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崖上小屋で今日もハイヒールを眺めます  作者: 小原みん


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21: カイの職業案内

ルシナが花屋で貰った花をコップにいけて棚に飾る横では、コハナは買ってきた食材と、モーヴェたちが持ってきた食材を仕分けていた。


フーは、肉と野菜のご飯を食べている


整理が終わると、クッキーの袋を取り出してテーブルに置く。


量は多めで、コハナとルシナ、そして妖精たちの分らしい。


“わーい、クッキー”

“あまいもの、すきー”


町に同行していた妖精たちが、もしゃもしゃと頬張っている。

身体が小さいので、一枚でも十分なようだった。


2人でハーブティーを飲みながら、クッキーを食べる。


「コハナ、実は今日の夜にでも、町に行ってること言おうと思ってたんだ」


偶然ばったり会ってしまったが、その前に報告するつもりだったことを伝える。


「うん」


コハナは短く頷くだけだった。


「それでね。町の人たち、あたたかい人ばかりだったの。ずっとこの小屋に閉じこもっているより、外で働こうと思うんだ」


“ルシナもはらくのー”

“おやつかってー”


妖精たちが頭上をくるくる回りながら騒ぐ。


「ルシナも? ……え、コハナ働いてるの?」


買い物をしているのだから、当然といえば当然なのだが、今さら気づいた。


「うん。カイに紹介してもらった」


「そうなんだ……私も紹介してもらえるかな。今日行ったらいなかったんだ」


丸っこい可愛らしい貼り紙の文字を思い出す。


「カイはいい人。他の人にも、仕事紹介しているの見た」


「そっか……明日また行ってみようかな」


コハナは何か言いかけて、言葉を飲み込んだ。


代わりに、左腕の銀の腕輪を人差し指でそっとなぞる。


「今日は仕入れで不在だった。……仕入れの翌日は、いつも店にいた」


そう言って、ルシナを見てわずかに目を細めた。


「よーし!お金を稼いで2人で美味しものをたくさん食べよう!」


フーも『美味しいもの』に反応して、尻尾をブンブン振っている


ここに閉じこもっていたくない。


この小屋に連れて来られたけど、置き配だし、監視もない。ここで過ごしている分には問題もなさそうだ。


(雑な仕事がかえって好都合ね)


半日くらいなら不在でも大丈夫だろう。


「そうだ!コハナ見て!素敵な靴屋さんでお借りしたの」


ルシナが隠していた片方だけのハイヒールを見せる


「このハイヒールを見てると前向きな気持ちになれそうなの」


そっとハイヒールの表面をなぞると、ワクワクして、靴の輝きが増したように感じる。


「そこの職人さん、ルキさんがね、前向きな気持ちになれるなら、支払いが出来るまでお貸ししますよって…。私、この靴が買えるように頑張るんだ!」


そう意気込みを語ると、コハナはルシナからハイヒールを両手で受け取ると、ルシナの顔をじっと見つめ、花屋でもらった花の隣に静かに飾った


「前向きに…」

そうコハナはつぶやくとほんの僅かに、唇をあげて微笑んだように見えた。


ルシナはフーのモフモフを堪能しながら、これからの未来に心を弾ませた


ーーーーーーー


翌日、ルシナとコハナは町へ出かけた。


フーは今日も、妖精たちと一緒に留守番だ。


今回はコハナの通り道を使うことにしたルシナは、滑り台ルートに挑戦してみた。


勢いよく滑り出した瞬間――

あまりの猛スピードに、


「ふんぎゃー!」


思わず奇声が飛び出す。


風に顔を引っぱられ、あわあわと言いながら、ぐしゃりと着地した。


一方、ルシナの後から滑り終えたコハナはというと――

相変わらずの無表情で、シュタッと身軽に着地している。


ルシナは少しだけ引いた。


(え。私がおかしいの? また珍獣扱いされちゃうじゃん……)


「自分で飛んで降りた方が良さそう……」


ボサボサになった髪を整えながらつぶやくと、コハナはわずかに目を細めてルシナを見ていた。


―――


薬草屋に着くと、カイは棚の整理をしていた。

店内はハーブ系の香りが漂っており、心が落ち着く。


「こんにちはー」


扉を開けると、カイがぱっと顔を上げて振り返る。


「あれ? ルシナだ! よく来てくれたね。……って、コハナちゃん?」


少し驚いたように目を丸くする。


「なんだ、二人は知り合いだったんだ!」


「そうなんです。えっと……カイさんにお願いがあって来たんです」


「やだなー、“カイさん”だなんて。カイでいいよ」


肩の力を抜いた笑顔で手をひらひらさせる。


「それで? なにかお困りごと?」


カイは片眉だけを上げた。


「えっと……仕事を探してて。ルキさんも、コハナも、カイに聞いてみたらいいって言ってくれて……」


「あはは。そっか。そういえば、コハナちゃんをパン屋に紹介したのも俺だったっけ」


コハナは薬草のビンからカイに視線を移し、コクンと頷く。


カイはコハナに軽く笑いかけ、視線をルシナに移すと、胸をぽんと叩く。


「任せてよ!恋の病以外の相談は乗れるからね!」


そう言って一度うつむき、少しだけ真面目な顔になる。


数秒考えてから、目尻に笑い皺を寄せて、にっこり笑った。


「……。うん!――心当たり、あるよ」

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