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自殺絆助  作者: 寝藻
出会ってから4日間の出来事
13/19

バイクのトリトン

2023年10月以来の更新です!凄くない?2年ちょっとぶりの更新とか奇跡やんと自分でもおもってしまいます。


久々にこのページを開くと、

「この連載作品は未完結のまま約2年以上の間、更新されていません。今後、次話投稿されない可能性が極めて高いです。予めご了承下さい。」

的な文言が!


ワシだって書きたくなくて書いてないんちゃうわい!


私は憤慨し書いた。


キッカケをくれた定型分さん。ありがとう。


ただもうちょっと、なんか贅沢ですけどもうちょっと。読みましたって言葉だけでもええからくれたら。もっと頑張れる気がしたりする気もします。たのむ!だれか…だれかぁー!!

 目の前には太いゴワゴワの髪と髭を無造作に伸ばした賢者の様な人相で、口を半開きにしたおじさん"真実の口"のモニュメントが飾られている。

 これが本物と大きく違うのは大きさだろうか。

 本物は…と言っても映画でしか見た事は無いが。実物は直径2メートルもあれば良い方だろうが、目の前にあるこれは5メートルはあろうかと言う大きさである。


 真実の口はもともとマンホールとして製造されたものだ。その為、水に関わる神を模様として彫られることがままあったそうだ。

 そんなマンホール界で最も有名な、白い半袖シャツが似合う某国の女王とローマで休日に観光したくなる場所にある実物にはトリトンの顔が彫られているそうだ。そうなると、それと大きさ以外そっくりそのままな目の前の巨大なコレにも、トリトンが彫られていることになる。


 繁華街の入り口の壁にあるコレには、顔の横に "いろんなお店よったてや“ いかにもトリトンが言いました。という体で吹き出しの様なポップが飾られているが実に罰当たりである。海神も、何のゆかりもないこんな場所で無惨な扱いを受けるとは夢にも思わなかっただろう。


 モニュメントの前には待ち合わせの男女が多数暇を持て余し、スマホ片手に何やらポチポチとやっていた。その殆どが若者であり自分の様なおじさんは稀だ。


 しかし稀ではあるものの、全くゼロという訳でも無い。謎に胸元にバラの花を一輪刺しているおじさんもいれば、落ち着きなく周りを伺っては、何度もスマホの画面を確認するおじさんもいる。


 落ち着きのないおじさんは出会い系が何かで呼び出されたものの時間になっても相手が来ない、バラの花のおじさんはおそらく遠くから監視され笑い物にでもなっているのではないだろうか。


 そんなことを考えていると、もしかして自分も同じ様な目に合っているのではないかと、約束の時間にもなっていないのに不安になってくる。


 そんな時に、ピコンとスマホにメッセージが届いた合図の音が鳴る。


 悲しいかな自分にメッセージを送ってくる人間はそうはいない、恐らくあの2人のどちらかだろう。


 画面を確認するとヒナからだった。でかい真実の口をバックに、自分が今いる広場の画像が送られてきた。よく見るとその写真には矢印がされていて、その矢印の先には自分がつまらなさそうな顔をして突っ立っている。この画角からすると向かいの交差点の建物の2〜3階から撮った画像の様だ。

 慌てて顔を上げると、道路を挟んで向かいのビルのガラス張りの2階部分に女子高生が2人立っているのが見える。それがリコとヒナなのかは自分の視力では識別できないが、この写真を見る限りそうなのだろう。


 メッセージに "さっさと来い" と書いて送信すると、向かいのビルの2人が移動し出すのが見えた。

 どうやら自分も、待ち合わせ場所を遠くから眺めて笑い物にされている人間の1人だった様だ。違うのは、それでもちゃんと会いにきてくれるところだろう。これは大きな違いである。


 2人が笑いながら交差点を渡りこちら側に近づいてくる。非常に心象の悪い状態である。

 それでも"おじさんお待たせぇ"と言われながら、合流できた自分の事を周りの待ちぼうけおじさん達はどんな目で見ているのか。怖くてそちらを確認する事ははばかられた。

 そして一刻も早くこの場を後にしたいと、2人への心象が悪い事への言及は後回しにして。こっちだと、足早に繁華街の中へと進んでいく。


 目的の日本海部品は繁華街の外れ、少し外側と言っても過言ではない国道沿いにある、ここから歩いて数分の場所だ。人混みを掻き分けながら煌びやかな中心街から裏路地へ入ると、街の様相はガラリと変わる。

 雑居ビルや壁をトタンで覆ったような建物が立ち並び、タイル張りだった地面はボコボコでザラザラと荒れたアスファルトに変わり、小さい規模の居酒屋やスナック、怪しげなお店が点々と軒を連ねる。タバコの吸い殻を筆頭にゴミが散々としていて、謎のシミがそこら中にある。それを抜け国道沿いの方まで行くと、また様変わりして綺麗な飲食店が立ち並び煌びやかな様相を呈す。


 人間と同じだ。外見や外面ばかりよくて中身は欲や嫉妬、文句と虚勢にあふれている。それを覆い隠す様に、または少しでも自分の我を通しやすくするために飾り立て本性を隠すのだ。

この街も抱えすぎた人間の醜悪な部分が全て内側に内包されている。

 しかし自分にとっては煌びやかな外面より、汚く憎悪をもよおすようなものであっても本当のこの姿の方が落ち着くのだ。おそらく、そこには嘘がないからである。


 国道沿いに出てから横断歩道を渡り、繁華街の反対側まで歩いた場所に目的の建物。日本海部品はあった。


 外観は決して綺麗とは言えないが、年季の入った良い灰色をしている。ビルの一階には小さくはあるがバイクを止めるスペースが設けられている。

 自慢のバイクに乗ってココに駐車するのは原付しか持たない高校時代は憧れであった。

 そのスペースには不定期にバイク雑誌の記者が現れ、自慢のバイク紹介コーナー等で取り上げられたりする。そのため気合の入ったカスタムバイクでここに通う人間もいる。そんな場所だった。

 ビルの上には大きく日本海部品と書かれて、近くの高速道路を通ると目につく様になっている。一棟まるまるバイクパーツやバイク用品を販売する建物になっていて、この辺のバイク乗りなら一度は訪れたことがある有名な場所ではないだろうか。

 自分もなけなしのバイト代で原付を買って、それをカスタムする為にバイク雑誌を読み漁り稼いだお金を惜しみなくバイクに注ぎ込み、友人達と足繁くこのお店に足を運んだ。もしかしたら今日、自分のバイクが雑誌に特集されるかもとワクワクしたものだ。

 とにかくバイク乗りの中ではかなり有名なショップで、時にはわざわざ遠方からパーツを買いに来る人が居るほどだ。都市伝説ではあるが、揃わないパーツは無いと言われていたりもする。


「わーこの建物ってバイク屋さんだったんだぁ」


 かなり有名なお店で…


「煩いバイクがいっつも止まってて、なんのお店なんだろって思ってたのよ」


 バイク野郎の憧れ…


 小娘共は人の大切な思い出も土足で踏み荒らす。

 そう思っていた矢先、リコが目の前にあるバイクを指差して。


「ほらこのバイクとかもハンドルこんなにして、無意味なビラビラいっぱい付けて…」


「んーリコちゃんその辺にしておこうかぁ…」


 指を刺す方向にはチョッパースタイルと言われるハンドルをカマキリのカマを高く構えた時の様なステアリングタイプのアメリカンバイクが止まっていた。その上がったハンドルからは革製の太い糸状のものが幾つも垂れ下がり、タンク付近からシートに掛けてよくなめした皮で煽われていて、銀色の部分は統メッキ。マフラーは外側がファイアーパターンの彫り物を施された見事な仕上がりになっている。

 どう考えても見ただけで、こだわりにこだわり抜いたオーナーの想いが詰まっていた。このバイクを小馬鹿にする様な発言を持ち主にでも聞かれでもしたら事だ。往々にしてこう言うバイクに乗る輩はイカついのである。


「でもでも、このハンドルどうやって運転するの?ぶら下がるのかってぐらい上げちゃってるじゃん」


 この小娘はまだ言うか。


「リコは好きな食べ物とかあるか?」


「え?なに急に。あるよ。麻婆豆腐」


 急な話題の変更にもしっかりついて来てくれる素直さがリコにはある。この美徳を利用しない手はなかった。


「そうか、麻婆豆腐は自分も好物のひとつだ。でも世の中には嫌いな人間もいるだろ」


 リコは少し悩んで斜め上を向き。渋々と言った感じで理解を示した。渋々な雰囲気を見るに、麻婆豆腐を嫌いな人間なんて居るの?と疑っているのだろう。


「味覚は人それぞれだろ、リコの嫌いなものが好きな人もいれば、嫌いな人もいる」


「私嫌いな食べ物なんて無いよ。生玉ねぎぐらい」


 あるじゃん!嫌いな食べ物。と思いはしても、リコの反応にいちいち付き合っていたら論点がどんどんズレてその内に日が暮れてしまうので無視する。


「だからこのバイクも一緒だ。自分ではよく無いなぁと思っていても…」


 そこまで言ってリコの方をチラリと見ると、なんだかリコがよそよそしい。私はこの人と関係ありませんよ。と言った雰囲気を醸し出しているのだ。説教に飽きたのか、今までならリコならどんな話にも取り敢えず付き合ってくれる態度を示していたので、その態度を疑問に思っていると、後ろから肩を叩かれる。


「なんだよ」


 ヒナか?と思い、少し邪険な態度が出てしまう。どうせ、こんこんとリコに説教する自分をバカにするのだろう。


 振り返るとそこには、174センチの自分が見上げなければならない程大柄な男が立っていた。

 太いゴワゴワの髪と髭を無造作に伸ばした真実の口のトリトンの様な面相の男だ。違う部分と言えば少し細めのサングラスをかけて、年季の入った革ジャン、同じく年季の入ったジーンズを纏った姿をしていて、マンホールのように平たく無い部分だろうか。

 嫌な予感しかしないその出立に、この嫌な予感が当たってくれるな!と言う願いを込めてるが、知らずに涙目になる自分がいる。自分はトリトンの第一声を待つ他なかった。


「俺のバイクの何が良くないって」


 やっぱりあなたのバイクですよねぇ。よりによって "自分は良くないと思っても" と言ったタイミングで乗り手と出くわすか…。蛇に睨まれたカエルの様に脂汗がドバッと吹き出すのがわかる。しかしこうしていても事態が好転することは無いだろう。なけなしの勇気を振り絞り言葉を発した。


「じっじっ自分はそんな事は一切思っていません」


 ここでリコを犠牲に自分の正当性を訴えることも可能だが、それが大人のする事か?と言う葛藤が自分が助かるであろう最短距離を拒絶する。


「とっとっ通りがかった人がこのバイクにいちゃもんを言っていたので、彼女達も同じ轍を踏んでほしくないと、このバイクの素晴らしい所を紹介していたのです」


 まさに苦しい言い訳である。髭もじゃの男も自分の嘘を確信した様な訝しげな顔をして、細いグラサンがコチラを睨む様に光る。


「ほぉ。なら俺にもご高説してくれねぇーか、このバイクの素晴らしい所とやらをよぉ」


 ずいっとコチラに前進し、唾が降りかかるほど顔を近づけ凄む相手に自分の腰は砕けそうになるが。これは起死回生のチャンスだ。自分もバイク乗りである、バイクをどう言うふうに褒めれば相手が喜ぶかをよく熟知しているつもりだ。


「はっはい!」


 大きくそう返事をして少し考え、言葉を選びながら慎重に話し出す。


「一言で言うなら、このバイクから感じれるテーマは人馬一体…ですね」


 そう言ってチラリと相手の顔色を伺うが、全く響いている気配はない。いやもう進み出したからには後には引けない。


「一見運転しにくそうに見えるこの高くそびえ立ったハンドルも、ただでさえアメリカンの低い車体を更に下げる事でより重心を安定させバランスを取りやすくしている。そしてこのタンクからシートに掛けての革が、馬の鞍を連想させ、ハンドルから垂れる皮の紐はさながら馬のたてがみがたなびく様を彷彿とさせますよね。マフラーの飾りはウエスタンブーツを思わせる見事な装飾になっています。イージス…いや、このメッキ部分の輝きとそこに映る影すら計算し尽くされたような車体。そこに来てお兄さんの出立たらんや。バイクに跨った姿はさぞ壮観でしょう!」


 捲し立てる様にこのバイクを褒めちぎる。バイク乗り、特に古いバイク乗りには人馬一体というフレーズはかなり効くはずなのだ。そこに来て、タンクからシートにかけて装着している皮のオプションはかなり珍しい代物で、自分の長いバイク人生でも似た様なものすら見たことがない。おそらくワンオフの特注品だろう。この代物を褒められて嫌な気持ちになるわけが無い…

 無いはずなのだが…


 トリトンの相変わらずの厳しい顔が更に厳しくなった様な気がするのは気のせいだろうか。

 いうことは言った。後は男のリアクションを待つほかなかった。


「兄ちゃん」


 そう言ってトリトンはグラサンに手をかける。

 相手のその所作に、自分は自然と生唾をゴクリと飲み込む。


「分かってんじゃねぇーかぁ!」


 トリトンはそう言ってグラサンを取り、その下のつぶらな瞳を露出させる。そして勢いよくハグをされ、自分はトリトンの中肉の胸に顔を埋めさせられた。

 ハグからはすぐに解放され、トリトンは上機嫌で自分の背中を何度か殴打してきた。


「おらぁよー子供の時からイージスライダーに憧れてよぉ。にいちゃんも喉元まででかかつてたよな!バイクを乗るならアメリカン!それにチョッパースタイルだって若い頃から何台も乗り継いでブラッシュアップさせた来たんだよ!」


 イージスライダーというのはアメリカの映画で、男たちが凝ったバイクに跨り旅をする、と言う内容の映画だ。トリトンのバイクスタイルはイージスライダーに登場する主人公のバイクに似ているのだ。しかし褒めちぎる時にその名前を出し渋ったのには訳がある。イージスライダーのバイクにはアウトローな、一種の汚さが反映されていた。トリトンのバイクにもそれはあるにはあるのだが、全体が洗礼され過ぎていて "アウトローなアメリカの男達ぃ" と言った雑さが無かったのである。


「と言う事は、この洗礼されたスタイルは、そこから自分が導き出した答え。貴方はイージスライダーを通して自分のスタイルを見つけたと言う事ですね!」


 久々のバイク談義に少しテンションが上がってしまい、言わなくてもいいことをペラペラと喋り出してしまう。自分もバイクが大好きなのだ。自殺を思い至った際に、必需品以外の中で唯一バイクを手放せなかったのは一重にそれに対する愛着からだ。トリトンの乗っているバイクは、自分の興味のある種類のバイクでは無いが、こうしてバイクの事を一緒に語れる人が居ると言うのは嬉しいものだった。


「そうだ、そうだよ兄ちゃん。イチャモン付けて悪かったな」


 そう言いながらゴツい腕で再びハグをされたが、今回は先程より嫌では無かった。


「ねぇーちゃん達も怖い思いさせちまったな。お詫びにコレやるよ。大したもんじゃ無いけどな」


 そう言ってトリトンが何やら財布の中から紙の様なものを取り出して差し出してきた。

 なんだと思いながら受け取ると、どうやら日本海部品の割引券の様だ。


「それじゃ俺は行くぜ。兄ちゃん、On the roadside somewhere again.」


 On the roadside somewhere again.(またどこかの道端で。)これはイージスライダーで主役の1人ビリーザブラックが冒頭から道すがら出会った人達と別れ際に必ず言ったセリフである。

 しかしこのセリフは最後にエイリアンライダーが大爆発した直後、爆破を背にバイクのマフラーを肩にかけたセンセーショナルな状態でも使われていて、それがあまりに有名になってしまった為に誤用されがちだが。本作を見たことがある人間であれば、このセリフがハートフルな。粗暴ではあるが心の優しいビリーが悩みを抱え、それでも強く生きる愛すべき人達に使った台詞だと言う事を知っている。


 それを言われた登場人物達は一様に掌を広げて前に出し、旅立つビリーとハイタッチするのだ。こんなチャンスは滅多に無い。自分も作中にあった様に掌を広げる。トリトンはバイクを走らせ自分の横を通り抜けざまに手と手が合わさりパチンと大きな音が鳴った。


 何と清々しい気持ちか。


 映画のワンシーンを見知らぬバイク仲間と再現できる日が来ようとは。自然と気持ちが高揚し、知らず知らずの内に嬉しい気持ちが顔に出てしまう。

 そのまま目線をリコとヒナの方に向けると、自分の顔を見てすごい嫌そうな表情をする2人がいた。


 瞬間自分が満足した様な笑みを浮かべている事に気が付き表情を素早く直すが、時すでに遅しだ。

 2人から見れば。謎のやり取りをしたおじさんが満足げにニヤついている気持ちの悪い表情に見えたことだろう。この事をヒナに茶化されなければいいが…


  すると2人は素早くハイタッチを交わし、リコはバイクのハンドルを握った様な仕草で駐輪場の奥へと走り去り。ヒナは、こちらに気持ち悪い笑みを浮かべて振り返った…


 それは先ほどの自分の真似をしているようだ。


 コレが私刑か。法的には禁じられていると思ってはいたが、醜態を晒そうものなら即斬首。それが今の若者のやり方らしい。


2年経っても相変わらず文才がこんな感じです、そもそも2年何も書いてなかったので衰えすらあるかと存じます。

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