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召喚された料理人はフライパン一本で世界を救う  作者: 遠野イナバ
本編

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3/6

魔物だもの、毒キノコだよね

「わーい、マッシュルームがいっぱい!」


 次の村へとやってきた俺たち一行は、村人から森の魔物を退治してほしいと依頼され、マッシュ森とやらにやってきた。


 女神の台詞どおりやたらとマッシュルームが生える森だ。

 赤とか、緑とか、カビでも生えてんのか。なんかまだら模様だし。


「女神、魔物対峙が先だろ」


「わかってるわよ」


 あれから女神とは打ち解けて敬語が外れた俺。というか、こんな駄女神を敬う心は無くなった。


「あ、マッシュプリンス!」


 なにその雑なネーミング。

 茂みから飛び出してきたそれは名前通り姿かたちも雑なデフォルメだった。

 なんか、中ボスとかに出てきそうなキノコ型のモンスター。

 そこに王冠をつけただけのやつだった。

 もうちょいなんかあるだろ。


「戦闘よ、リト!」


「はい」


 女神に言われ、俺はしぶしぶフライパンを取り出した。

 ちなみにきのう到着した村で新調した鉄のフライパンだ。

 いままではアルミのフライパンだったから、ちょっとだけ耐久性がアップした。


『マシュー』


 マッシュは仲間を呼んだ。

 マッシュABCE……いや多すぎだから!


 ともかくマッシュのむれは一斉に胞子ほうしを投げつけてきた。

 黄色くて丸いやつな。

 俺はそれをスマッシュよろしく、ズパーンと打ち返す。


 マッシュのむれをやっつけた!


 ふう、あっけなかったぜ。

 ところで、全然関係ないけど体育の授業でスマッシュ外したときのあの間、けっこう恥ずかしいよな。

 いいとこ見せるぜ、と意気込んだあとこうすかっと……。

 ラケットの面積、もうちょい大きくしてほしいです。


「腕をあげたわね、リト!」


 隣で女神様が拍手する。

 できれば女神の鉄槌とか、ド派手な必殺技キメて、敵を一網打尽にしてほしい。

 というかこいつ、道中食うことばかりでまるで戦闘の役に立たないんですけど、なに? 女神、無能なの?

 それともヒール担当だから後方支援なの?

 でも全然ケガ直してくれないよ?


「村人が言ってた魔物ってさっきのでいいのか?」


「そうね。ツガイだって言っていたから合ってると思うわ」


 女神が群れの中でもひときわ大きい二匹のマッシュを指でつんつんしながら言う。

 キノコにツガイがあるのかどうかは甚だ疑問だが、ひとまず村人の依頼は達成できたようだ。

 良かった良かった。

 これでこの毒々しいキノコの森ともおさらばできるというものだ。


「じゃあ、これもって——」


 女神がそういいかけて近場の茂みがガサっとゆれた。


「魔物か?」


 俺はフライパンを構えた。

 女神は何かの武術の構えをしている。戦わないくせに。

 何かが飛び出してきた。

  

「みゃ?」


「──ね、猫耳だと!?」


 にゃん♪

 猫耳生やしたかわいい女の子が出てきたにゃん♪


「あれ? 獣人ははじめて?」


「当たり前だろ。どこの世界に獣人がいる。……いや、ここにいるけど」


 女神が獣人の少女に近づく。


「獣人族の子供かしら。こんな森でどうかしたの?」


 こんな森よばわり。まあ気持ちはわかるけど。


「幻のマッシュを取りに来たみゃ。この森に生息しているみゃ」


 みゃ、が語尾らしい。

 話しにくそうだみゃ。


「幻? マッシュプリンスのキノコ肉のことかしら」


 少女が頷く。

 キノコ肉。斬新な呼び名である。

 肉厚な、という意味ではどんこシイタケといい勝負かもしれない。

 こっちのは馬鹿みたいにでかいけど。


 しっぽふりふり。少女は嬉しそうにしっぽをゆらしている。

 なんか可愛いな。

 昔買っていた茶トラのトラちゃんを思い出す。

 ザリザリとした舌で、よく俺の頬をなめてくれた。

 なかなか愛情表現の激しい子だった。


 少女はそんなトラちゃんと同じ毛色をしている。

 くりっとした琥珀こはく色の瞳。

 腰に大きなカバンをさげた、冒険者っぽい格好をしている。


「ちょうだいみゃ」


「だが断る!」


「おい女神。子供相手に可哀想だろ。あと言葉のチョイスが古い。──ほら、みんなで仲良く食おうぜ」


 てなわけで料理開始。

 マッシュルームか。やはりここはキノコといったらシチューだろうか。

 少女──チャトラーというらしい。そのまんまの名前だな。

 そのチャトラーが近くのキノコをみ取り俺が切って煮る。

 味付けは女神が担当した。

 不安しかない。

 ところでマッシュをさばいていたら、中から石ころみたいなのが出てきた。


「石? なにか書いてある」


 一度水で洗ってみれば文字……いや何かの絵が描いてあった。


「ああそれ、例の壁石よ」


「これがか? 動いているようには見えないが……」


「んんー?」


 不思議に思う俺の隣に女神がやってくる。

 ふわりと薫る甘い香り。

 おいおい女神ぃ急に隣に座るなよぉ! 

 などという甘いイベントをこなしていると、女神がぞっとする言葉を吐いた。


「あー、モンスターに食べられて手足が溶けてしまったみたいね」


「そんなことってありますかね」


「よくあることよ」


 そうか。よくあるのかぁ。怖い世界だなぁ。

 そうこうしているうちに秋の味覚、きのこシチューが完成した。

 なお、向こうの世界は春である。


「シチュー!」


「みゃー!」


 ふたりがはしゃいでいる。

 女神が満面の笑みでシチューを豪快に口へと流し込んだ。

 こう、だばぁーっと。

 やれやれ。

 チャトラーを見習いなさい!

 スプーンを使ってお行儀よくシチューを口に運んでいるでしょうが!


 うん、さすがは猫。

 ちゃんと最後のひとしずくまで舐め取って完食とは、料理人冥利に尽きるねぇ。

 つか、結局皿舐めるのね。

 お行儀よくないからやめなさい。


 そんなふたりを尻目に俺もシチューを口に入れる。

 腹が痛くなった。


「ぐ……腹がぁ……」


 やばいやばいやばい。

 シチューを口にして数秒後、大波がやってきた。超ビックウェーブ。胃の中でシチューがのたうちまわる感覚。

 動くシチュー? 

 いやいや考えたくないのでやめておこう。

 とにかく胃が気持ち悪い。

 これやばいやつ。へたしたらあの世に逝っちゃうぞ☆


「さすがは私。味付けが完璧だわ、ねえ、リト?」


「ソウデスネ……あの、やくそ」


「え?」


 え、じゃないよ。薬草だよ、薬草!

 これ絶対毒だろ。身体しびれてきたんですけど毒消し草もしくはキュア的な魔法でなんとかしてください。

 しぬしぬしぬ。

 薬草キブミー。

 そして俺の意識は遠のいていった──


 本日の教訓。

『モンスター系のキノコは有毒である』

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