間話: 高級酒場個室にて
目の前にはフードを被った女がいる。
フードをとったところを見た事はないが、美人に違いない。
大きな瞳に筋の通った鼻、薄い唇には真っ赤なルージュが塗ってある
俺はこの女が苦手だ。
全てを見透かすように、その大きな瞳で見つめてくる。
キラキラと輝く瞳なら、いっそ抱いてやろうと思うのだが、感情のないビー玉のような冷たい視線は、額に汗がでる。
「それで?こちらの要求は受けてもらえるのかしら?」
大きな声でもないのに、よく通る声に言葉が詰まる。
俺が、吐き出したタバコの煙を直接受けても、咽せるどころか眉一つ動かさない。
「……分かった。そちらの言い分を飲もう。ただし、俺が関われるのは情報だけだ」
「では、こちらは、メンダヴォルの真の伝承について」
破格の条件にたじろぐ。この情報は金貨何枚分か……。
「あなた方は、彼女の情報と、現在の彼女に対する扱いについて」
強い目力でこちらを覗いてくる
「そういえば、最近ご結婚されたそうね」
自分の生活を把握されている。冷や汗が止まらない。
「メリンダ…きれいな子ねぇ。ふふ。幸せそう」
甘く囁くような言葉は、ガラスの破片のよう。
「知ってる事、全て話しなさい」
瞬きもせず射抜いてくる。
視線を外したくなるのに、外せない。
女はゆっくりと口角を持ち上げた。
形の整った薄い唇が弧を描く。
艶やかで、冷たい。
「さあ、ひとつ残らず……」
――悪女。
その言葉が、頭に浮かんだ。
だから俺はこの女が苦手だ。
敵にしてはいけない……。




