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男の子を川に突き落としても上京したい


 くまさんの追撃を何とか躱しながら私たちは森中の川までやってきた。


 とにかく、一刻も早くコロンのニオイを落としてもらわないといけない。


 なので……、

「おっちろーっ!!」


「うわっ、どうゎァ……!?」

 身の着のままの彼を川へと突き落としてみた。


 水深一五〇センチメートル程度の川。

 結構深いね。


 Q:そんな場所に着衣のままで、突き落とすとさてはて一体どうなるのか?

 A:溺れる


「って、本当に溺れるやつがあるかーっ!!」


 大慌てて私も川へと飛び込んで助け出した。


「お、泳げないなら、泳げないって事前に言っておいてよ……」


「俺は別に泳げないわけじゃない……、ただあんな風にいきなりそこそこの水深の場所に突き落とされたら普通はパニクるんだよ。君がそういうことを覚えてくれ……」


「なるほど、学びました……」


 川から上がってぜぇはぁぜぇはぁと二人して肩で息をする。


 河原の砂礫に滴る水がしみ込んでいく。


「はっ、はくしょんっ……!! ぶわっくしょんっ……!! わんくっしょん……!! ふぁんくしょんっ……!! あぶだくしょんっ……!!」


 エイド少年のくしゃみの癖が強かった。


 そして、私は忘れていたのだ、今がまだ春先で、それほど気温が高くないということを。


「よ、よしちょっと火を起こそう……。あなたはその服を脱いでおいた方がいいよ。体冷えて風邪をひいちゃうから」


「……、分かった」


 いそいそとその辺りから枯れ枝と枯葉を拝借してきて、河原で火をおこす。


 矢籠の中につっ込んでおいた火打石が役に立った。


「器用なもんだな」


「まあ慣れてるからね」


 手斧を使って林に生えている笹の仲間を適当に刈って物干しざお代わりにして濡れた服を乾かしている。


「……、そのそっちは大丈夫なのか? 体冷えるだろ」


「何? 私の裸が見たいの?」


「そっ、そんなことは言ってねぇっ!!」


「私はまあ慣れてるから、これくらいじゃなんともなんない自信があるけれども、でもあなたが心配するっていうなら、あなたの服が乾いたらそれを借りて、私の服も乾かそうかな」


「おう、是非そうしてくれ……」


 紳士なんだか男の子なんだか分からない言い草だった。


 逆にこのどっちつかずな感覚がリアルな都会の男の子なのかもしれない。



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