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崖上小屋で今日もハイヒールを眺めます  作者: 小原みん


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1/22

1:自損事故

初投稿です

あたたかく見守って頂けると幸いです

事務職員として働く流美は家路に急いでいた。

今日も今日とて、融通の効かない上司に腹の中で悪態をつきながらも乗り越えた。


時刻は八時。連日の残業で疲れている。

しかも外は結構な大雨だ。


早くお風呂に入りたい。

もう帰るだけだし、真冬でもない。濡れてもいいや。


そう思って流美は、自転車をこいだ。


大雨の中、自転車を運転するのは危険だ。

しかも眼鏡をかけているのならば、なおさら。


水滴がレンズに容赦なく襲いかかり、視界がぼやける。

ならば眼鏡を外せばいいのだが、それも敵わない。外せば、それはそれで見えないのだ。


鼻に皺を寄せながら走っていると、黒い影が見えた。


その瞬間――身体に強い衝撃を受けた。


「ぐぇ」


なんとも言えない声が出て、遅れて気づく。


「うぅ。電信柱……」


電信柱にぶつかった衝撃は、思ったよりも強く、自転車の後輪が持ち上がる。


身体がふわりと浮き、視界が揺らぐ。


やばっ。転ぶ‼︎


咄嗟に手を出したが間に合わず、左側に痛みが走る。


足元でブチっと鈍い音がした。

(あっ。これやっちゃった)


足を見ると、電信柱と自転車の間に足が挟まっている。

バランスが取れず、そのまま倒れ込んだ。


鳩尾も、頭も、足も痛い。

眼鏡も飛ばされてしまった。


「うぅぅ……気持ち悪い」


頭、打ったのかな。

ヘルメットすれば良かった……。


薄れゆく意識の中で、誰かの声が聞こえる。


「おい!大丈夫か!?誰か、救急車!!」



ーーー


楽しさを隠せない、小さな子どもの笑い声が聞こえ、ふわりと流美は目を覚ました。どうやら担架で運ばれているようだ。


外は夕暮れ。

さっきまで降っていた雨は嘘みたいに止んでいて、乾いた風が吹いている。


……ストレッチャーじゃない。担架?


しかも悪路なのか、担架は安定しておらず、運ぶ人の足元がふらつき、肩が沈むたび視界が揺らぐ。


「救急車……」


絞り出すように呟くと、


「なんだコイツ。寝てたんじゃなかったのか」


ガラの悪い声が降ってきた。


どういう事?

冷たい汗が背中を流れる。


慌てて身体を起こそうとした瞬間、左足に激痛が走った。


「ぐぁっ……!」


「おいおい。大人しくしてろよ、嬢ちゃん」

「足の腱、切られてんだ。こんな道を運んでやってる俺らの気持ちにもなってくれよ」

「落ちたら、そのまま置いてくぞ」


ガラの悪い男たちに運ばれている。

理解した途端、血の気が引いてくる


「あの……きゅ、救急車は、どこですか?」


恐る恐る尋ねる。


「あぁ?」

男が鼻で笑う。


「だからなんだよ、キュキュウシャって。頭おかしいんじゃねぇのか?」

「ははっ。まあ、だから“コレ”なんだろうなぁ」


男の口元に、無造作なヒゲ。

にやついた笑い。


(助けがきたわけじゃない?)


流美は、自分に異常事態が起きている……と悟った。

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