第三話「暗い所では、悪戯するな。」
番外編で、○魂風サブタイトルにハマってしまいました。
しばらくはこんなサブタイトルでいかせていただきます。
『えぇ!!ボツですか?!』
『すみません、天宮時先生。今回のイラストは露出が余りにも多過ぎて、編集長から教育上に悪いとの指摘が下されまして。』
ある日、俺の元へ一本の電話が届いた。
先日、俺の妹とのファンと公言したあの篠崎さんである。何となく気まずい気分になりながら、電話を取ってみると、俺の今回の作品はボツと聞かされあ。今回のオーダーは、妹こまの瑛太と妹の凛奈がなんやかんやの理由で、絡み合って、凛奈がトロ顔になると言うものだったが、俺は調子に乗って、アヘ顔ダブルピースなんて物を描いてしまったのだった。
『光を入れるとかダメですか?ほら、あるあるでしょ?謎の光とか。』
「いえ…、光を入れるにしても、アヘ顔ダブルピースに光を入れたところで、もっと如何わしくなるだけですので。』
『確かに…。分かりました、書き直します。』
『申し訳ありませんでした。では、よろしくお願い致します。』
俺は、電話を切ると、立ち上がり、ベッドへとダイブする。
「ひっさしぶりだわー、完全ボツなんて…。いや、マジどうするよ。」
と、壁に向かって愚痴を垂れ流していると、俺の部屋のドアがコンコンと叩かれた。
「おにぃ。お茶いる?コーヒーもあるけど?」
「お、おう可憐か。ありがと、でも今はいいよ。」
「えぇ…?おにぃどしたの?風邪?」
可憐が心配そうにこちらを見ている。
一見キツそうに見えて、こいつは結構優しいところがあって、俺が風邪を引くと、看病をしたり、コンビニからスポーツドリンクや食べやすい物を買ってきてくれる。
「俺が仕事で描いたイラストが、フルボツになっちまってなぁ…。」
「えぇ…嘘?どこが?瑛太と凛奈の絡みのシーンとか?もしかして、トロ顔をアヘ顔で描いたりしちゃった?まぁ…、それは無いよね流石に。トロ顔はトロ顔だし…。」
そうだよな…。
あそこはトロ顔だったよな…。
つい悪ノリで、アヘ顔ダブルピース。描いてしまった。あの時、呑んでたんだっけ?
「てか、なんでお前が発売されてない本の内容を知ってるんだ?」
「えっ……と、それは…、その(私が書いたからとか、言えるわけ無いから、どうしよ…まずったな。)」
「そうか!お前!」
「え!?(ヤバっ!バレた!?)」
「篠崎さんに見せてもらったんだろ!いいなー!でも、完成してから見たいのがクレエーターの心情だからなぁ…。」
「う、うん。篠崎さんに…(ビックリした…。おにぃがアホで良かった…。)」
可憐は胸を撫で下ろしながら思う。
「そうだ!見せてよ、描いたやつ!」
「あぁ、良いけど。アヘ顔ダブルピースだぞ?引くなよ?」
「うん。(あぁ、やっぱアヘ顔にしてたんだ……。)」
◇
「うっわ〜、予想以上にアヘ顔だ。」
「だろーな。俺、アヘ顔描いたもん。」
「威張んなよ、ボツ兄貴。」
可憐に、フルボツを喰らったアヘ顔イラストを見せると、思ったとうり、少し引かれた。
でも、ボツ兄貴は酷くねぇか?俺がボツな訳では無くて、俺の作品がボツなだけだぞ。
それはさて置き、編集長の言うとうり、ラノベは色んな年齢の人が見ので、教育上に悪いし、ここまでのイメージも崩れかねない。
「よし、書き直すか…。」
「よぉし!おにぃは勤勉だし、この家の未来は安泰だ。」
「おい、お前。何気に俺が結婚出来ないみたいな意味含めてないか?」
「へへへっ、バレた?でも、彼女いないでしょ?」
ぐっ、何も言い返せない自分が憎い。
しょうがないだろ!出会いがないんだから。
運命的な出会いさえあれば、俺だって…。
「そんなことよりさ、トロ顔って何?アヘ顔と何が違うんだ?」
「いや、馬鹿でしょ!全然違うじゃん!」
「具体的にどんな?やって見てくれよ。」
「ふざけんなぁ!セクハラかよ!おにぃ!」
可憐は自身の履いているスリッパを手に持ち、投げつけてくる。その速度初速で100キロ。俺は避けられる筈もなく、顔面にスクリーンヒットする。
スリッパ自体は柔らかいくせに、可憐のパワーとスピードが乗って、俺の顔面に跡が付くほどの威力になった。
その衝撃で、俺は床に尻餅をつく。
「痛っつ!何すんだよ!お前!俺の平凡な顔を不細工に変える気かよ!」
「自業自得じゃん?妹にトロ顔させて何しようっての?ズリネタにでも使う気?キモいんですけど!」
可憐は、ゴミを見るような目でこちらを見ている。
こんな時、これ以上あいつの機嫌を損ねたら、マジで死ぬかも知れん。一度、ボッコボコにされた事があるからなぁ…。慎重に言葉を選ばねば。
「ふざけんな!俺はただ、トロがなんたるかを知りたかっただけだっての!お前にそんな魅力はねぇよ!」
「へー、そう…、なんだ。ふーん。私には魅力が無いか。」
あれ?俺、なんって言ったっけ?ちょっと待って、これ、かなりヤバくない?
「そうだよ。お前って…、胸も小さいし、乱暴だし、色気も無いし。」
「そかそか、うん。言いたい事はそれだけかー?」
一見、般若のようになっているかと思われた可憐の顔には、以外にも笑みが浮かんでいた。
勿論、満遍の笑みというわけではなく、滅茶苦茶引きつっているが。
少し観察していると、指の関節をボキボキ鳴らし始めた。可愛い容姿とは裏腹に、オーラは極道そのものだった。
嗚呼、お父さんお母さん。産んでくれて、ありがとう。そして、さようなら。
「きゃいっ!」
短い悲鳴と共に、上から可憐が降ってきた。
俺を殺る事に集中し過ぎて、足元が疎かになってしまったのだろう。
しかし、何も無いところでコケるとは、鈍臭い奴だな。殺されかけたが、仕方ないから受け止めてやろう。
俺が受け止める体制に入り、手を少しずらすと、照明のリモコンに触れてしまい、部屋が真っ暗になってしまった。
「ヤバっ!電気がっ!」
そんな事があり、俺は受け止められず、そのまま可憐と激突してしまう。
ーーちゅっ
俺の唇に、柔らかく、しっとりとした感触が俺の唇に触れる。
もしかしたら、可憐の唇か!?
もしそうだったら、確実に殺される。早く退けねば。
と、俺は可憐の体を持ち上げる。
「あっ、おにぃ、そこはダメ!」
可憐は先程の威圧感たっぷりの声とは裏腹に、弱々く叫ぶ。
うーむ、なんだか、悪戯したくなってきた。
日頃の恨みを晴らすのは今なのでは無いだろうか。
可憐は脇を擽られるのが弱い。今のも脇にに触ったため発せられた声だろう。
ふふふ、日頃の恨み!思い知れ!暴君め!
俺は目一杯てを動かし、可憐を擽る。
「ちょっ、あっ!なにやって…っ!ダメだってば!あんっ///」
うん。まあまあ効いているが、Tシャツの上からだとまだ効き目が甘いか。よし、直接やってやろう。
と、服に手を入れ再開する。すると、なにやら突起物のようなものが現れた。
ん、なんだこれ?出来物かなんかかな?まぁ、いいや。このまま続けよう。
「あっ、そこッ///ダメだって!」
ほう、この出来物を擽られるのが弱いらしいな。
それにしても、さっきから擽られている人の声じゃ無いぞ。まるで喘ぎ声のようじゃ無いか。
「ばかおにぃ…、調子…のんなっ!」
可憐が繰り出したジャブは偶然にも照明のリモコンに当り、あかりがつく。
そして、俺は気付く。
俺が擽っていた所は可憐の脇の下などではなく、可憐の胸だった事に…。
てことは、出来物だと思っていた物は可憐の……。
「えと、ごめんな可憐。でもさ、俺、これでやっと仕事ができる。俺!初めて人のトロ顔見たよっ!」
その言葉を言い終えたとほぼ時を同じくして、腹に可憐のストレートが打ち込まれる。
それも、一度や二度ではなくて、可憐は俺の腹に連打パンチを撃ち込んでいる。
それはもう、オラオラオラオラと、可憐自身が幽波紋かのように……。
「ふん。死ねば?ばかおにぃ。」
可憐は俺への攻撃を止めると、そんな捨て台詞を残して部屋を出て言った。
この後、俺はこの経験のお陰もあって、トロ顔のイラストを完成できたが、可憐は一週間程口を聞いてくれなかった。
だが、GODIVAのチョコレートを10枚ほど買って来てやると、すぐに機嫌が治り、いつも通り接してくれた。
読者の皆様のお陰で、この作品も中々伸びてきているのは誠に嬉しいんですが、その分、プレッシャーが大きくなって、朝も起きれません。誰か、美少女の妹でも貸してくれませんか?