お城の中庭が大変だけれど上京したい
階段をもう一度駆け上がった私はそのままの勢いで謎の王様に道案内されるがままに古城の屋上へと躍り出した。
眼下には異様な光景が広がっている。
表情のない半透明の人型の何かが、古城の敷地に所狭しと蠢いている。
しかしそこに居るのはその半透明で人型の黒っぽい何かだけではない。
どこから湧いてくるのか良く分からないけれど、人間大くらいの機兵っぽい何かが二本の足と両手にくっついた棘付きの棍棒をグルグル振り回しながら半透明の黒い人型の何かをどつきまわしている。
しかもそのどちらもが、どこからともなくどんどんと数が増えていっている。
下はひっちゃかめっちゃかだ。
「えっ、これどうするの……」
ごっちゃごちゃのぐっちゃぐちゃで、大変なことになっている。
暴走ゴーレムVS土着死霊の一大決戦みたいな有様だ。
こんな状況で死霊を鎮魂させるなんてことが果たして本当に出来るんだろうか……?
「来るのが遅いわよ、リリアちゃーん」
その声は高いところから聞こえてきた。
このお城で一番高いところにいるのは間違いなく私であるはずなのにも関わらず、だ。
上から影が、ぬぅっと落ちる。
引き寄せられるように視線を持ち上げる。
そこには全長四メートルはあろうかという巨大な機兵がいた。
そいつは頭と腕と足を持っていて、その質感は磨き上げられた鉄に近いモノに見える。
胴体はスカスカだった。
腕と足と頭とを連結するために申し訳程度くっつているとでも言いたげなスカスカ具合だった。
ただ、無意味にスカスカな訳ではなかった。
そこにおっぱいがあった。
失礼、間違えた。
そのスカスカの部分には元王宮魔式師アーシア=クーロッドが搭乗していた。
『搭乗型思考兵装とでも表現すればよいかのぉ、これは……。とても面白い発想じゃな』
半透明の王様が褒めていた。
私はと言えば、言語の適切な処理が出来ずにただ口を開けて瞬きを繰り返すのみだった。
「それじゃあちょーっとやっちゃるねぇー!!」
ぴょーんとそのまま三メートルほど飛び上がって、地面へと落下していく。屋上の床にはひびが入った。
「すげーかっけーな……」
しみじみとエイド少年が後ろからやってきてそんなことをいう。
確かにそうかもしれない。
規格外すぎて、顎が外れそうだった。




