【どーなる・トランプ外伝:第10話】異世界スマホ契約したら魂も契約された件
異世界アポリアに転移して、三日目。
俺──ドーナル・トランプは、観光ついでにショッピングモールを歩いていた。
その名も「アストラルモール」。なんか名前が中二病だ。
「なぁマスク。この国、Wi-Fi飛んでなくね?」
隣を歩いていたイーロン・マスク(異世界仕様)が、すました顔で答えた。
「飛んでるよ。“構文波”が。魂を媒介にした通信魔術だね」
「なにそのヤバい響き……でもまあ安そうだし、俺もスマホ買っとくか」
見つけたのは《ソウルフォン》。見た目は完全にiPhone。だけど説明文が違う。
【契約には魂が必要です】
……嫌な予感しかしない。
「これください!」
「ありがとうございます。では、契約書にサインを」
店員は笑顔で、銀色のペンと――ナイフを差し出してきた。
「サインは……魂血でお願いしますね」
「……は?」
「こちら、こちら。ちょっと指先からで大丈夫ですから」
俺はなんかカッコいいと思って、ノリで指を切った。
――これが地獄の始まりだった。
* * *
契約完了から3分後。
【通知:あなたの魂、現在27%です】
【通知:広告を祈って解除することで5%回復可能です】
「え、魂って減るのか!?」
そのとき、母親に電話してみようとした俺のスマホが震えた。
【魂残量が10%を下回りました。5秒後に通信が切断されます】
「まってまって、まだ『元気?』しか言ってない!!」
【ピッ】
通信は、容赦なく切られた。
* * *
翌朝、俺の元に届いたのは――請求書だった。
【ご利用明細】
・構文通信料:3,200MP
・自動祈りアシスト:1,500MP
・うっかり神様召喚:14,000MP
・魂基本料:1魂/月(税込)
「魂1個で“税込”ってなんだよ!!!」
イーロン・マスクが俺の肩を叩く。
「トランプ。魂契約の約款、ちゃんと読んだ?」
「読むわけねぇだろ! 30ページあったぞ!?」
「最後のページに小さく書いてあるんだ。“死後も継続請求”って」
「死んだあとも課金されんのかよ!!」
──こうして俺は、異世界スマホで魂を課金される人生が始まった。
※この物語に登場する人物・団体・概念はすべてフィクションです。
実在の人物・団体・国家・超富豪・超天才とは一切関係がありません。
むしろ、異世界の住人です。
※本作およびその世界観、登場用語(例:メモリウム™、魂経済、共感通貨など)は、シニフィアンアポリア委員会により創出・管理されたオリジナル作品です。無断転用や類似作品の公開はご遠慮ください。