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第八話「ブラックホールと対極のもの。」

今回は可憐の心境多めに書きました。

「久しぶりだな、アリス。」


思い出した。しどーこそ、俺が小学校低学年の時に遊んでいた女の子——

アリスだったのだ。

アリスは、昔近所に引っ越してきて、近くの保育園に入園したが、日本語があまり得意ではなかった為、あまり友達が出来なかった。

なので、ふと声を掛けて遊んでやると、懐かれ『やすおにーちゃん』と呼ばれるまで仲良くなった。


「て、てんぐーじ!?何でお前がしどーのミドルネームを知ってるんだ?」


「いや、悪い。いきなり、俺は泰正だろ?そのお兄ちゃんの名前は?」


「やすおにーちゃん……っ!!」


しどーは、驚いた顔を見せ、アルバムと俺の顔を見比べ、俺の顔をまじまじと見る。そして、目尻に涙を浮かべると——


「そうか、やすおにーちゃんはてんぐーじだったのか。全然気づかなかった。」


「俺も気づかなかったよ。俺たち、幼馴染だったんだな。」


「まぁ、兄妹でもあるけどな。血は繋がってねぇーけど。」


しどーと俺は顔を見合わせて笑う。

その笑顔は昔のまま何も変わってなかった。


「そう言えば、久しぶりじゃないぞ!お前が気付いただけで、しどー自身は今日だって、お前と遊んでいたんだからな。」


確かにそうだ。しどーが、昔遊んでいたアリスだと解って、少し運命を感じたが、しどーはしどーだ。今も昔も俺の友達であり妹だ。


「そうだな。今も昔も変わらないよな。」


「そうだ!今も昔もてんぐーじはお兄ちゃんでしどーは妹だ!」


しどーは、にししと笑うと、アルバムを箱に片付ける。そして、自身のことは今まで通り、しどーと呼ぶように言った。なんでも、ロシアと日本で呼ばれ方を変えることに拘りを持っているらしい。

その後、滞りなく片付けが進み、3時間程で全て片付いた。だが、それから、俺としどーはゲームに熱中してしまい、そのまま二人とも寝落ちしてしまった。起きて、ふと時計を見ると、時刻は20時を回っていた。

俺は、しどーを起こさないようにラインを送ると、呂利沢家を後にした。



「おっーそぃ!バカおにぃ!ヤリチン童貞!」


徒歩1分の家に着くと、案の定可憐にお出迎えされた。

可憐さんは大変ご立腹のようだ。

まぁ、夕飯の時間に連絡もせず、2時間も遅れれば誰だって怒るか。

人の家で寝落ちしてたなんて、絶対言えない……。


「悪かったよ。てか、言ってること支離滅裂だぞ……。」


「うっさい!いいから、早く手洗って来いっ!」


「は、はいぃ……。すみません。」


俺は、キッチンまで走って、すぐさま手を洗い、テーブルの所定の位置に着いた。

どうしても、可憐には勝てる気はしない。


「所で今日の飯は?」


「今日はハンバーグ!」


「は、ハンバーグかぁ……。」


今朝のハンバーグと称されたブラックホールがトラウマに残っているのだが……。

もっとも、あの物体がハンバーグなんて、誰も認めないだろうがな。


「何?文句あるの?」


「無いです。はい。すみません。」


「よろしい!」


可憐は笑顔でフライパンの中身を皿に移す。

てか、可憐のハンバーグっていつぶりだ?

昔はよく理沙と可憐が母さん監修のもと作ってくれたが、この頃、と言うかここ何年か食べてなかったな。このトラウマさえ無ければ、最高に嬉しいのに。


「じゃじゃーん!可憐ちゃん特製ハンバーグ!味わって食べるよーにっ!」


白い食器の上に乗せられたそれは、まるで芸術品のように眩い光放っていた。

見栄えもさる事ながら、香りも俺の食欲を引き立てる。

喉奥から涎が溢れ出してくる。


「う、美味そう。」


「今日はちょっと頑張ってみた。早く食べてみてよ。」


ゴクリと涎を飲み込み、ナイフとフォークで一口サイズに切り分けようと、ナイフを入れた瞬間、肉汁が溢れ出てきた。

そして、満を持して口に入れる。


「んんっ!!」


口に入れると、肉の中に凝縮された肉汁や肉本来の旨味が口の中にジュワッと広がり、後から引くりんごのような酸味。

そう例えるのなら——

肉とりんごのワルツ!

手を取り合って踊っているような……。


「……過ぎだろ」


「お、おにぃ?」


「美味すぎだろ!!」


俺はの目からは自然と涙が溢れていた。

そして、俺の心にはもうブラックホールのトラウマなんてものは存在していなかった。


「え?え?泣く事ないじゃん!?嬉しいけど!?」


「マジで俺の奥さんになって欲しいまである。」


それは、流石に喩えだが、割とマジでこれからずっと、毎朝味噌汁作って欲しい。


「おにぃのお嫁さん……、えっと、その。」


「お、おい。比喩だぞ?」


「そっ、そんなのわかってるし!バカじゃん!?てか、食べ終わったら、自分で片付けてよね!私は色々と忙しいんだからっ!」


「何怒ってんだ?」


「怒ってない!ヤリチン童貞!」


だから、支離滅裂だって……。

ヤリチン童貞という捨てゼリフを残して、可憐は自室に、閉じこもってしまった。

最近、女子高生の間ではヤリチン童貞という言葉が流行っているのだろうか。そうだとしたら、世も末……、女子高生が全員ビッチのヤリ○ンのエロ漫画やエロアニメの世界になるのも近いぞ……。


「まぁ、そんな訳ないが。」


とか、一応フラグを立てておく。



「えへへ、褒められちゃった。それに、お嫁さんにしたいって。」


赤みが強い茶髪に、スレンダーな体つきの美少女——

可憐はベットに寝そべり、クッションを抱きかかえながらこの前、泰正にお詫びで貰ったGODIVAのチョコレートをパクリと頬張る。


「それに、この前、私のファーストキスも取られちゃったし、おっぱいも……っ!」


可憐はクッションを顔に押し付けて、足をバタバタ動かす。


「嬉しいけど、私がこんなにドキドキしてんのに、おにぃは全然なんとも思ってないなんて、超ムカつく〜!」


私って魅力ないのかな?おっぱい小さいから?それとも、妹だからダメなのかな?でもでも、おにぃがこの頃楽しそうに話してくるしどーって人は第2の妹だとか前言ってたしっ!!おにぃの妹は私だけだっての!!

それに、おにぃと一番繋がってるのは私だし!!

実妹で一つ屋根の下。おまけに——


——ピロン


私のスマホから、ツイッターのインフォメーションボイスが流れる。確認すると、イラストレーターの天宮寺泰正……、つまりおにぃの業務用のつぶやきだった。


『いもこま 5巻11.20遂に発売!!

挿絵のオーダーでは超エロかったので、僕も楽しみ

です!』


「そっか、発売日今度の土曜日か。」


『いもこま』は、私こと、冬空流星ののデビュー作。

おにぃとコンビが組みたくて、ラノベを研究して、書いた作品。

作品というか、おにぃとどんな事をしたいか殴り書きしただけだど……。


「おにぃ……。」


「なんだ?呼んだか?」


声のした方向を見ると、ドアが開いており、おにぃが立っていた。


「お、おにぃ!?なんでいるの!?てか、ノックぐらいしろ!ハゲ!!」


「え、ハゲてきた!?何処何処?マジで!?」


「……、嘘だよ。馬鹿だなぁ、おにぃは。」


私は笑いを堪えつつ、蔑むような目を作り、おにぃに向ける。


「良かった〜、まだフサフサだ!あっ、そうだ。大事な話がある。」


「だ、大事な?」


「そう、大事な。」


大事な話……、もしかしたら愛の告は——


「親父たちが……、帰ってくる。」


「えっと、これからよろ…、え?もう一回いい?」


「親父とお袋が帰ってくる。」


「えぇぇぇ!!」


私の悲鳴は天宮寺家全体に響き渡り、これから起こる波乱を予言する。この時の私達はこれから何が起こるか知る由もなかった。

前回の話を書いてる時は、食欲が失せましたが、今回の話を書いてる時は、逆に空腹になりました。


料理ネタばかりですみません。

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