プロローグ
目を覚ますと、身体がふわふわしていた。
あ、浮いてる。って思った時に宇宙にいるのでは?と思ったけれど、どうやら違うらしい。
ちら、と横を見れば宙に浮いている赤ちゃんが数え切れないくらいいた。
どうして、なんで赤ちゃん?
私、大学の講義が終わってアパートに帰る途中だったよね。レポートを早くやらなきゃって急いでて、横断歩道渡ろうとして……。
あ……私……轢かれたんだ。
ざざ……ざ……とノイズが頭の中に再生されていく。
自分のことなのに、誰か他の第三者になったかのように私は私がトラックに轢かれる映像を見ている。
助からない。ってわかった。
身体がトラックに当たった瞬間の感覚なんてまるでなくて。
痛みを感じないで死ねるのって幸せなんだって、私の身体が宙を舞う姿を見て思った。
心が真っ黒の絵の具で塗りつぶされそうで怖い。
「ぴおちまるちゃんまんめんさま!!」
あと少しで黒くそまりそうになった瞬間、可愛らしい声に目の前が白くなっていく。
「ようやくお目覚めですね!私めはこの時を長い間お待ちしておりました。ささ、起きたのであれば眠りの国に長居は無用でございます。これから私めと赤ちゃん王国へ行きますよ!」
「……え、と」
「どうなさいました。ぴおちまるちゃんまんめんさま!!」
ずいっと顔を近づけきた赤ちゃんに肩が跳ねた。
私の名前は『ぴおちまるちゃんまんめんさま!!』ではない。それは分かるのに亡くなる前の名前が浮かばない。
「現世での名前は眠りの国にいる間に消えるようになっております。赤ちゃん王国では可愛らしい名前になるのですよ」
「……ぴおちまるちゃんまんめんさま!!も?」
「ええ!私めは好きです」
顔に出ていたのか、私の疑問は一つ解決したけれど、ぴおちまるちゃんまんめんさま!!の由来が全くわからない。
好きですと言われても……。
「詳しい話は赤ちゃん王国に着き次第、女王からあると思います」
「じょ、おう?」
「はい!女王様はぴおちまるちゃんまんめんさまのお目覚めをとてもお待ちしておりましたので」
きっと大喜びですよーと自分のことのように嬉しそうに話すから、私は視線を逸らしてしまった。




