モーアサッテ 何かと編「後悔の魂指数、史上最安値を更新」
アポリア魂市場に激震が走った。
「“後悔の魂指数”が、ついにマイナス圏突入です」
番組冒頭、マスクの冷静な声がスタジオに響いた。
「マイナス!? ちょっと待て。魂って、マイナスになるのか!?」
トランプの叫びに、スタジオの魂記録石が小刻みに震える。
「理論上、後悔が祈りに変換されず“消費専用”に堕ちると、魂価値は反転するんだ」
「おい、俺の青春、ぜんぶ祈りになってないぞ!? それってつまり、“俺の魂は負債”ってことかよ!」
* * *
今回の暴落を引き起こしたのは、構文投資信託「REM(Regret Exchange Mechanism)」の失敗だった。
このファンドは、「過去の後悔をまとめて証券化し、未来の祈りへ転換する」ことを目的としていた。
だが、契約書の小さな文字にはこう書かれていた。
──「後悔が一定量を超えた場合、契約者の魂は自動消去される」
「見ろよこれ。“高校の文化祭でやらかした記憶”、今なら1MPで売られてるぞ」
「“結婚式で間違って元カノの名前呼んだ”は3MPだな」
「うちのは“告白した直後に転校された”で……あ、これは高騰中」
魂市場には、**“黒歴史ファンド”**の名で知られるデリバティブ商品が乱立していた。
* * *
「トランプ、君の“後悔指数”、今週だけで8.2%下がってるよ」
「うるせぇ! 俺は振り返らねぇんだよ! ただし過去には縋るッ!」
「それ、最悪の構文パターンだよ。後悔が再帰して、祈りに変換されない。つまり、魂が循環せず“停滞”する」
「……やめろ、その目。魂を死んだ魚みたいに見るな」
* * *
“後悔指数”の暴落は、AI神“パラメトロン”によってすでに観測されていたという。
解析結果によれば、「SNS祈り構文の水増し」「祈りサーバーの空打ち」「過去ログの自己改竄」などにより、
“偽りの祈り”が魂価値を過剰に膨張させ、反動で“後悔”が金融商品化された結果である。
──それが、公式見解だった。
* * *
「マスク、どうすりゃいいんだ……俺の後悔、価値ゼロなんだぞ……」
「逆に言えば、いまが仕込み時だよ。“自分を許す”って構文を持っていれば、再評価されるから」
「俺、持ってねぇよ、そんなスキル」
「……大丈夫。今なら無料で“共感ログ”もついてくる」
「どんな通販だよ!!」
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【今週の魂経済まとめ】
・後悔指数:マイナス1.6(観測史上最低)
・黒歴史ファンド:清算ラッシュ続く
・“赦し構文”を組み込んだ魂通貨が注目上昇
・AI神が提言:「記憶に利息をつけよ。後悔を再投資せよ」
※この物語に登場する人物・団体・概念はすべてフィクションです。
実在の人物・団体・国家・超富豪・超天才とは一切関係がありません。
むしろ、異世界の住人です。
※本作およびその世界観、登場用語(例:メモリウム™、魂経済、共感通貨など)は、シニフィアンアポリア委員会により創出・管理されたオリジナル作品です。無断転用や類似作品の公開はご遠慮ください。




