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その先に  作者: 半月
17/20

お誘い

「ファーラ姫?」

びっくりして振り向くとそこにはブァレッチア王子がいた。

「これはこれ・・・・・・王子。」

「・・・・・・その格好は?」

「動きやすいものでついつい。」

「まあ、いいでしょう。今日はあなたの元をおとづれるつもりでした。」

「このような朝早くからですか?」

「ええ、一緒に朝ご飯でもいかがですか?」

「身の上の安全は?」

「父様も母様もいませんからね。確保いたしましょう。それでも信じられないというなら兵をつれてきてもかまいませんよ。」

「いいえ、王子私もあなたにお聞きしたいことがあります。」

「なんでしょう?」

「大声では言えないので後程。」

「わかりました。朝ご飯は僕の部屋で取りましょう。」

「え!?」

「手を出したいところですが・・・・・・我慢いたしましょう。」

「ありがとうございます。王子。」

「あなたから感謝の言葉が聞けるとは・・・・・・意外だなあ!」

王子は大袈裟に驚いて見せた。

「さあこちらへ。」

王子の部屋へ招かれ、食事を済ませると一呼吸おいてからファーラは口を開いた。

「いきなり本題ですが・・・・・・この国は不思議な点が多すぎます。なぜ民達はあれほどまでに貧困にあえいでいるのですか?あれではとれる税もとれないのでは?」

「この城が一つの国なのです。外部など知りません。」

「冷酷ですね。そんなに冷酷で反乱軍が来たことはなかったのですか?」

「ありましたよ。他国から一度だけ。けれどタイナーナの圧倒的権力の前に反乱軍も歯が立ちませんでした。」

「兵がこんなにも少ないのに権力で勝った・・・・・・?おかしくはありませんか?なぜ兵がいないのに勝てるのですか?」

そんな事を話ながらふっと先ほど王子に食事に誘われている間静かにナハスが怒っている顔を思い出した。

「この国は不思議な権力で守られています。兵達がきたからとて城に入れるはずはありません。それより僕はあなたと二人きりなのだから素ではなしたいなあ。」

「どうぞ。」

「あなたもですよ。」

「しかし、私の言葉遣いはあまりにも粗野で野蛮だと言われましたよ。」

「俺は君の本心が知りたいんだよ。」

「それに言葉遣いは関係ないのでは?」

「あるね。君はある一定の人にしか使わない言葉がある。俺には心を許してくれてない証拠じゃない?」

ブァレッチアは席を達、ファーラのところまでくると耳元でつぶやいた。

ゾクリとして一瞬身を縮めるがすぐに元に戻った。

「王子、あなたのことはこれでも、嫌いではないのですよ?」

「でも好きではないだろう?」

「いいえ、好きですよ?野蛮なだけかと思いましたがあれ以来ちゃんと約束も守っていただいているようですし。」

「それは君の近くにいる二人より?」

「・・・・・・それは・・・・・・ごめんなさい。違うけれど・・・・・・。」

ブァレッチア王子は恋をしたことがあるんだろうか。

急にそんな事が気になった。

ブァレッチアはため息を吐き、ファーラを椅子の背もたれごと抱き締めた。

「もう少し自分は魅力的な男だと思っていたよ。」

「ブァレッチア王子?」

「なんだい?」

「王子は・・・・・・恋をしたことがありますか?」

「・・・・・・君にしているじゃないか。」

「私はゲームでしょう?楽しい感覚を勘違いなさってるのでは?」

「そういう君は?」

「・・・・・・ないんです。だからたった一人を見つめ、たった一人を選んで愛することは私にはわからない・・・・・・。」

「・・・・・・それは俺にもないなあ。なんせ一人を選ぶ意味がわらないし。よし。君の初恋相手に俺はなってやるぞ!」

そういってファーラから手が離れた。

「つまり・・・・・・それは・・・・・・王子の初恋相手に私がなるということでもありますよね?」

「そうだ。」

「似たもの同士なのかも知れませんね。私と王子は。」

椅子から立ち上がり、クスリとファーラは笑ってからごちそうさまでしたと付け加えた。

すると。ブァレッチア王子に抱き締められた。

「王子!?」

「あ、すまない。だけど・・・・・・何もしないから・・・・・・しばらくこのままではダメか?」

しばらくの間、沈黙が続き、ブァレッチアが離れた。

「初めて俺の前で笑ったね。」

「それはあまりにも根拠のないことを自信満々に王子が言い切ってみせるから・・・・・・。」

またクスクスとファーラは笑った。

喉からクックッと音が漏れる。

「なんだろうね。君だけだよ。抱き締めても手を出さないのは・・・・・・いや、抱き締めるだけでも十分だと思ったのは・・・・・・君が俺の正妻になったら俺は君の尻にひかれそうだ。」

「私は妻になる気は・・・・・・」

「それはこれからのお楽しみだな。」

無理やりファーラの話に割り込み、ファーラの唇に人差し指をあてた。

「ん。」

ファーラはすこしびくりとして身を退いた。

「何もしないよ・・・・・・今は・・・・・・ね。」

そういって人差し指を自分の唇にあてた。

「そ、そんなことより案内していただけませんか?王様方直々の寝室があるこちらの塔には近付けられるものが限られているとききました。」

「構わないよ。デートならね。」

「は・・・・・・デ、デート!?たかが城内を散歩するだけでですか!?」

「立派なデートだよ。」

「王子・・・・・・王子のことは嫌いではありませんがそんなデートなど・・・・・・。」

「嫌いじゃないってのは好きってことかい?」

「おたわむれはおよしください。」

「たわむれちゃいないさ、これで俺は君を落とすために本気なのだから。」

ブァレッチアが近づいてきてファーラを壁におしやったのでファーラは顔をあげた。

そこにはブァレッチアの瞳があり、その瞳は光を宿していた。

目が・・・・・・本気だと言っている。

目が・・・・・・冗談では済まさないと語っている。

目のなかの光が痛いくらい鋭い・・・・・・。

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