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案件1その1

「今日この日は皆様が待ち望まれた式典の日!」全国民、いやこの世界引いては最高の神バジャールカの加護を受ける者達が熱望した日。バジャールカの新たな祭壇の落成式である。祭壇の設計に手を付けたのは若きホープ、ルベジャ=リカであり全信徒に対してスピーチを行うのは若き神官アリーピナであった。

落成式は順調に進みルベジャがバジャールカに捧げる最後の催しが始まった。信徒の信仰心を形にして祭壇の「バジャールカの休憩所」に配置する。つまり伝統的な日本式家屋で使われる脇息、それを信徒の信仰心で作り上げるのである。

(ええ、今こそあなたの設計がこの世界の歴史に刻まれるの)

「さあ、みんなの信仰心を神官達が形にした!そう、そのままその位置へ…」

当然信心する神への信仰心とは神聖なものであり、それを凝縮して脇息にする一大セレモニーには雑念など混ざるはずがない、それがルベジャのバジャールカに対する信仰心の表し方でもあった。

かくして神官達に成形され彼女らの魔力で移動させられる段になり、突然脇息はガタガタと震え出す。

神官達が惑う中神の使用に値するサイズの脇息はあらぬ方向へ飛び群集が犠牲となった。

プルルル、プルルルル…

寝ぼけてよだれを食ってる間におかしな夢を見たらしい、襟を正してから受話器を取る。

ガチャ

「うえーい玉響(たまゆら)法律相談事務所でっす〜。生憎今先生は不在ですが〜。」

そんなお決まりの文句を言い終わる前に受話器の向こうでは依頼者の悲痛な叫び声があった。

「ワシの、ワシの神殿の落成式がぁ〜!!」

よほど錯乱しているようだ、この国では個人の神殿などありはしない。しかしここまで威厳のある野太い声の持ち主がこんなトンチキな内容の電話をして来るとは、何処かのの劇団員が台本を読む時に小道具に見立てた電話を間違えて通話してしまいここ玉響事務所へ電話してしまったのだろう。とは言えあまりにも真剣な口調だ。もし本当に依頼の電話だとすればこんな場末の事務所に助けを求めてきたのならば、考えをまとめ相手を落ち着かせるためにゆっくりとした口調で語りかける。

「お客様、メモを取らせていただきますのでもう一度貴方様のお名前からお伝え頂けますか?」

それまで電話口で捲し立てていた相手もこちらの言葉を聞く余裕が出来たのであろうか、うってかわって落ち着いた様子で話し始める。

「我が名は、バジャールカ。」

夢とは、本人の1日の出来事を整理するためのもの、または尖った欲望を抽象的に表したものなどと呼ばれるが、うたた寝の時に見た途方も無く荒唐無稽な夢が今受話器の向こうから語りかけて来ている。

この通話自体が二度寝した夢の続きなのかも知れない。半分上の空で依頼の内容をメモしていた所。

「とにかく、先生には一度見てもらいたいのだ。こちらへ来てくださらんか。」

出た。一度見に来てくれ。この年齢の老人によくありがちなフレーズ。電話口で伝わる内容を、とにかく顔を見て親身になって接して欲しい、その手のワードだ。普段なら断る所だが今は夢の続きなんだから乗ってみよう。

「わかりました。そちらの通貨などは持ち合わせておりませんが…。」

「何ほれ、すぐじゃ。」

え、と聞き返す前に受話器から手が伸びて肩を掴まれる。そのまま引き摺られるように中空へ身を投げ出すようにして、私は。

「ほっほっほ、よー来なすった先生。」

目が覚めると土くさい大地の上で寝転がっていた。声をかけて来たのは電話と同じ声のバジャールカ、だろうか…あまりに威厳のある姿で直視しづらい。夢で見たままの相手なのだから恐らくそのまま話を続ければ良いだろう。

「その、バジャールカ様?余りに神々しいのでお話も容易ではありません。出来ればもう少し、小さく。」

「なんじゃ改まって先生、それならば、ほうれ。」

翼を持つ人面のライオン…有り体に言えばスフィンクスの様な威厳たっぷりの姿から私の腰ほどのサイズの、その、褐色な肌に濃い藍色の髪をした小さい女の子になる。周りのギャラリーも「バジャールカ様万歳、バジャールカ様万歳。」と急に礼拝を行い始める。ははあんこの世界がバジャールカの元統一されたのはこういう理由か。

「ほれ先生、行くぞ。」

一人で得心し頷いている所へバジャールカが飛び乗ってくる。ライオンと言うより猫のようだ。案内されるまま下町を歩く。バジャールカをはじめ民衆の服装から予想出来たがこの世界はエジプトよろしく大きな川、川と言っても幅が5キロを超える海の様なもののほとりから作られたそうだ。道中小腹が空いた私達はよく焼けたトカゲの串焼きを齧り薄く平たい、生地に粗挽きした元の穀類が残った、そう元の世界で言えば全粒粉パンの様なとにかく歯応えのある焼き物を頂いた。感想を言い合い歩くうちに砂レンガの街並みが崩れた箇所へ出る。

「ここが、我の脇息が落ちた場所だ。」

かなりの犠牲者が出たであろうその区画はある程度片付けられ、花も添えられていた。

「ここが…。」

自然と両手を合わせ黙祷する。夢の中の世界とは言え起きるべきではなかった事故、その犠牲者には哀悼の意を表明する。

「ルベジャはのう、稀代の天才じゃった。我への信仰心を形にして我を祀る。その計画はこの世界の全ての生き物が皆良しとしたのじゃ、勿論我もの。それに…。」

犠牲者達の思い出話を語り始めたバジャールカを遮り、私は口を開く。

「それで、ルベジャさんは?」

常に太陽が照り付け、乾燥した気候のこの世界にあって、唯一陽が差さない昼間でもほぼ暗黒の土地、その我々の世界では昼と夜の境界にルベジャは勾留されていた。

「我を祀る神官達でさえ、ハレの式典でこのような惨事を引き起こした原因のルベジャを庇い切れなんだ。民衆達だけでなく神官にもルベジャを闇の世界へ永久に追放せねばとする者達がおる。しかし我は混じり気のない信仰心を向けてくれたルベジャを喪いたくはない。先生を喚んだのはそう、ルベジャの潔白を証明もしくは減刑して欲しいのじゃ。」

バジャールカの依頼内容はこうだ。前提として落成式で起きるはずのない事故が起き、多数の犠牲者が出た。本題は神殿の設計者に全責任が押し付けられようとしているが事故の原因自体には関係が無いと証明して欲しい。期日は1週間後に全国民が行う処刑方法の投票時。

それまでに全国民を納得させねばならない。私には荷が勝ちすぎる気がするがこれは依頼なのだ。つまりはお仕事。玉響事務所の電話受付としてなんとかこの件を無事解決しなければならない。

とにかく、勾留中のルベジャに話を聞かなければ。境界の世界に足を踏み入れた途端、体温が奪われる。ずっとこんな場所に勾留されればまともな人間でもたちまち参ってしまうだろう。受付に話を通し足早に拘置所へ向かう。

ヒタ、ヒタと靴の裏に苔がまとわりつく自分の足音が恐ろしい。テレビドラマなどでは面会は綺麗な場所で行うはずだけど、ここは異世界、それも昼の世界から夜に変わる場所なのだから特段に暗く冷たく寂しい。

「ルベジャ、面会だ。」

拘置所の奥から姿を現したルベジャは頬が痩せこけてはいたが元の姿を想起出来る青年だった。

「あなた、は…。」

「私はバジャールカから依頼を受けて来た者です。時間がありません。貴方の設計と落成式の仕組みについて説明をお願いします。」


あらすじにもありますが不定期です

筆者精神錯乱が不定期に起きますのでその時に執筆しちゃった場合は後で格納なり修正なりします

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