過去と命令
~過去。
「やぁだぁー!!!うぁぁぁぁあああん!!」
「きゃぁああ!!姫さま!止めてください!」
いろんな叫び声を揚げ、皆私から遠ざかっていく。
「やぁだぁー!!!もおやぁだぁー!!!」
「姫様!およしください!」
そういいながら体当たりのように私を抱き締めたのがカリアだった。
私には分からないくらい一歳二歳くらいしかかわらない女の子があんなに大人びて見えた瞬間だった。
怯んだ私はそのままはさみが勢い余り、そのままカリアの肩の辺りにあたった。
「っぅ・・・・・・!」
声にならない悲鳴をあげた。
体がびくりとふるえ、カリアはファーラから離れた。
「カ・・・・・・リア?」
カリアの首辺りから血があふれだしている。
その光景を見て私はまた泣き出した。
でもカリアは違った。
首下を手で押さえながらにこりと笑った。
「・・・・・・よかった。姫さまが無事で。」
痛くない分けない。
なのに自分とそんないに差が無い女の子は・・・・・・自分の友達は自分より私を優先し、自分の感情を自制した。
怒ることだってできた。
痛さで泣き喚くことだって。
その後、カリアは父様に私のことを言い、私を城外に出せるよう説得した。
だから、今の私がいるのはカリアのおかげだ。
カリアには感謝している。
だけど、カリアは時々自分の感情を痛々しいくらい押さえ付けることがあるから・・・・・・私をそれでもなお上に持ち上げようとするから、そういうカリアは・・・・・・嫌いだ。
弱さを見せようとしないカリアが・・・・・・私がもしこの国の姫でも王位継承者でもなければ、ただの幼なじみとしてカリアにそこまで無理させなくてもよかったのだろうか。
いつの間にか自分の部屋の前にたっていた。
「姫さま。」
はっとする。
「なんだ?」
「お召しかえを。」
「あ、ああ。わかった。」
長いシャツのようなものを来て、さらにその上から着込み、髪の毛をとかした。
髪は両端で二本、細く三つ編みを作り後ろ髪を出す。
「姫さま、何を考えていらっしゃるのですか?」
「あ?」
「姫さま、まさかとは思いますが・・・・・・この格好のまま逃亡しないでくださいね。」
突拍子もないことを言われ、ファーラは噴出しそうになった。
「な、何を言うか!」
「だって・・・・・・今日の姫さま、妙に大人しいんですもの。」
カリアは本気で逃げる方の心配をしていた。
「にげやしないさ。元々互いに好いてはいないが親だからな。致し方ないのさ・・・・・・私は窮屈なことは嫌いだが、親も嫌ってしまうと住む場所がなくなってしまう・・・・・・何だかんだ言っても私は無力なんだ。だから、王位継承者だとか次期王なんてどうでもいいんだ。むしろ、現国王に好かれているセタルこそ王になるべきじゃないかと私は思うんだけどな。」
「姫さま・・・・・・。」
「な、なんだよ。」
「そんなこと思ってらしたんですね。」
「私は王宮にいると孤立していくからな。ま、そんな話はどうでもいい。用意はできたな?行くぞ!」
ファーラはいきなり席を立ち上がり、王宮の間まできびきびと歩きだした。
窮屈な服も、家訓も、礼儀も・・・・・・全部嫌いだ。
だけど私は生まれてきた。生まれてきてしまったんだ。
王と王女の第一子として。
血筋はどうあがいてもかえられないだろう。
これが・・・・・・定めという奴なのだろうか。
まあいい。今はそれより何故父様が私を王宮の間に呼んだのかを考えよう。
王宮の間の大扉を叩く。
カツン、コツン。
斑な音が指と扉から聞こえてくる。
扉が開くと、護兵が立っていた。
「これはこれは。姫さま、王宮の間にいらっしゃるとはめずらしいですね。」
「ああ。父様から呼び出された。そこを通してもらえるか?」
「どうぞどうぞこの国の姫さまとあれば。」
ずっと護兵は身を退き、簡単に中へと入っていった。
王座に腰掛けている王と王女の前へ行き、ほぼ仁王立ち状態でファーラは話し掛けた。
「これはこれは、父様、母様、ごきげんうるわしゅう。ご丁寧に王宮の間へおよびいただきましたが、改まって何事にございましょうか?」
今までよりワントーンからツートーン低い声が王宮に響く。
「そう構えるな。私達はそれなりに元気だよ。それで・・・・・・話というのだがな・・・・・・実は・・・・・・タイターナへ行ってほしい。」