第6話:「地獄のスタグフレーションに乾杯!」──価格も祈りも爆上がり中
アポリア市場、壊れました。
「おいマスク!さっきまで1MPで買えたパンが、今は13MPになってんだが!?」
「仕方ないよ、MPがインフレしてるからね。信仰心のレートが下がったせいだ」
「どうして信仰が通貨なのに経済崩壊してんだよ!? 神、信用されてないの!?」
──ここは、祈れば祈るほど物価が上がる世界。
無限に発行される「願い」と、有限な「魂の供給量」がアンバランスになり、
アポリア経済は今、
"祝福と絶望が同時に値上がりする" という地獄のスタグフレーションに突入していた。
「みんなが『神よ!救ってくれ!』って祈りまくるから、祈りの価値が暴落してるんだよ」
「じゃあ、無神論者が世界を救う時代!?」
そこに現れたのが、
世界経済構造監視機関(通称G.S.I.)の“資本回収係”、通称・赤マント。
「この騒乱を抑えるには、魂の回収が必要だ」
「え、なにそのクソ回収方法」
「安心しろ、失うのは“忘れてもいい記憶”だけだ」
──また出た、青白いメモリウムカプセル。
「ちょっと待て。これ、寄生虫入ってない!?」
マスクが顕微鏡を覗き込む。
そこには、
**“祈りを栄養に繁殖する微細構文性寄生虫”**がびっしり。
「ハッキングウイルスみたいな顔してる……」
「こいつら、信仰心が多いと脳内で再演算を始めて、永久に祈り続けるサイクル作るらしい」
トランプ、怒髪天。
「俺の脳で、勝手に“神のマイニング”してんじゃねぇぇぇッ!!!」
しかし、すでに市場は手遅れ。
魂の価値はメロンソーダ味の気泡より軽く、
祈りの構文は税として徴収され、
庶民は記憶を食われながら今日も“善意”をMPに換金していた。
マスクが囁く。
「……世界って、こうして終わるのかな」
トランプが叫ぶ。
「乾杯だ!地獄のスタグフレーションに!!!」
──そして誰かが、
メモリウムをジンジャーエールで割って飲み干した。
次回、「神って誰が定義したんでしたっけ?」(仮)
定義も通貨も迷子のまま、物語はまだ続く。
※この物語に登場する人物・団体・概念はすべてフィクションです。
実在の人物・団体・国家・超富豪・超天才とは一切関係がありません。
むしろ、異世界の住人です。
※本作およびその世界観、登場用語(例:メモリウム™、魂経済、共感通貨など)は、シニフィアンアポリア委員会により創出・管理されたオリジナル作品です。無断転用や類似作品の公開はご遠慮ください。