日から、新婚生活が始まった。抗がん剤治療をやりながらだったので、体調の良いときもあれば、悪い時もあり、大変だったが、無理をせずに、過ごしていた。
旅行も、たくさんした。体調のいい時に、いろんなところへ、ドライブした。思い出が、たくさんできた。
時々、体調が悪くなって、入院したりは、したのだが…体力も、あまりなくなってきている感じがしている。
新司は、私が、ガンになってからも、少しも、変わらずにいてくれてる。ときには、些細なことで、ケンカもするが、仲は、いいと思っている。新司がいたおかげで、私は、ここまで、頑張ってこれた。新司には、感謝しかない。
余命は、宣告されたが、なんとか、新司といるためにも、頑張って生きたい。そのためには、体力を、つけないといけないと思っている。
私の夢は、新司と、海外旅行に行くことだ。パンフレットを眺めながら、夢が、膨らんでいた。パスポートだけは、先に取っていた。なんとか、それまでは、元気でいたい。抗がん剤の副作用が、大変だけど、頑張ろうと、思っている。
私は、気を紛らわす為に、犬を飼った。とても可愛い、ダックスフンドだ。ミーちゃんと名付けた。まるで、自分の子供の様な存在になっていった。ミーちゃんのためにも、長生きしたいと思う様になった。生きる力にもなった。
旅行の計画も立てていた矢先、私の体調は、どんどん、悪くなっていった。そして、ついには、歩けなくなって、寝たきりになってしまった。新司は、ずっと、励ましてくれていた。友人達も、みんな、心配してくれていた。
私を、励ますために、友達みんなが、駆けつけてくれた。とても嬉しかった。弱った、私を見せても、大丈夫な友人達だった。みんなに会えて、元気をもらえた。
日々、弱っていく感じがしていた。痛くて、苦しくて、辛い毎日になっていた。新司にも、弱音を吐く様になっていた。もう、海外旅行の夢は、叶わないな、と、諦めた。
それを察した、新司が、近くの温泉に、泊まりに行くことを計画してくれた。おそらく、これが、最後になるであろう、旅行だった。弱った体だったが、私は、その温泉旅行を楽しみにしていた。旅行当日、私は、子供の様に、はしゃいでいた。
温泉に入り、美味しい料理を食べて。あまり食べれなかったのだが、それでも、美味しかった。今まで、旅行した中で、1番、思い出に残る旅行になった。
旅行が終わり、自宅に戻った私は、疲れたせいもあり、ぐったりしてしまっていた。病状は、悪化していた。新司に、「まだまだ、ずっと新司と一緒にいたいよ。」と言った。私は、ペットのミーちゃんを抱きながら、ベットに入った。新司が、腕枕をしてくれた。私は、最後の時を、悟ったかの様に、「新司、ありがとう。」と言って、新司の胸に、うずくまった。新司は、何度も、「美月!美月!」と、叫んでいた。




