謎の空間
驚いて三人が後ろを向くと、メイドが一人立っていた。
「聞きたいことがあるのです。ここへくる途中貧困に喘ぐ国民たちを見ました。民達はこんなになったのもすべて王が税にさらなる厚税をひくからだと言いました。ですが、あのような状態ではとれる税も取れないでしょう?おまけに他国を近付けないときている。この国は一体どのようにして成り立っているのですか?」
ファーラはとたんに口調をかえた。
「この国は・・・・・・城内が一つの国なのです。城外はもはや荒れ地、王は税を必要とはしておりません。少し前まではとてもよい王様でした。ですが、何かしらで圧倒的権力を握った王はいま遊び惚けていらっしゃるのです。」
「そうですか・・・・・・城内を少し、案内していただけますか?」
「わかりました。」
四人で歩きだした。
「こちらは男性用のお風呂です。この城に男性は数少ないのでかなり小さめに作ってあるようですが。」
しばらく廊下をあるき、壁に突き当たると台所があった。
「ここは料理部屋です。」
すると少しもどって階段を上る。
「2階です。2階は王子のお気に入り女性達のお部屋となっております。」
「え!ここすべて、か?」
ナハスが驚きの声をあげる。
「はい。」
そして再び階段を上る。
「3階です。3階は王さまのお気に入り女性達のお部屋となっております。」
「ここもかよ・・・・・・。」
ナハスは半ば呆れていた。
「はい。」
そしてまた階段を上る。
「ここからはほとんど一つの町です。右側奥から説明しますと、洋服仕立て、電気製品、水道管理、そしてもう1つ洋服仕立て、そして屋上へと続く通路、さらに向こうの塔が王族のすみかとなっておりますが、王達は基本、あちらの塔でお休みになられることはありません。」
「ハーレムだもんなぁ。」
ファーラが腕組をしてうなずいてからメイドに向き直り、言葉を発す。
「で・・・・・・平民がいらないのはなぜですか?」
「王はいつのまにか強大な権力の持ち主となりました。ですが、それでも足りないものがあった。それは・・・・・・食べ物です。だから平民達から税に税を重ね、食べ物を平民から奪っていきました。でも・・・・・・いつの間にか全てが揃うようになったんです。植物は異様な程急成長をとげ、野菜や果実はたわわに実り、動物たちでさえもあそこにずっといると急成長をとげていくんです。それが、あの中庭の畑です・・・・・・あそこは怖くて近づくものがいません。短時間なら問題ないのですが・・・・・・長時間いますと・・・・・・体が作りかわるように急速に老化していくのです・・・・・・。」
小さくメイドは震えた。
「誰か・・・・・・そのような目にあわれたのですか?」
「私です・・・・・・その他にも数名。」
「え・・・・・・?でも・・・・・・。」
どう見てもまだ若く、二十代くらいだった。
「私は本来の歳でまだ15なのです・・・・・・ですが体はすでに二十代後半・・・・・・私よりいくらか年上のかたたちはたくさんいましたが、私の叔母が・・・・・・叔母が急激な老化により死んでしまったんです!あの畑ができたのは最近でしたから・・・・・・みな、よくわからなかったのです、それで・・・・・・。」
涙ながらにそのメイドは語る。
「それは・・・・・・嫌なことをお聞きしましたね。辛くなるようなことを教えてくれて・・・・・・ありがとう。」
まだ15だという少女は顔を上げて微かに微笑んだ。
「・・・・・・あなたみたいな方は初めてです・・・・・・みなメイドというだけで邪険に扱われるのに・・・・・・。」
「私は嫌いなもの以外邪険に扱うつもりはありません。」
「ここの方達がみな・・・・・・権力をふるう人達ではなく、あなたのような方ならよかった・・・・・・1つ付け足しますと・・・・・・あの畑の横の部屋は牢獄になっています。入れられたら最後、二度と今と同じ姿で戻ってはこれません。運がよければ私のように・・・・・・運が悪ければ叔母のようになります。好奇心で足を踏み入れないように気を付けてください!」
「ええ、気を付けましょう。注意、ありがとう。」
ファーラは軽くきびすを返していった。