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一回表 アラフォーOLの私がゴミ捨て場で青年に出会う

 その日は。

 散々だったと思う。お客様にもものすごく理不尽なことで叱られたし、まとめなくちゃいけない書類もうまくまとめられなくて時間がかかりすぎて終電を逃した。タクシーで帰るときにお財布を落としたし、ほんっとになんていうか何から何までダメな日だった。お財布がすぐ見つかったのは不幸中の幸いだったけど。


「はーあ」


 だから、それはちょっとたまたま魔が差したんだと思う。

 靴ずれが痛いなーうちに帰ったらお風呂入りたいなーとか思いながら、よろよろ歩く帰り道。

 ゴミ捨て場が目に入った。

 自分のところは三階建ての鉄筋アパートで錠前付きのゴミ捨て場が付いてるタイプだったから、そこは自分のところのではない道端にあるゴミ捨て場で。

 ゴミ袋に囲まれて眠る青年に目がいったのは。


(何だろう? 酔っ払いかな?)


 思わずふらふらと近寄っていってしまった。なんだかほんわりとその青年が光っているように見えたから。


(疲れ目かなぁ)


 よくよく近づいて見てみれば、どこか中世ヨーロッパの風を感じるような出で立ちをした彼は、眉間に皺を寄せてうんうん唸っている。


(お、イケメン。なんだろう? 舞台の役者さんとかかな?)


 ここの近くには小劇場があるし、そこの人なのかなぁと思いながら、失礼ながらじろじろ見てしまった。

 しかめっ面をしていてもイケメン。これは目を開けたらもっとイケメン。つやつやの黒髪は短めに刈られていてこれは好感度アップ。ちょっと傷だらけの顔もワイルドでいい。

 もうなんか疲れがマックスすぎて、何故わたしはこんなゴミ捨て場の前でイケメン批評をしてるんだろうか。


「オ スクーる!」


 がばっと起き上がった彼は、突然そう叫んだ。

 青い。青に蒼を混ぜたような鮮やかな青色の瞳。目が合って、思わず何度も瞬きをした。今まで生きてきて一度も見たことのないような、極彩色の青色だ。

 何語だろう。日本語じゃないのだけが確かだな。

 青年はいい声もしていた。高すぎず低すぎず。うんうん。これは夢かな?


「キ え ス?」


 指さされて思わずその指先を握ってしまった。


「人を指さすのは良くない」


 なんでそんなことを言ってしまったのかは分からない。青年はわたしが急に彼の手を握ったので、すごく驚いたみたいだった。慌てて手を離すと、泣きそうに顔が歪む。ああ、こんな表情になってもイケメンだ。


「ジュ ム スゥイ ペるデュ」


 涙が一筋、その右目から零れ落ちた。

 なんて綺麗なんだろうとわたしは思った。思わず。


「えっと、あなたの言葉は分からないけど」


 首を横に振って、言葉が分からないのだとジェスチャーしてみる。うん。こんなところで語学力がほとんどないけどジェスチャーとかでどうにかしていたのが役に立ってしまった。


「もしよかったら、うちに来る?」


 そう言って手を差し出してみた。伝わるか分からないけど。

 青年はわたしをじっと見つめてたっぷり10秒は悩んだ後、こくんと頷いた。




 そしてその日わたし三國屋(みくにや)理央奈(りおな)はひとりの青年に出会った。

 この出会いが、今まで平々凡々を生きてきた私の人生を一変させるとは知らずに。



そういえば、ファンタジー世界から現実世界への異世界転移ものってあんまり無いな、と思い立って勢いで書き始めました。勢いって大事だと思うんですよね! 出会いにびびっと来た理央奈のその判断は正しかったのか? 意思疎通がうまく働かないイケメンとの今後は? お楽しみに!

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