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間話: 鏡湖にて
二度目の春が来る前――。
笑いたくても笑えず、泣きたくても泣けず、
コハナはただ逃げていた。
小さな手足を必死に動かし、妖精たちに導かれるままに。
自分が、自分でいられる場所を探して。
森を抜けた先に、静かな湖が広がっていた。
鏡のような水面は、夜空の星をそのまま映している。
コハナは湖の縁に立ち、無表情のまま水面を見つめた。
空気がわずかに揺らぐ。
ここまで導いてくれた妖精たちの姿が、すっと消えた。
「……ほぅ」
音もなく、湖の中央に人影が現れる。
白銀の髪。
赤い瞳。
精巧なビスクドールのように整った姿。
ノスタルジアはコハナを見ると、わずかに口角を上げた。
「お前……あの子の気配がするねぇ〜」
試すようでいて、どこか懐かしむような視線だった。
「ここまで、渡って来たか」
コハナは答えない。
銀の腕輪に触れながら、その視線をまっすぐ受け止めていた。
湖面は静かで、
遠くで妖精たちの光だけが、瞬いている。
「…お前たち、助けてやりなさい」
女神は、わずかに微笑んだ。
間話なので短めです
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