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森の古城に来ることになったけれど上京したい


 ぐるりと神域を迂回して西側へと回り込むのに、大体丸一日くらい。


 私のテントは神域に置いてきてしまったので、どうしようかと悩んでいたら、アーシア=クーロッドが造魔式で簡単に塹壕を作ってくれた。


 でも最初は三人纏めて一つの塹壕に押し込められるつもりだったらしい。


 私は配慮がないよ配慮がと怒った。


 というか、あのおっぱい魔式師とエイド少年を一緒に置いといたら絶対にあんなことやこんなことをされちゃうっ!


 私の友達取らないで欲しい。


 お願いだからっ!!


 という訳でエイド少年、私、アーシアの並び順で塹壕に個室を拵えさせ、そこで一晩を明かした。


 寝起きにエイド少年とアーシアに不審なところはないかとつぶさに観察してみたけれど、特に何も変わった様子は見られなかった。


 多分、恐らく、メイビー。


「見えてきたよ」


 森の中を進んでいくと、ほんのちょっぴりだけ開けた場所へとたどり着く。


 開けたと言っても、樹木がないというだけで草花はわさわさと生え散らかしているのだが。


「これがフリンリアムのお城?」


「フロリアスの古城」


「そうだったそれそれ」


 フロリアスの古城。


 旧文明時代のこの場所を治めることに成功した時の統治者、サバンナ=フロリアス一世が建造させたと言われている古代のお城。


 結構立派でかなり広さと高さがある。


 造りは立派だが、風化によってところどころの壁面は脆くなっているし、森の中という地形も相まって中の木造の備品は湿気で形が歪んでいたり、床板が腐って抜け落ちていたりする。


 ちょっとノリで調べるわーっと言って中に入ると急に床が抜けたりして大変危険な目に合うことになる。


 なんで、そんな実体験みたいに語るのかって?


 そりゃ、私が小さいころに不用意に入っちゃっておじいちゃんに見つけてもらうまで大変な目に合ったからに決まっているじゃないか。


 ……、あのときはありがとうおじいちゃん……。


「さてと、じゃあ中はいるかー。どっから入ればいいんだコレ……?」


「えっ、あなた中に入る気なの?」


「えっ? そのためについてきたんじゃねーのか?」


「私は道案内するだけのつもりだったんだけれど……」


「えぇー!? リリアちゃんお姉さんのこと見捨てるのぉー? お姉さん筋金入りの方向音痴だから、一人になったら迷いに迷った挙句に、最終的にこの史跡ぶっ壊すことになっちゃうと思うんだけれどもー!!」


 アーシアがなんで王宮魔式師を首になったのかなんとなく分かった気がした。


「だって、ここ広いよ。それに私たちはこの牛乳うしちち女が何を探しているのかは知らないでしょ。正直言ってあるかもわからないものを探す手伝いなんてするもんじゃないって!」


「……、確かにそれは一理ある」


「あるぇー!? 良心に付け込もうとしたはずなのに逆にピンチ?」


「でもなー……。うーん」


 エイド少年は何かを悩んでいた。


 もう本当にこれ見よがしに悩んでいた。


 分かりやすく自分が悩んでいるということをアピールするためのジェスチャーまでして悩んでいた。


「……、不本意だけれど、非常に不本意だけれども、あなたのお悩みを聞きましょう」


 仕方がないので、先を促してみる。


「古代の城って、憧れる」


「……、話がわかるぅー」


「要するに、益もないし、時間の無駄だと分かっているけど、この朽ちた城に入ってみたいって好奇心を抑えられない、とそういう訳?」


「……、要約すればそうなるな」


 ため息が出た。ため息番号二〇二四号バージョンαだった。


 二対一の上に、このお城についての予備知識を持っているのは私だけ。


 これで二人をほっぽって一人で帰ってしまったら寝覚めが悪いことこの上なかった。


「わかった、分かりましたっ! お付き合いさせていただきますぅ……!!」


「いえーい」


 エイド少年とアーシアが声を合わせてハイタッチをしようとしたので、両手で割り込んでこれは阻止させてもらった。


 一々ボディタッチをしようとするじゃないっ。このくらいの年頃の男のはそういう無防備さに弱いんだからっ……! 全くもうっ!!


「ちょっとー、リリアちゃん。なんでー? もしかしてお姉さんとハイタッチしたかったのー? もうっ、照れちゃってぇ」


「ちっがーう!!」


「なあ、早く城の中に入ってみようぜ!」


「都会の男の子でも古城の魅力には勝てなかったんだね」


「だからうちの村は都会じゃねぇって」



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