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その先に  作者: 半月
7/20

一般人と姫君

王族、しかも時期に王になる王位継承者第一位に頭を下げるとあればそれは城のなかの誰よりも偉く姫の近兵もしくはお供をするかなり身分の高い証となる。

「姫様・・・・・・。」

ナハスは空を見上げた。

その空には星が輝いていた。

ファーラは心苦しかった。

どうしてこんなに苦しいのかわからない程。

言いたいことも言いたい人にちゃんと伝え、別れを告げてきたというのに・・・・・・。

そしてナハスは家に入り、ファーラは城に帰った頃、二人は両親に呼ばれた。

ファーラは王宮の間へと足を運んだ。

「おまえに護兵をあげようファーラ。」

ナハスは父親の前に立ち、母親は息子と父の顔を交互に見てから腕を組んだ。

「おまえ・・・・・・護兵になるか?」

『え?』

同じ時間、二つの言葉・・・・・・二つの疑問。

「何を・・・・・・何をお考えですか。」

ファーラはぐっとさっきから出かかりそうになる言葉を必死に押さえていた。

「カリアと護兵・・・・・・今後のおまえの近兵だ。ちょこまか動くには女だけでもいいかもしれないが・・・・・・・まあ身を守るためだ。そのことをタイターナへ伝えたら条件が平民であり、王である私が特別気に入っている人間以外という話しでな。」

「何故それを私に言うのです?私は異国へ流される身・・・・・・私の同意など求める必要はないでしょう。」

「そうだな。まあどちらにしようと恐らく護兵は彼で決まるだろうしな・・・・・・。」

「話はそれだけですか?王。」

「ああ。もう部屋に戻ってよいぞ。ちゃんと明日の朝の出発に備えておけ。」

「はい。」

すっと姫は王の前できびすを返し、去っていった。

何一つ逆らえぬ自分に唇を軽く噛み、心の底で全力で悔しがっていた。

そのころ、混乱する疑問がもうひとつ。

「おい親父・・・・・・それはどーゆうことだ?」

ナハスは訳がわからなかった。

「おまえはこの国の姫様が好きだろう。」

「はあ!?」

「前々から知っていて近付けぬようにしていたが姫様は今回嫁ぐらしい。いい機会だ姫様を守りながら自分の無力さを知れ。」

そういってナハスの父親は部屋を出ていった。

「嫁ぐ・・・・・・?どぉゆうことだよ!・・・・・・ファーラ・・・・・・。」

「姫様を守るのよ?あたしだって納得いかないわ。どうして姫さまがいかなくちゃいけないのか!でもどうやら姫様は国王になる気はないようだし、今回のことに関しても姫様が納得しているわけではないみたい。」

「・・・・・・ああ・・・・・・だからどうして私ばっかりって・・・・・・。」

「あんた、さっきから何言ってるの?」

「なんでもねぇよ。」

そして翌朝の明け方・・・・・・。

軽く胸当てなどの鎧を纏い、ナハスはファーラの護兵として待っていた。

そこへドレスをまとい着飾ったファーラが現れた。

「・・・・・・ナハス!?何故おまえがここに・・・・・・?」

「俺が護兵に選ばれたんだ。」

「・・・・・・そうか・・・・・・。」

「みんなおまえが行くのを嫌がってる。」

「私も嫌だが・・・・・・説得してきた。私は王にはならないし・・・・・・それに今回のことに関しては私は嫁ぐためにいくのではなく“調査”するために行くのだと。」

「そうか。」

「ファーラ様・・・・・・そろそろお船へ。」

カリアがそろりと顔を出し、ファーラ達を急がせた。

「そうだな。それでは行こう。旅は国の動揺をあまりさそわせないためとはいえ・・・・・・両親にも見送られずこんな形で始まるとはな・・・・・・。」

「ファーラ・・・・・・。」

ナハスが城の方向を眺めるファーラに手を伸ばすが、ファーラの次の言葉に伸ばした手を止めた。

「ナハス。できればおまえには・・・・・・こんな姿を見せたくなかった・・・・・・。」

親に反発しながら生きてきた人生なのに・・・・・・結局親に屈することしかできなかった私をナハスに見られたくはなかった・・・・・・。

ファーラはくるりとナハスの方に向き直ると厳しい顔つきになり、一言「出発!」と言った。

タイターナからの舟漕ぎ達と船にカリアとナハスとファーラの三人がのる。

中心にファーラが座り、その斜め後ろにカリアが、そしてファーラの斜め前にナハスが座った。

「ほう・・・・・・野蛮国のじゃじゃ馬姫と聞いていたが・・・・・・これはまた見事な・・・・・・。」

上から下までファーラの全身をなめ回すように見る船乗り達。

その顔には服から体が透けているみたいないやらしい笑みが浮かんでいる。

ファーラは黙って目を閉じ、カリアは少しうろたえ、ナハスは船を漕ぎながらもなおファーラを見渡す船乗りを睨み付けた。

「ファ、ファーラ様?」

カリアがファーラの顔色を伺う。

「何ですか?カリア。」

ファーラの声はいたって冷静でみっちりレッスンをこなした結果なのか言葉遣いも自然だった。

「い、いえ。その・・・・・・ご気分が悪くなりましたら私に言い付けてくださいね。」

「ええ、わかりました。ありがとう。カリア。そうです。ナハス。」

いきなり自分の名を呼ばれ、驚くナハス。

「は、はい。」

「あなたに頼みたいことがあるのです。」

「何でしょう?」

ナハスも自分が自然に敬語を使っていることに気が付いた。

それほど今のファーラは威厳深く、神秘的なものに見えた。

「タイターナへ近づいたら教えてください。私はそれまでこのまましばらく休んでいることにします。」

「わかりました。」

しばらくの沈黙が続く。

目を閉じ、じっと動かないファーラ。

その姿をナハスはじっととらえていた。

着飾られ、異国の衣裳を纏った姫君ファーラ。

意志は固そうでそれでも他人を引き付ける何かがある神秘的な人。

知ってるんだ。

俺・・・・・・あなたがずっともっと遠くへ行ってしまうこと。

本当は幼なじみなんかじゃいられなかった。

だけどそれでも俺だけは姫と平民だってなんだって近くに居たかったから幼なじみで我慢してたんだ。

だからあなたのことは知ってるはずだった。

王達の陰口や拗ねる顔・・・・・・いろんな表情を俺に見せてくれるから少し・・・・・・勘違いを起こしてたみたいだ。

俺には絶対何でも打ち明けてくれると思ってたのに・・・・・・秘密ごとなんかしないと思ってたのにあなたは1人でいろんなことを考え込んでた。

だから・・・・・・あの時俺に初めて涙を見せたんだろ?

1人でなんでも抱え込もうとしたから・・・・・・初めて俺に見せた泣き顔・・・・・・それでも抱え込んでいるものを俺に教えようとはしなかった。

本当は・・・・・・一番近い用で一番遠いのかもしれないよな・・・・・・。

平民と王座を蹴った姫君とじゃ・・・・・・。


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