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その先に  作者: 半月
6/20

「お?俺に惚れたか?」

「な、何言ってるんだバカ!おまえの心臓の音、すごく早いぞ!何かの病気か!?」

「違う!病気じゃない!いつものことだから気にするな!」

そういってスタスタ歩きだした。

顔を真っ赤にして大人しくなってしまったファーラと顔を赤くしたナハス。

それから二人はしばらく黙っていた。

昔よく遊んだ森に入っても。

沈黙を破ったのはナハスだった。

「ちょっと休憩な。」

そういって木の上にファーラを座らせる。

「お、折れないか?この枝・・・・・・。」

「折れやしねえだろ。」

「・・・・・・腕疲れただろ?貸せ。」

「あ?何する気だ?」

「マッサージしてやる!」

ん!と自分の手を伸ばすファーラ。

「い、いいから!」

「いいから貸せ!」

渋々と腕を差し出すナハス。

「よし。」

そう言って微笑んだファーラ。

「っ!」

ナハスは再び赤面した。

そんなのお構いなしにナハスの腕をとりマッサージをはじめた。

少しするとナハスが顔を歪めた。

「ぃっ・・・・・・。」

「ここか?ここが痛いんだな?」

すると腕をさすりはじめた。

「王って一応王族の血から決まるんだろ?お爺さんのその前の王の血筋から決まって・・・・・・同じ年くらいの王を選ぶ・・・・・・。」

「・・・・・・ああ、そうだ。」

「思ったんだけどよ・・・・・・普通に考えて見りゃ皆、俺だってわずかに王の血筋引いてるんじゃねぇかな。だって男は相手を変えてバンバン子供生むわけだろ?もしそいつらが二世代続いてそれでも王になることがなければ一般人になるんだろ?」

「そうかもしれないな。」

「時々思うよ。この国の人たちはお前を王にしたがるけど、お前が王にならなければって。」

「・・・・・・私は王にはならないよ、ナハス。」

私は・・・・・・タイターナへ嫁がなくちゃいけないんだ。

野蛮そうな国になったタイターナへ・・・・・・。

でもそんなこと言ったら国中がきっと大変なことになってしまうから・・・・・・黙っておいたほうがいいのだろう。

「どういうことだ?王は民から決まる。辞退するってことか?王位継承権を誰かに譲るのか?王位継承者第一位だろ?」

「そうだな・・・・・・王位継承者第一位の特権を私は王位継承者第二位のセタルに譲るよ。もしくは王位継承者第三位から下になるかもしれないが・・・・・・私は王にはならない。それは王達も望んでいたことだし、元々城の生活は私には会わないからな!」

ニッと笑う。

「・・・・・・何か隠してるだろ?」

「なんも。ナハス・・・・・・そろそろ私は城に戻らないとまずいのだが。」

「・・・・・・そうだな。」

木から、すたっと飛び下り、足など何事もないように歩きだす。

「おいファーラ!お前、足!」

靴を履いて歩いていくファーラ。

「平気だ!」

本当は平気ではない。

でもナハスといると自分を見透かされてしまう。

何より今まで嘘を着いたことのないナハスにこれ以上隠し事をして嘘を吐くことがつらかった。

「・・・・・・ナハス。」

駆け足でファーラのところに来たナハス。

「ん?」

ファーラはナハスの背中に額をつけた。

「なんで私は姫なんだろう・・・・・・好きなこともできやしない・・・・・・どうして私なんだ・・・・・・どうして文化なんて・・・・・・血筋なんてあるんだろう・・・・・・。」

ナハスの背中に顔を埋めた。

「いやになる・・・・・・。」

そうつぶやいて。

ナハスの心臓が波打っている。

人間が人間であるための生きている証の音・・・・・・。

「戻らなくていいのかよ。城に。」

「私はこの国とナハスやカリアがいてくれたらそれだけでいいのに・・・・・・後は何も望まないのに・・・・・・。」

「・・・・・・ファーラ・・・・・・。」

その後、ファーラはナハスからそっと離れ、弱々しく笑った。

「愚痴言ってわるかったな。」

ガッ!

一瞬何が怒ったのかわからずにいるとどうやらファーラはナハスに抱き締められているらしかった。

「な・・・・・・!」

「無理してんじゃねえよ!何がそんな苦しいんだよ!」

「や、やめろ!離せ!今すぐ離せ!」

ドンドンっとナハスの体を叩いたり押したりするが、なかなか力が入らないのと、全然ナハスはピクリともしなかった。

「やめろ・・・・・・やめてくれ・・・・・・泣いてしまいたくなるから・・・・・・。」

普段強気なファーラの面影さえなくしていた。

心身共に弱っていた。

両親には邪魔者扱いされ、弟には憎まれた。

私は・・・・・・何のために生まれたんだ。

「・・・・・・苦しい・・・・・・ナハス・・・・・・お前の優しさが・・・・・・苦しい・・・・・・。」

人前で見せたことのないファーラの泣き顔だった。

ギュッと強く腕が絞まるのを感じていた。

「家族全員に嫌われたのだとしても・・・・・・私はユリアが好きだ・・・・・・ここを離れたくないのに・・・・・・。」

次の瞬間、ナハスの顔つきが変わった。

ユリアを離れるってどういうことだ!?」

「明後日がくれば・・・・・・すべてがわかる。」

そういって姫はナハスを突き放し、走り去った。

「・・・・・・どういうことだよ・・・・・・。」

ナハスは取り残されしゃがみこみ、ファーラはいつになく沈んだ顔で城に帰った。


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