赤面
「でも本当、久しぶりだな。ナハス。私と始めてあったときは私よりも小さくてガキ大将で、その上まだ互いに4~5歳だった!」
「お前より背が低いとかどんだけ昔の話してんだよ。」
ナハスはファーラの頭一個分背が高くなっていた。
ファーラは首を傾げた。
ファーラは今回、成り行き上ヒールをはいていて普段より確実に背が高いはずなのだが、それでも頭一個分の差がある。
「おま、また伸びたのか!」
「ああ、お前とは最後にあってから2年経つしな。それにお前がいるときくと親父が血相変えるからあえても今まで一年に一度くらいになったし。ここ最近じゃお前の行きそうなところも街に来そうな時期まで警戒しだしたんだ。」
「それは・・・・・・ひどいな。私はナハスに会いたかったのに会えなかったのはそういう理由か・・・・・・。」
「俺かお前が異性ではなく同性ならばよかったのだろうか・・・・・・。」
「仕方ないだろ?私達は異性なんだ。でも私はナハスだったら安心できると思うんだけどな・・・・・・。」
「それはどういうことだ?俺を男として見てないってことか?」
「いや、ナハスは男だけど・・・・・・なんか笑っちゃうな!前は私より弱くて頼りなかったよな!」
そういいながら崖を降りていくと痛めた足に少し無理が出たか足首をひねり、バランスを崩した。
「うあ!」
パフっとナハスにぶつかった。
「大丈夫かよ?」
「あ、ああ、悪いな。」
「ここ崖だぞ?一メートルくらいの高さだけどその格好じゃ飛び降りんのつらいだろ。」
そういうと先にナハスは飛び降りて受けとめるから落ちてこいと言った。
「ば・・・・・・ばかいうな!この格好だって私は平気だ!」
といいつつ、ヒールでバランスを崩し、落下。
「っ!あ・・・・・・ナハス・・・・・・大丈夫・・・・・・!?」
いきなり引っ張られ木に押しあてられた。
「な!何するんだ!離せ!」
振りほどこうとして失敗した手がいとも簡単に離れた。
「俺だって男だよ。“姫様”」
その瞬間にファーラの表情は固まってしまった。
「おまえのこと・・・・・・信じてたのに・・・・・・。」
手首を押さえながらファーラは言った。
「・・・・・・男として見てもらえないって言われたら・・・・・・仕方ないだろ・・・・・・。」
後ろを向いて唇を噛みしめ、小声でつぶやくナハス。
「信じてたのに・・・・・・!おまえだけは・・・・・・ナハスだけは私を姫様呼ばわりしないって!」
あまりにも予想していた言葉と違ったナハスはただ驚くことしかできなかった。
「は?」
「おまえだけは私を同等のただの人間として扱ってくれるって・・・・・・信じてたのに・・・・・・私はやはり王位継承者だからか!くそ!仲間ができても・・・・・・みんな私から離れてくんだ!どうして・・・・・・。」
本気でそのことを嘆いているファーラを見てナハスは笑った。
「ぶっ・・・・・・本当、おまえには適わないよ!」
「何・・・・・・笑ってるんだ。」
ファーラは軽くナハスを睨んだ。
「いやいや・・・・・・お前は今までもこれからも姫様だし、それはいつまでも変わらない。つまりな?姫様と呼んだからって今までと何かがかわるってわけじゃないんだよ。」
「・・・・・・本当か!本当だな!」
ぱぁっとファーラの表情に笑顔が戻ってくる。
「ああ・・・・・・むしろあんたが王位継承者でなければと俺も思うよ。」
「なんだ。どういうことだ?王位継承者ではなければユリアの平民達か?それもそれなりによさそうだな!・・・・・・私もタイターナに渡る定めなどくだされなかっただろうしな・・・・・・。」
「なんだ?なんか言ったか?」
「いや、なんでもない。しかしお前、でかくなったよな!私も平民に生まれたかった・・・・・・平民は城よりずっと自由で暖かい。まるでお前やカリアの心のようにな。だけど・・・・・・城のなかじゃカリア一人じゃ足りないんだ。窒息してしまいそうになる。そんなとき・・・・・・どうしてもおまえに会いたくなる・・・・・・そうだな。マリアもそうだけど・・・・・・真っ先に浮かんでくるんだ・・・・・・お前が・・・・・・ナハスが・・・・・・。」
海を真っ直ぐ見つめながら話していた。
「俺だって会いたくなくてお前に会ってないわけじゃないぜ?」
「わかってるさ!そんなこと!」
そういって軽い足取りでナハスの前に向かい合うように立ったと思うと、片方の足首をつかみ、しゃがみこんだ。
「どうした!」
「あ、や、ちょっとひねったらしくてな。」
「ひねったじゃねえよ!早く見せろ!」
ファーラの足首はすこし赤くなり、微熱があった。
それだけではない。
足を冷やそうと靴を脱がせればそこには沢山の靴擦れの跡があった。
「なんだこれ・・・・・・。」
「今みっちりレッスンを受けていてな。一日中こんな格好をさせられるんだ。」
「ひでぇな・・・。」
ナハスはファーラをお姫様抱っこして砂浜に座らせる。
「お・・・・・・驚いて声も出なかったぞ・・・・・・お前、私が重くなかったのか?」
「あー。最近ガキの世話してるとどうも人の重さに慣れてきてな。いい筋トレになるわガキは集団でくるわでおまえよりタチが悪く、さらに重い。」
自分の手で海水をすくいあげて足首にかける。
「ひゃ・・・・・・ぁ・・・・・・。」
驚いたファーラが足を引っ込めようとする。
「こら!ちゃんと冷やしてから移動するからじっとしてろ!じゃないと足の傷に海水が触れてかなり痛いことになるぞ!」
「わ、わかった。」
「まったく図太いようで弱いんだから・・・・・・ひゃあじゃねえよ。」
「・・・・・・なあナハス・・・・・・。」
「ん?」
「どうしてこのずっと先には別の国があって競い合ったり別の文化があったりするんだろうな。」
「・・・・・・なんでだろうな。」
「国が皆ユリアみたいに穏やかならいいのに。」
「さ。行くか!」
いきなりナハスは立ち上がり、ファーラを再びお姫様抱っこをした。
「お、下ろせ!私は歩ける!」
「そんな足で誰が歩かせるかよ。大体これの何が不満だ。ガキたち(特に女の子たち)はこれが気に入ってるぞ。」
「な・・・・・・何ていうか・・・・・・その落ち着かないんだ!」
ファーラの顔は真っ赤だった。