第六話 一歩前進
「ギャッ!」
「邪魔だ!」
走りながら片手剣を振り回すことかれこれ10分。
まだ一向に少年たちの後を追えていない。
通り過ぎてしまったかも知れないので休憩も兼ねて一回止まる。
「見つかりませんね…はぁはぁ」
ストさんにはこの10分間の間にどうゆうことか説明していた。
彼女は快く引き受けてくれたが、これ以上進むと帰れなくなるかも知れない。
確認を取ろう。
「ストさん…ここから先は…」
「それにしても早いですね。エイスさん本当にDランクですか?」
こんな時でも、気さくに話しかけてくる。
彼女は決してふざけていない。かといって楽観視しているわけでもない。
彼女の目は真っ直ぐ洞窟の奥を捉えていた。
「言われなくても分かってます。Bランクになる時までに何回もこう言う事はありましたから、覚悟はできてます。」
俺は、彼女のことを見誤っていたようだ。
「よろしくな」
「はいっ!」
俺たちは本当の相棒になれた気がする。
ーーーーー
獣人の少年視点
(こんなことになるなら…)
僕は近道をしたことを悔やんでいた。
あの男の人に道を聞いた後、僕たちはもう一人の街の人に道を聞いていた。
するとその人は
「あそこの道を使うと早いけど…ゴブリン谷があるから、遠回りした方がいいよ」
男の人とは違うルートを示した。
僕たちは悩んだ末、近道をすることにした。
初めこそ楽しく歩いていたのだが、谷に入った瞬間魔物の数が劇的に多くなった。
ゴブリン谷とはどう言う所なのかそれを理解した時にはもう遅く、先に進むしかない距離まで来てしまっていた。
本当はあそこで止まっておくべきだった。
こんな自分を殴りたくて仕方ない。
もう少し進んだとき雲行きが怪しくなってきた。
僕たちは雨宿りのため見つけた小さな隙間に潜り込んだ。
しかし、そこはゴブリンの巣窟でとても暗く戻ろうにも戻れなかった。
安全な場所を探そうともゴブリンとのエンカウントが多いすぎて動けない。
なので、そこでじっとしていたのだが突然、一気に100体で襲われ戦闘が始まった。
必死に妹を守ろうと足掻いていたのだが。
(なんで、ゴブリンの上位種が…)
正確な種族などは分からないが、アイツだけ空気が違った。
コイツには関わっちゃいけないと思った。
体が強張った瞬間。
その隙を縫ってゴブリンどもに妹は…
「アァァァァァァ!」
泣きたくても涙が出ない。
心が怖がっているのだ。
こんな弱いお兄ちゃんでごめんな。
左腕はもう使い物にならない。
お腹も空いた。
僕の意識はいつしか落ちていた。
ーーーーー
エイス視点
「いたぞ!」
「本当か!」
奥の方に来て、ゴブリンが少なくなっている地帯に少年はいた。
体を見ると、左腕は傷だらけだ。
「ヒール」
「んっ」
腕を直すと少年が起きた。
「あんたは…妹が妹が!」
「俺が見つけるから安心してくれ。何が起きたんだ。」
少年はポツポツ話始めた。
自分がレイということ。
雨宿りでここに来たらゴブリンに襲われたこと。
ゴブリンに妹が連れさらわれたこと。
「よくがんばったな。レイ」
「これだけできるなんてすごいわ。」
ストさんも褒め称えていた。
実際レイの仕事量はDランクに匹敵していた。
「もう休め。スリープ」
レイは目を閉じた。
顔を上げると俺はストさんと頷き合った。
あとひと仕事だ。
★
「ここか?」
「ええ多分そうよ」
少し開けた場所の手前に俺たちは立っていた。
その開けた所には恐ろしく強大な気配が立ち込めている。
ゴブリンキングがいるのはもう確定だろう。
(おそらくあそこにかれの妹も…)
既にストさんと作戦会議をしているので今はその作戦の待ち時間だ。
中からゴブリンが出てくる。今回のキーパーソンだ。
さぁ戦闘開始だ。
すいません。
戦闘シーンをもっと丁寧にお届けしたいと思ったので若干薄めになっちゃてます。
ブックマークしてくれたら嬉しいです。
See you next time.