第1話:遠い空の向こう側 そこには美しい世界が広がっていた
自分が昔から書いてみたいなぁと思っていた小説です。自己満足な設定がいくつかあるのでご了承ください。質問などは小説の最後のコメント返信のコーナーでお答えする予定です。また、自分はそこまで軍事関係に詳しくないので何が間違ったことを書くかもしれません。そんな時は教えてもらえれば幸いです。そして、もう一つ別に書いている小説を主に書いて行くのでこの小説の投稿スペースは遅めになると思います
沈んでいた意識が浮上し、俺は目を覚ました。お世辞にも座り心地が良いとは言えない座席のせいでケツが痛い。周囲を見回すと俺以外の人達は起きていた。2000馬力の力を生み出す空冷星形複列18気筒エンジン6基の奏でる重低音なエンジン音を聞きながら秋元は左側にある小さな丸い窓から外を見た。あいにくの空模様で下には灰色の雲がずっと続いている。最後に故郷の国の海でも見たかったけどなぁと思ったが、故郷に良い思い出はほとんど無いので見れなくても良いか。
『まもなくゲート突入。シートベルトの着用を確認せよ』
グットタイミング。丁度ゲートを通過する時だったようだ。不安と好奇心が衝突して複雑な心境だが、そんなこと御構い無しに俺を乗せた三式長距離飛行艇は目的地に近づいて行く。緊張で無意識のうちに手に力が入ってしまう。三式長距離飛行艇は目の前にあるとてつもなく巨大な入道雲のような雲に接近して行き、ゲートとの距離が近づくにつれ機体の揺れが激しくなっていく。完全にゲート内に入ると機体はまるで乱気流の中に突っ込んだ時のようにガタガタと激しく揺れる。窓から外の様子を見ようとしても分厚い雲の中なので何も見えない。約10秒間この状況が続いたが、突然あんなに激しく揺れていた機体の揺れがピタリと収まった。それと同時に分厚い雲の中からも出たようで視界が回復する。
「おぉ・・・凄い・・」
見えたのは宝石のように美しく輝くマリンブルーの海、そして雲がほとんど無い美しい蒼空の空。並行世界・異世界・異次元世界、第2の地球、ここは様々な呼ばれ方をしているが一般的にここのことは碧落と呼ばれている。
「ここが・・・碧落」
碧落。約80年前に突如として現れたゲートを通過した先にあるもう一つの世界。発見された当時は碧落に住む知的生命体と戦闘状態になることなどが心配されたが、調査の結果動物などはいても人間のような知的生命体はいないことが分かった。しかし今では人間同士の、ここの領土を巡った終わりの見えない泥沼戦争の舞台となっている。こんなにも美しいとろで戦争が起きているなどとは信じ難い。と、外の世界に見とれていると何やら右側が騒がしくなっているのに気がついた。同時に、三式長距離飛行艇とは別のエンジン音のわずかながら聞こえて来た。
「おぉ!疾風だ!」
「疾風だ!」
疾風。その単語を聞いた瞬間俺は席を立ち人が集まっている右側の窓にへばり付いた。
「凄い・・本物だ・・」
さっきから俺「凄い」しか言っていないような気がするが、凄い以外の表現方法が見つからないので仕方がない。三式長距離飛行艇の右側を並走する上面は濃い緑色、下面は銀色に塗装された1機の戦闘機。我ら筑後軍が世界に誇る傑作戦闘機、零式戦闘機「疾風」だ。陸上機型や艦上機型など様々な型があり疾風が登場した当初はどの性能においても疾風に勝る機体はおらず、セナマの戦いでは疾風が1機撃墜されたのに対し敵機は18機も疾風に堕とされるという凄まじい戦果が残こしている。筑後の象徴として500円玉や10000円札などの通貨に疾風が描かれていたりするほどだ。シナラ沖海戦、ミラサ防空戦、奇跡の空母撃沈伝などなど疾風神話伝説や武勇伝は多数あるが、敵も打倒疾風を目標に次々と新型機を作り出して来て今では疾風と同じかそれ以上の性能の戦闘機もちらほらと出始めている状況で、疾風の引退も近いと囁かれている。近頃は疾風の後続機を巡って筑後の各軍事航空会社が新型機の開発競争をしているらしい。しかし疾風は今でも現場の兵士からの信頼は厚く、まだまだ現場バリバリの戦闘機だ。
「こっちにも来たぞ!」
左側にも別の疾風がやって来た。左右に合計2機の疾風が護衛しに来てくれたようだ。
午前11時27分ブービル島上空。ゲートを通過してから3時間が経過した。ここら辺はブービル島を中心に大小いくつもの島がある|島嶼群だ。どうやらここで護衛の疾風とはお別れのようで、疾風は主翼を左右に振ってから大きく右にバンクし、こちらに銀色の機体下面を向けてブービル島の方へ旋回して三式長距離飛行艇から離れて行った。
疾風と別れてからさらに1時間後、三式長距離飛行艇は目的地であるラビラル島の基地に到着した。ラビラル航空基地は通常の航空基地の横に水上機基地が隣接する大規模な航空基地だ。全長45m、全幅62m もある三式長距離飛行艇が5機も並んでいる光景は迫力がある。三式長距離飛行艇から降りた俺は荷物がパンパンに入ったリュックを背負って桟橋を渡ると待機していたトラックの荷台に乗せられた。水上機基地から普通の航空基地に来たトラックは止まっては人を降ろすの作業を繰り返していた。ここでそれぞれ決められた飛行機に乗って俺達は所属基地に行くのだ。トラックに運ばれる間、俺はエプロンや格納庫で翼を休めている飛行機達を見ていた。まず目に付いたのは一式双発戦闘機だ。一式双発戦闘機は疾風が完成した翌年に完成した双発の重戦闘機で元々は爆撃機を護衛する為の長距離戦闘機として開発された。しかし、3200キロ(増槽あり)もの航続距離を持つ単発単座戦闘機の疾風の配備により機動性などで劣る一式双発戦闘機の護衛機としての価値は激減してしまった。護衛機としての価値は下がってしまったが、強力なエンジンを2つも付けた双発機が故の搭載量と火力、そして汎用性を生かして哨戒機、攻撃機、夜間戦闘機、早期警戒機、偵察機など様々な分野で活躍している。一式双発戦闘機隣には疾風の三二型が4機並んでいる。疾風三二型は筑後空軍の主力機で、一一型よりエンジンが強力な物になっている。トラックの荷台に座っている人の数が半分くらいまで減った時、俺も降りる時が来た。飛び降りるように荷台から降りると、トラックは次の人を降ろす為にはさっさと次の所へ行ってしまった。
「って言うか、俺1人だけなのね・・・」
他の奴らは2、3人グループで降りていたのに俺だけひとりぼっちのようだ。で、俺の乗る飛行機はどれだ?と思い俺の乗る飛行機の番号の書かれた紙を見てから辺りをキョロキョロと探してみるとすぐに見つけた。と言うか、目の前だった。荷物の詰め込み作業をしている双発中型輸送機の九五式輸送機に乗って機長と思わしき人に話しかけた。
「サパン基地行きの輸送機であってますか?」
「あってるよ。お前が秋元か?」
機長と思わしき人は本当に機長だった。優しいそうな顔の中年の男だ。
「はい、よろしくお願いします」
そう言って俺は軽く頭を下げた。機長は「いいよいいよ、そんなにかしこまらなくて」と笑いながら言った。
「ところで、どうして君はここに来たんだ?金欲しさか?それとも犯罪を犯したのか?」
ここで戦う兵士の殆どは正規の兵士ではなく犯罪を犯した者や戦いに憧れて志願して入隊した者、はたまた金欲しさに来た者などだ。つまり向こう側でまともに生活できない者達がここに来ているのだ。俺は苦笑いしながらここに来ることになった理由を説明した。俺はあっちいる時、ガキの頃から俺は差別を受けていた。俺がリベリアンの父と筑後の母の間に生まれた混血児と言うことで毎日毎日いじめや嫌がらせなどにあっていた。18歳になった時、俺はあっちでの生活が嫌になって志願してここに行くことを決意した。訓練などは確かにキツかったが、あそこでずっと差別されながら生活するよりマシだと思った。まぁそんなこんなで今はこうやっている。
「なるほどなぁ・・・色々大変だったな。まぁこの仕事も楽じゃ無い。頑張って生き残っていつか俺に色々武勇伝を聞かせてくれ」
機長は再び離陸の準備に取り掛かった。九五式輸送機への荷物の詰め込み作業はすぐに終わって、20分後には離陸した。足の遅い九五式輸送機に運ばれること約3時間、現在の時刻は午後3時11分。やっと目的地のサパン基地に到着した。サパン基地はサパン島と呼ばれる小さな島に築かれた航空基地で飛行場から東に少し行けばそこはもうジャングルだ。空から見た感じ、サパン基地はさっきまで居たラビラル基地と比べたら滑走路が1つしかない小規模な基地だが、充分な設備を備えた基地だと言うことは俺でも分かった。九五式輸送機は綺麗に滑走路に着陸するとエプロンまでタキシングして停止した。九五式輸送機から降りた俺は大きく背伸びをして同時に島の新鮮な空気を吸った。空気が美味しい。改めて基地を見てみる。目の前には格納庫が3つ並んでおり、右には管制塔とその関連施設がある。その奥には隠れてよく見えないが兵舎らしき二階建ての建物が見える。まずはここの指揮官に報告しにいかないとなので近くにいる人に聞くことにした。ちょうど近くに九五式輸送機から下ろした荷物をトラックに乗せている人がいたので聞いてみる。
「あの〜ここの指揮官は何処にいますか?」
「本部の執務室にいると思うよ。あそこだ」
指差した方を目で追いかけるとそこは管制塔の下にある3階建ての建物だ。
「入ってすぐの所に階段があるからそこから3階まで上がれば直ぐだから」
「分かりました。ありがとうございます」
俺は教えてくれた人に軽くお辞儀をすると言われた通り本部に向かった。執務室は彼の言う通り直ぐに見つけることができた。3階まで階段で上がってから廊下に出るのご丁寧に「執務室→」と書かれた看板が天井に掛かっていた。矢印通りに行くと廊下の1番奥の所に執務室はあった。木製のドアをノックして「失礼します」と言ってから入る。俺があっちで住んでいたアパートより広い部屋の奥に指揮官は座っていた。中年の鬼教官のような人物をイメージしていたのだが、そのイメージは良い意味で覆された。若い優しそうな男だったからだ。部屋の窓からは滑走路が見え、部屋の壁には額縁に飾られた写真やら書類が横にいくつも並んでいる。何かの輝かしい業績を証明するものだろう。しかし俺はこんなのを飾る意味はあるのかといつも疑問に思ってしまう。指揮官は何やら書類に書いていた。俺はビシッと姿勢を正して敬礼をする。
「今日配属になった秋元慶です」
司令官は机の上の仕事を一旦やめると俺の方を向いた。
「鈴木一郎だ、よろしく。こんな所まで遠路遥々ご苦労だったな。今日の所はゆっくりしといてくれ」
そう言った鈴木司令さ机の引き出しから何かを取り出すと机の上に置いた。机の上に置かれたそれは俺の身分証明書だった。
「本部の奥にある兵舎の2階にある104号室を使え、本土からの荷物もそこにある。あと、同室に隼人と言う奴がいるが、そいつと明日飛んでもらう。何か質問はあるか?」
「いいえ、ありません」
「よろしい。では明日、ヒトサンマルマルに隼人とまたここに来い。以上だ」
俺はもう一度姿勢を正し、敬礼をした。
「失礼しました」
そう言って俺は執務室を後にした。さて、まずは部屋に行って荷物を置いてくるか。そう考えた俺はリュックを背負い直し、部屋に向かうことにした。だが兵舎は別の所にあるらしいのでまずは兵舎まで行かなければ。適当に近くにいた人を捕まえて兵舎のある場所を教えてもらった俺は問題なく兵舎に来れた。建物の2階に上がって廊下を少し進み、104と書かれた部屋の前に来た俺はドアノブを回してドアを開けた。部屋には誰もおらず俺の名前が小さく書かれた大きなバッグが二段ベッドの下の段に置いてあった。部屋は5〜6畳ほどの広さで部屋の右側には木製の机と同じく木製の椅子が2つあり、左側には二段ベッドがありベッドの横の部屋の隅に長方形のドアが2つ付いたロッカーが置いてある。部屋に1つだけしかない長方形の外開き式の窓からは滑走路が見える。ざっと部屋を観察した俺は持って来た荷物をバッグの横に置いて身軽になると窓を開けた。開けたと同時に優しい風が部屋に流れ込んで来る。ここは滑走路と本部の反対側なので目の前には草原と奥にジャングルが広がっている。
「わわわ忘れ物〜っと。ん?誰だ?」
外の景色を眺めていると後ろの部屋のドアが開くと同時に男の声が聞こえて来た。振り向くとそこには俺と同じくらいの歳の男がドアを開けた体勢のまま固まっていた。今日配属されたパイロットだと言う事を説明しようとするより前に男の方が先に喋り始めた。
「あ!もしかしてお前今日から配属の新人パイロットか?」
「あ、はい。そうです」
「お〜そうかそうか〜」
男は右手を俺の方に差し出しながら自己紹介を始めた。
「中島隼人だ。俺のことは気軽に隼人とでも呼んでくれ。よろしく!」
「秋元慶です。よろしくおねがいします。中島さん」
俺は中島さんの差し出した右手を握って握手しながら同じように簡単な自己紹介をする。
「あ〜固い固い!そんなかしこまらなくていいから!俺のことは隼人って呼び捨てでいいから!」
隼人・・隼人・・いや、流石に呼び捨てはマズイから隼人さんって呼ぼう。隼人さんはそう俺に肩をポンポンと叩きながら言った。
「・・がんばります」
「あ、そう言えば明日お前と飛ぶことになっているけど知ってたか?」
「はい、鈴木司令から聞きました」
「よし、それじゃあ俺がこの基地を案内してやるよ!」
隼人さんはそう言うと俺を色んな所に連れ回した。食堂、雑貨屋、医務室、通信室、燃料庫、弾薬庫などなど。幸いここの基地はそこまで規模が大きなものではないので覚えるところは少ないのが救いだ。隼人さんは最後に俺の乗る飛行機を見せてくれるそうで、今は格納庫目指してエプロンを歩いていた。
「そう言えば少し気になったんだけどさぁ」
俺の右側を歩く隼人さんは俺の方を見た。その行動で隼人さんが何を気にしているのか俺は察した。
「あぁ・・やっぱり自分筑後人らしくないですよね。この見た目」
自分は筑後とリベリアンとのハーフなのでやはり容姿も純粋な筑後人とは少し違う。ちょうどリベリアンの血と筑後の血を半分ずつ足したような感じの見た目だ。よく注目されるのがこの茶髪の髪だ。筑後の人は黒髪なのでやはり茶髪は目立ってしまう。
「うん、まぁ・・アレか?お前ハーフか?」
「はい。父がリベリアンで母が筑後です」
「ふ〜ん。エリカと気が合いそうだな」
「エリカって誰ですか?」
話によるとエリカと言う人は隼人さん達の所属する220飛行隊の中で随一の敵機撃墜数を誇るエースパイロットらしい。しかも驚いた事にその人はゲルニア人らしい。何でゲルニア人であるミアが筑後軍に所属しているのかは鈴木司令を除き誰も知らないそうだ。
「ま、良い奴だから気軽に話しかけてみれば?」
「そうしてみます」
少しの間の後、俺はふと思った疑問を隼人さんに聞いてみた。
「隼人さん、ここにも海爆って配備されているんですか?」
「ん、海爆か?あぁあるよ。翔電を6機、103海爆小隊が運用してる」
海爆、海上爆撃機(海上攻撃機と呼ばれることもある)の略。他国には無い筑後軍独自の機種。主に陸地より海の方が多いここ西海洋を主要拠点として活動しており、重要拠点の周りにある諸島各所に作られた野戦飛行場から重要拠点に上陸して来ようとする敵艦隊に爆撃あるいは雷撃で攻撃を仕掛け、敵艦隊を撃滅又は消耗させるのが主な任務。大型の爆弾あるいは魚雷を搭載でき、長い航続距離を持っているのが特徴。
「6機だけって・・・少なくないですか?」
「ここは見ての通り規模の大きい基地ではないからな。それに海爆隊は敵艦隊を攻撃する時は他の基地の奴らと共同で波状攻撃を仕掛けるそうだし問題ないんじゃね?」
そうこうしていると目的地の「03」と書かれた格納庫に俺達は到着した。格納庫内では1機のエンジンカウルが外された疾風が整備を受けていた。
「山寺さーん!」
隼人さんが人の名前を叫ぶとエンジンをいじっていた50代くらいの灰色のつなぎを着た男性がこっちを向いた。俺はその人に向けて軽く頭を下げた。山寺さんと呼ばれた男性は乗っていたハシゴから飛び降りると手に持っていた道具を工具箱にしまってこちらに近づいて来た。
「よぉ中島。横の奴は見ない顔だが誰だ?」
「今日から個々にここに配属になりました秋元慶です」
「ほら、鈴木司令が言っていた新人ですよ」
それを聞いた山寺さんは俺に「来い」とだけ言うと整備中の疾風の方へ歩いて行く。俺はその山寺さんの後を追う。
「こいつが今からお前の命を乗せて飛ぶ飛行機だ」
そう言って山寺さんは整備中の疾風の胴体を手で軽く叩いた。濃い緑色に塗装された超ジュランルミン製の機体はまるで新品のように格納庫内に差し込む太陽の光を反射して鈍く輝いていた。
「予備機として格納庫の奥底で埃を被っていた疾風の三二型だ。素直な機体だから新米のお前も問題なく飛ばせるだろ」
操縦席の周りの7.7mm厚の装甲板の追加、風防前後の12.7mm厚の防弾ガラスの追加、主翼内の燃料タンクをゴムを使った防弾タンクに変更、エンジンを1800馬力も物に変更、など様々な改良が施されたのがこの三二型で旋回性能こそ初期型の一一型より劣ってしまっているがその他の性能は向上している。
「ありがとうございます。大切に使わせて頂きます」
俺は山寺さんに深くお辞儀をした。後ろにいる隼人さんが「だからかしこまり過ぎなんだよなぁ」と言ったのが俺にも聞こえた。
「こいつを大切に使ってくれるのは良いが、それより自分を大切に使えよ?」
「あ、はい」
こんなことを言う人は初めてだ。逆の事を言う人は今までもよくいたけど。隼人さんが俺だけに聞こえる大きさです話しかけて来た。
「少し昔に、機体を大事にし過ぎて戦死した奴がいるんだよ」
話によるとその人は当時最新鋭機だった疾風の三二型に乗っていて、ある日空戦中に被弾し、致命的な被害を被ったそうだ。仲間が脱出するように促したがそのパイロットは「貰ったばっかりの新型機をおしゃかにする訳にはいかない!」と言って制御を失った疾風を何とか立て直そうと足掻いたが、遂には主翼が折れて錐揉みしながら墜落、戦死してしまったらしい。その人はパイロットと山寺さんは友人関係だったらしくそれを聞いてショックを受けた山寺さんはその日から新人パイロットには「命落とすくらいなら機体墜とせ」と言っているらしい。
「そんな事があったんですね・・・」
「そんなに重く受け止めなくていいよ。ただまぁ、命大事ってことだな」
「はい。自分もまだ死にたくありませんしね」
俺はいつまで生きていることができるのだろうか、ここでは兵器も人も次々に新しい物が投入されては、消えて行く。ここに来た者は一部例外を除き死ぬまでここで戦い続けることになる。
俺はここの世界の戦争をまだ知らない
「ま、俺がお前を守ってやるから安心しな」
隼人さんが俺の肩をポンポンと叩いて言った。
「はい、よろしくお願いします」
明日の為に今を精一杯生きよう。そう俺は思ったのだった。
いかがだったでしょうか?お見苦しい点がいくつかあったかもしれませんね。すいません。
そして、今回のこの小説の挿絵を描いて下さいましたやまもさん、ギンさん。本当にありがとうございます。m(__)mこの2人はpixivにて絵を投稿しているのでどうぞそちらの方も見てみて下さい!
主にここでは本編で登場してくる兵器の簡単な解説やコンメント返信などをしていきます。
三式長距離飛行艇と零式戦闘機疾風三二型。
三式長距離飛行艇は筑後軍が使用する大型飛行艇で大量の人員や荷物を輸送する事が可能で、爆弾も2000キロまで搭載可能。自衛用に12.7mm連装機銃2問、12.7mm4連装機銃2問、20mm連装機関砲3問を装備しており、さらに防弾装備も充実しており撃たれてもなかなか落ちない事から「不沈航空戦艦」とも呼ばれている。
零式戦闘機疾風三二型は本編でも解説した通り一一型の防弾性を上げ、エンジンもより強力な物にした型。現在筑後軍の陸上基地に配備してある疾風はほとんどがこの三二型である。
碧落
本編でも説明した通り約80年前、洋上に突如として現れた異空間ゲートを越えた先にあったこちらとは別の世界(異世界)。人間のような知的生命体の存在しない自然豊かな世界。碧落にはまだ手付かずの石油や石炭、レアメタルなどの資源が大量に地下に眠っていることが調査で分かり、今では世界各国が碧落の領地を巡って大規模な戦争をしている。碧落で戦う兵士達は碧落のことを「平和な世界の裏側」などと呼んでおり、逆に自分達の住んでいた世界のことを「あそこ」や「あっち側」や「内地」などと呼んでいる。
異空間ゲート
縦5キロ、横2キロでの範囲内に入れば海上を航行する大型船だろうが飛んでいる飛行機だろうが何でも碧落に飛ばされる。ゲートのある所には巨大な入道雲が発生しており、雲の中では乱気流のような風が吹き荒れている。