表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/13

たぬき、参上。12




普請の手伝いともなれば飯や報酬が出る。それ故、管理台帳に名前を書く必要があるのだが。話すことが難しい狸……否、少年だ、名前が言えるのか少し気になった。


「俺は景宗。仲間には頭って呼ばれている。それでお前、名前は」


飛んだり跳ねたりして喜んでいる少年に問うと、少年はピタっと動きを止めた。


「……………………」


直立不動で口を噤み、目をぱちくり。


狸の名前は一体……?


緊張のその時を迎えようとしている期待感に、景宗の耳から波の音が遠ざかる。


ゴクリと唾を飲んで、少年と視線を絡めていると。

彼は突然口を開いた。


「ら。」


―だよな!


期待通りというか、期待はずれというか。「ら」しか言わない少年は無邪気に笑うだけだ。


「そっか。そっかそっか。なら、俺が名前を考えてやる……えと、何がいいか……」


ら、しか言えないから、それにちなんだ名前にしようと考えを巡らせる。

が。

朝日に輝く駿河湾のたおやかな波に視線を漂わせているうち、ぱっと閃いた。


「スルガだ。お前の名は駿河」


「ららら!」


駿河は喜びいっぱい、軽い身のこなしで前転飛びに側転、後転飛びをする。


―狸って身のこなしが軽いんだな……曲芸で一儲けもアリだな



駿河が蹴り上げた湿っぽい浜の砂が、逆光に輝いていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ