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第五十三段 逢ひがたき女

【本文】

 むかし、男、逢ひがたき女に逢ひて、物語などするほどに、鳥の鳴きければ、


 いかでかは鳥の鳴くらむ人しれず

   思ふ心はまだ夜ぶかきに



【現代語訳】

 昔、ある男がなかなか逢うことができない女とやっと逢うことができて、睦言を交わしているうちに鶏が鳴くのを聞いて、次のような歌を詠みました。


 どうして朝を告げる鶏はもう鳴いてしまうのだろう。ひそかに貴女を想っている私の心は、まだ夜深くて一向に明るくならないのに。



【解釈・論考】

 なかなか逢うことができない女とやっと逢うことができた、そんな状況における主観的な時間の短さを端的に表したお話です。「鳥の鳴く」ということで現実世界では朝を迎えようとしている時刻ですが、好きな人を想っている自分の心はまだ夜の暗闇にいますよ、と言っている訳ですが、だからまだ朝になって欲しくない、もっと一緒にいたい、という気持ちももちろん込められている訳です。これからがいいところなのに、と思う気持ちも含まれているのかもしれません。物語文が端的であるだけにいっそう歌の余韻が広がります。

 朝の鳥の声をうらめしく思う歌といえば、第十四段の「くたかけ」が印象深いですが、かの歌とこの歌とでは優美さ、抒情性の点で雲泥の差があります。

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