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第50話 2人の由来

ログインに手間取り投稿が遅れました。


「そう言えば勇者ってパートナーが決まってからつくられるんだよね?なんで悠夜はいなかったの?」


 真面目な話が一段落した後、悠夜の下積み時代の話から一実はそのことに思い至った。彼女にしてみれば、以前からパートナーがいたら困るという思いもあるのだが、あまりいい時代ではなさそうなことを含め、気になるところではある。

 一実はベッドの上でさっきよりも溌剌とした様子で、言いたくないなら言わなくていいと付け足しながら聞いてみた。


「ん~~、それ、訊いちゃう?」


 悠夜は意味ありげに聞き返す。一実から見て、プラスともマイナスとも取れない話題に触れたように感じた。


「やっぱり、訊いちゃダメだった?」


「いや、そんな深刻な問題じゃないんだけど、若干僕のアイデンティティにかかわる話というか……」


「そう、なの……?」


 珍しいワードが聞こえて、一実は困惑してしまう。一応、彼の来歴にかかわる話ではあるが、どういうことだろうか。彼女には話の背景をつかみきれなかった。


「う~ん、でもいい機会だし、話しておこうかな……僕のこと……」


 悠夜はどこか遠くを見るような目をして話し始めた。


「僕の形式番号はね、YX-00ってやつなんだ」


「00……」


 YXという型式番号は、アジア圏を中心に配備されている、前園製の日本製勇者に与えられる番号だったと一実は知っていた。広報の情報を見ているときにどこかで小耳にはさんだ記憶があった。中でもエクスマインはYX-01という番号を持ち、最初に製造・正式配備された勇者として有名だった。それより前の番号があるとは、彼女は知らなかった。その番号が示す意味とは……。


「ゼロって、プロトタイプってやつ!?」


 0という番号から連想される言葉に、一実は胸をときめかせてしまう。ロボアニメなら量産型……勇者の場合は正式採用型という感じになるのだろうが、そういうものには他にはない特別な力があると相場が決まっている……と、一実は勝手に思っている。


「一応そうなんだけど、たぶん一実が想像していそうなすごい機能、とかはないよ」


「えっ?あっ、そっか……そっかぁ……」


 悠夜は一実が無駄な期待をしないように、先に予防線を張った。とたんに出鼻をくじかれた一実は、目に見えてテンションが下がっていく。本人も勝手に期待して勝手にがっかりするのは違うとは思ったが、リアクションを抑えることができなかった。


「……で、でも、隠された0号機ってことは間違いないんだよね?」


 ゼロというロマンのある番号が与えられていることは間違いないと一実は気を取り直した。


「それはそうだね」


 悠夜は0という番号の持つロマンについて熱弁する母のことを思い出し、ほほえましく思った。翼の方はそういうことにはあまり興味がないようなので、一実は悠夜にとって理解のあるパートナーということになるのかもしれない。


「話を戻すけど、僕は朝陽の前につくられた勇者なんだ」


 一実は、悠夜と朝陽が兄弟機のようなものだという言葉を思い出す。前園博士が設計した勇者は2人の他にも複数機存在しており、それらは皆兄弟ともいえるが、悠夜と朝陽の2人はフレームの形状や細部の造りが特に似通っていると一実は感じていた。


「0号の方がカッコいいと思うから全然良いんだけど、1号機じゃないんだね。試作機だから?」


 とりあえず技術実証のために魔法少女とは関係なく造られたりしたのだろうかと一実は考えてみる。


「うん、プロトタイプだってこともあるんだけど、実は僕、一から作られた勇者じゃないんだ」


「……?」


 一実は悠夜の言うことがすんなりとは理解できなかった。勇者は隕石を由来とする秘石を核にして製造される。それを一から作られていないと表現しているのか?しかしそれでは他の勇者たちと何も変わらないことになってしまう。


「僕はこの世界で発掘された。古代の勇者の残骸をベースにつくられているんだ」


「残骸?」


 3000年前の勇者ということだろうか?魔法のことも機械のことも良く分からないのでそれが可能なのかはともかく、もし過去の勇者を流用するとしてそれは妖精界で見つかるものではないのか?そんな様々な疑問が一実の中で渦巻いた。


「そう、勇者の心臓部ともいえるデマンド・サーキットとその周辺のパーツ、それがそっくりそのまま流用されている」


「それって、秘石もってこと?」


 聞き返した一実の疑問を、悠夜は頷いて肯定する。


「…………」


 それはかなり重大な問題であると一実にも分かってきた。勇者にとっての秘石とは、自我の核と呼ぶことができる。今の悠夜はAIやCPU、そして機械的なメモリーで補助されているとはいえ、彼の中に存在するその意志や記憶の中枢を担っている。

 それが過去の勇者から引き継がれたものだと仮定すると、今目の前にいる悠夜という存在は過去の勇者の生まれ変わりともいえるのではないだろうか?一実はそこまで推察することに成功する。

 ここまでの話をまとめると、確かに彼のアイデンティティにかかわる話で、0号機だなんてかっこいい!などときゃぴきゃぴしている場合ではなかった。


「僕のもとになった勇者は、今から8年前、妖精界からの警告を受けてこの世界の人間が情報を集める中で発見された。この日本でね」


「日本……ってことは3000年前の戦いの時もこっちで戦いが起こったってこと?」


 一実は必死に頭を回しながら、話についていこうとする。


「いや、3000年前の戦いについては実はよく分かっていないんだ。だから、鋼魔との戦いがこっちまで及んでいたかどうかは分からない。……だから、後にOIDOを立ち上げるママをはじめとした技術者たちは発掘されたその残骸を復元する形で勇者に関する技術と情報を得ようとした」


「情報……」


 その思惑が成功していないことは一実にもよく分かった。そうでなければ頼れる相棒は今とは全く別の人物になっていたはずだからだ。


「けど、その試みはうまくいかなくてね。鋼魔の脅威が差し迫っていたから、妖精界から得られた技術で一から勇者をつくった方がいいという話になって、僕の製造はいったん凍結になって、途中までの解析で得られた知見を活用してつくられたのがエクスマイン……朝陽だ」


 0号機は完成することなく、1号機であるエクスマインがつくられた。それは一実にも理解できた。


「でも、その残骸に残っているかもしれない過去の戦いの記憶は人類にとってあまりにも魅力的だった。だからある程度勇者製造のノウハウが蓄積できたところで、作りかけだった僕を近代的な機械の勇者としてよみがえらせる形で完成させた」


「じゃあ、悠夜の中には……」


 一実はとっさに聞いてしまう。悠夜の中には全く別の過去の勇者の記憶があるのではないかと。

 悠夜はそれに首を横に振って答えた。


「僕の核になっているのは確かにその誰かに使われた秘石だ。でも結局その記憶にアクセスすることはできなかった。そのおかげで、僕は僕として生まれてこれたってわけ」


「そうだったんだ……」


 一実はいろいろなことに合点がいった。今までこの話をしなかった理由、そして今も悩んでいる様子である理由。「そうなんだ」「へえ」で流すわけにはいかないと分かった。

 悠夜は当初から戦力として期待されて造られたわけではない。むしろ本来の思惑が失敗したことで生まれた副産物。


「これから何かの拍子に、前の人の記憶が戻っちゃう可能性とかはあるの?」


 それが悠夜にとっていいことであるのか悪いことであるのか、一実からは判断することはできなかった。ただ間違いなく確認しておくべきことだろう。


「正直分からない……。実を言うと、秘石の中に記憶が残ってるかどうかも分からない」


「そっか……。こんなこと言っていいか分からないけど、悠夜が悠夜でよかったよ」


 過去を知ることそのものは必要なことなのでそれを嫌だと切り捨てることは、一実にはできなかった。しかしだからこそ伝えるべきと思ったことをはっきりと伝える。それは彼女が一番言ってもらいたい言葉だったからだろうか。

 悠夜に出会えたから今の一実がある。他の誰かではありえないことだ。


「そう言ってもらえると嬉しいよ。僕も僕のまま、君の勇者でいたい」


 悠夜はそれを聞いて恥ずかしそうに笑った。


「ママも翼も朝陽も僕に優しかった。一実に出会う前、僕がないがしろにされてたとかそういうのはなかった。……まぁ、だからこそ居心地が悪かったんだ。情報源にも、勇者にもなり切れなくて、正直苦しかった。だから、一実と出会えて本当によかった」


「……え、ええへへ……!?そう言われると、照れちゃうな~~~」


 一実にも冷遇されていないからこそ、その場所で役割が持てない居心地の悪さがよく分かった。その状況から彼を救い出す存在になれたというのは彼女にとっても喜ばしく、自尊心をくすぐられる事実だった。


(こんなに相性ピッタリの相棒がいるんだもん、これから何があっても大丈夫だよね)


 体まで震えるような温かいくすぐったさに包まれる一実はその心地よさに浸っていた。


おまけ


「そう言えば一実の持ってる秘石って最初から魔法の術式が刻まれてたんだよね?……いったいどんな経緯でそんなものを?」


 悠夜の力の由来の話から、今度は一実の秘石についての話題に移る。


「あー、それね。小さい頃にどっかで拾ってきたってお母さんは言ってたけど、詳しく覚えてないんだよね」


 一実は病院服姿でも変わらず首にかけられているペンダントの先の石を手でいじる。その言葉通り彼女はその石を入手した経緯を覚えていない。ただ言いようのない執着とか愛着とかいうものがあった。実際、極めて特別なものだったわけだが、それをわかって幼い自分が手に入れたのか、彼女はまるで思い出せない。


「今この世界の魔法少女と勇者が使っている秘石はほとんど全部妖精界から提供されたものだ。一応秘石そのものはこっちの世界でも自然に見つかることがあるらしいんだけど、あらかじめ魔法の術式が刻まれていることはありえない」


 悠夜は顎に手を当てて考え込む。十中八九偶然ではないだろうと思える。


「ねえ、悠夜。私の理解が合ってたらだけど、私の秘石もあなたの秘石もあらかじめあったものなんだよね。それで私の方は断言できないけど、前の持ち主がいた可能性があると……こういう同じところがあると何か運命的なものがあるんじゃないかって思っちゃうね。互いの秘石の前の持ち主が相棒同士だったみたいな……勝手な想像だけど!」


 一実は自分なりの推理を披露するが、自信がなかったり恥ずかしくなったりして予防線を張ってしまった。


「うん、僕も同じこと考えてた」


「……えっ!?」


 随分とロマンチックというか、恋愛脳的なことを言った気がしていたので、すんなりと同意されて一実は心臓がドキンと跳ねる。


「秘石と魔法少女と勇者は、空の星から運命的な導きを受けてるって言われてる。僕らの石の前の持ち主につながりがあって引き合ったと考えるのはそこまでおかしなことじゃないと思うよ」


「引き合った……」


 そのことについては一実も聞いたことがあった。魔法少女の魔法には占星術が関係しており、シンボルとなる星座の加護だとか導きを受けているのだと。


「…………」


 自分たちは星に定められた運命に導かれて巡り合った2人……そう考えると、もっとドキドキが激しくなってくる一実だった。


「でも……」


「……?」


 甘い思考にとらわれる一実に冷や水をかけるように悠夜が真剣な声と表情を見せる。


「僕としては運命とかそういうものとは関係なく出会ったんだ。そう考えたいよ。僕が君を見つけられたのは、君が勇気を出したからだ」


「私が……?」


 一実は最初、自分と勇気という言葉がつながらずに困惑する。しかしさすがに少し考えればわかった。


「あの男の子を助けようとする君を見て、それに応えたいって思ったんだ。……あの時の僕も何かしたいって思ってあそこに来た。僕らを引き合わせたものがあるとしたら、そういうお互いの意志がいい……と思うよ」


「そっか……」


 悠夜の考えは、一実からしてみれば地に足がついていて、ある意味で男の子らしい泥臭いものに思えた。


「そういうのも、いいね」


 ただ彼女はそっちの方がいいかもしれないとも思った。それは得体のしれない運命などと違って自分たちの手の中にあるものだからだ。


評価・感想が作者の1番の燃料です!あたたかい感想をお願いします!


Skebなんかもやってるのでそちらもよろしくお願いします。興味があればプロフからどうぞ。


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