5: 狭間
ふと気付くと、会社にいた。
不機嫌そうな上司。
目の前にはパソコン。
なのに、音がしない。
電話が鳴っているはずなのに、聞こえない…
(あぁ、これは夢だ)
そう思ったら、次は電車に乗っていた。
(降りる駅ってどこだっけ?)
目の前の光景はしっかりしているのに、細かいところを確認しようとすると急に曖昧になる。
眼鏡を直そうと手を顔に近づけ鼻を触るが、眼鏡をしていない…それでも見えている…
スマホを確認しようと思っても、スマホが見当たらない。
(あれ?家に忘れたんだっけ?)
また場所が変わる。
白い天井。
ピッピッピッという電子音。
ベッドの周りのクリーム色のカーテン。
(あぁここは病院か…)
そうだ、雨の日に自転車で転んだんだった。
(やだなー。変な夢みちゃったよ。)
そうだよ変な転び方したんだよー。恥ずかしいなー。
でもあの上司に会わなくていいから、それはそれでいいかー。
そんな事を思いながら、眼鏡を探そうと枕元に手を伸ばすが、見当たらず、代わりにスマホの感触があった。
スマホを見ようと画面をタッチすると、たくさんの通知があった。
通知を見ようとするが、画面がボヤけている。
目が見えないというよりも、内容が全然理解出来ない。
(待って、これも夢?私は、私の名前は…)
心臓の鼓動が早くなり、ぞわりと嫌な感覚がする
“こわくないのー”
“だいじょうぶなのー”
“なまえはいいのー”
妖精たちの声がした。
ふと気付くと、顔の隣でフーが丸まって寝ていた。
規則正しい寝息が、心をゆっくり撫でていく。再び眠りにつくと、今度は夢を見なかった。




