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崖上小屋で今日もハイヒールを眺めます  作者: 小原みん


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13/15

13: 野菜スープ

――翌朝。


というより、昼に近い時間にルシナは目を覚ました。


ベッドの下では、いつの間にかフーが丸くなって眠っている。

起こさないよう慎重に降りると、コハナの姿を探した。


「起きた?」


コハナは、よく寝てたねと言う代わりに、ハーブティーを二つ置く。


(よく出来た子だな……いくつなんだろう)


「コハナ、おはよう」


コハナは無表情のまま、向かいの椅子に座った。


「コハナ、ありがとう……コハナがいなかったら、今も絶望してたと思う……」


「勝手に小屋に住んでて、何もしないわけにはいかなかった」


とはいえ、連れてこられたばかりのルシナを警戒せず介抱するのは、勇気がいるはずだ。


「ねぇ、コハナはいくつなの? いつからここにいるの?」


「15。ここに来て、春が2回きた」


見た目はもう少し幼く見えるが、口調や行動はやけに大人びている。


「なぜ、ここまで?」


コハナが視線を落とし、ルシナははっとした。


「ごめん……言えないこと、あるよね。私もそうだもの」


少し間を置いてから続ける。


「これからも一緒にいてほしいんだけど……いいかな?」


コハナの手を握ると、小さな手はわずかに震えていた。


「うん……よろしく」


コハナは、少しだけ目を潤ませ、ルシナをまっすぐ見つめた。


出て行かなければならないと思ったのか、

それとも、これまで一人でいた寂しさなのか――

その感情の正体は、コハナ自身にもまだ分からなかった。


「スープ作った。食べる?」


心のざわめきを隠すように、コハナは席を立ち、ルシナを見る。


「うん。いただこうかな」


コンロに魔法で火を灯し、スープを温める。


「魔法……生活魔法だよね。なんで忘れてたんだろ……」


ノスタルジアは、流美とルシナの魂が混線していると言っていた。

“魔法なんて存在しない”という流美の常識と、“魔法は当たり前”というルシナの常識。

その狭間で、意識が揺れる。


「私にも使える……はず」


壁にかかったランプへ意識を向け、人差し指でそっと押すような仕草をすると、簡単に灯りがともった。


(なんか、ちょっと感動……電気つけるみたい)


コハナは、ルシナがランプを点けたり消したりしながら、子どものように目を輝かせているのを無表情で見つめつつ、スープをテーブルに置いた。


「なんか……ごめんなさい」


(ランプで遊んじゃった……)


自分より幼い子に準備を全て任せてしまったことに、チリリと罪悪感が胸を焦がす。


フーが鼻をくんくんさせながらテーブルの下にやってくると、コハナは肉と野菜の入った皿を床に置いた。


スープには、鶏肉と人参、じゃがいも、玉ねぎ、ブロッコリー、トマト。

優しい味付けに、バゲットには軽くオリーブオイルと塩が振られている。


食に関しては、記憶の混線を感じさせない。

どちらの世界でも共通する温かさがあった。


作り方を思い返そうとすると、ガス台や豊富な調理器具ばかりが浮かび、どうやらルシナ自身は料理をしていなかったらしいと気づく。


温かい食事を口にすると、心までじんわり温まった。


フーはすでに食べ終えたらしく、テーブルの周りをピラニアのようにうろうろしながら、人の食べこぼしを狙っている。


ルシナは、せめて片付けだけでもと、食べ終えた食器とフーの皿を洗った。


「ハーブティーのハーブって、どこから取ってきているの?」


少しでも手伝いたくて、コハナを見る。


「森の中に群生地があったから、そこから」


「これから一緒に行かない? 外の空気も吸いたいし」


無表情のまま、コハナは小さく頷いた。

それを見て、ルシナが「やった!」と笑顔を見せる。これでは、どちらが年上なのか分からない…。


そのそばで、自分も行くと言わんばかりに、フーが短く“ワン”と鳴く。 


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