第ニ話「俺の初デートが、あんなことになるはずがない。」
ある日、泰正が妹コマのイラストを製作していると、編集の篠崎さんからラインが来た。
そのラインには、大切な話があるからと、書かれていた。
果たしてこれは、デートのお誘いなのか?
出会いのない泰正に彼女はできるのか?
「ふぅ、こんな感じでいっかな。」
俺は、何時ものように依頼があったイラストを仕上げていた。
冬空先生の原作に俺の絵が見合ってるとは到底思えないが、冬空先生にあそこまで言って貰っては、頑張らない訳にはいかない。
「おにぃ、ご飯なんだけど、お仕事中?」
「いや、今丁度終わったところだ。ありがとな。」
依頼された挿絵を描き終えた俺の部屋に、可憐が入ってきた。
毎日飯を作ってくれるのは嬉しいが、部屋に入るときはノックぐらいしてほしい。
俺が自家発電でもしてたら、どうするんだよ……。
「別に!パパもママも忙しいし、そのっ…、おにぃだって、頑張ってるし。」
可憐は、頰をりんごの様に赤く染め、俺から目を逸らしながら言う。
不覚にも、ちょっと可愛いと思ってしまった。
何時もは、生意気で憎たらしい奴だが、ほんのたまーに、可愛い時があるんだよなぁ…。
「終わったなら、早くこいし!」
「へいへい。」
そうでも無いかも知れないかもな…。
やっぱり、イマドキJKは難しいな。
と、考えてる俺は、おっさんになっちまったのかな…。
ピコン
俺が部屋を出ようとした時、ポケットの携帯が振動する。
編集からのLAINだった。
編集の篠崎さんだ。篠崎さんは美人で、大人っぽくて、胸も大きくて、俺の理想のタイプの女性で、すぐにでも猛アタックしたいどころだが、前も言った通り、編集内とのトラブルは、仕事がしづらくなるのはどうしても避けたい。
『こんにちは。天宮時先生。仕事の進捗いかがですか?』
『こんにちは。篠崎さん。今、丁度終わったところです!』
『そうですか。お疲れ様です。それでは、明日の土曜は空いていますか?お会いして、お話したい事があるのですが。』
『はい。まあ、空いてますけど、出版社に行けばいいですか?』
『いえ、他の人に聞かれたくない話なので、何処かのカフェにでもいきたいと思ったのですが…。』
ふっ、二人で!?他の人には聞かれたくない話って?
もしかして、デートっ奴!?
『やはり、忙しいですか?』
『いえいえ、暇です!ご一緒させていただきます!』
『有り難う御座います。それでは、明日の一時、駅前のドトールで。』
『了解です!楽しみにしています。』
「っ……、しゃぁぁぁ!!きたぁぁぁ!!」
「あぁぁぁ!びっくりしたし!うるさいし!遅いし!待ってたし!」
俺が、歓喜の奇声をあげると、しびれをきらしてやって来た可憐に叱られる。
だが、しょうがない事では無いだろうか。職場の綺麗なお姉さんとデートすることになって、喜ばない男がいるだろうか。いるとしたら、ホモかロリコンぐらいだろう。
「で、何があったの?好きなネットエロマンガでもアニメ化した?」
「いや、それもそれで嬉しいが、今回はもっとすごいんだ。なんと!」
「なんと、何?勿体ぶらないでよ!」
可憐は、ジト目でこちらを見ている。
「なんと、俺、明日デートすることになりました!」
「は?誰と?」
可憐は、鳩が豆鉄砲でも食らった様な間抜け面をしているのは、些か辛辣だが、俺は寛大で器が大きい男だ。触れずに、問いに答えてやろう。
「編集の女の人だ。滅茶苦茶綺麗で、大人っぽくて〜。」
「勘違い&破局乙。あ、わかった!美人局ってやつじゃん?」
兄がやっと良き出会いに巡り会えたかも知れないと言う時に、実の妹が言うセリフは、美人局じゃないか?が、一般的ですか?そうですか…。
『えっ、おにぃ彼女できそうなの?がんばって!応援してるから!』とかが、テンプレートではないだろうか。
まあ、たとえ地球が滅亡したとしても可憐がそんなことを言う事はないだろうが……。
「まあ、もし、と言うか、絶対おにぃへの好意ではないだろうけど、振られたら、あたしが慰めてあげるから、どーんと振られて来い!」
「お前は優しいのか、酷いのかどっちなんだよ……。」
「へへーん、内緒でーすっ!」
う…、散々馬鹿にされた可憐に少し、ほんの少しだけでも可愛いと思ってしまった自分が憎い。
全く、可憐は…、兄の俺だからこの程度で済むが、他の男だったら十中八九惚れているぞ。
「へいへい、期待して待っててくれや。ところで、今日の夕食は?」
「えっとね〜、今日は、ムニエル!」
その後、夕食を食べると、明日のこともあるので、早めに床についた。
因みに、可憐のムニエルは、冷めてはいたが、絶品だった。
小さい頃から、母親の代わりに作ってくれているので、ベテランである。
◇
「天宮時先生。すみません、お待たせしました。」
「いえいえ、僕も今来たところです。」
当日、テンプレートの挨拶を滞りなく、ごく自然かつ、爽やかに終えると、頼んでいたカフェラテを飲み干す。
「……、えっと、いい天気ですね。」
「えっ?そうですね。最高気温、33度らしいですね。」
「あはは、そうですね。熱中症に気をつけないと。」
あぁっ!?思春期かよ…、俺は!?
こんな時、気のきいた洒落の一つでも言えれば、高感度爆上がりなんだけどなぁ…。
「あの、早速ですが、今日呼び出した理由と言うのが……。」
「ひゃ、ひぃやい…っ!!」
こほん、これはお恥ずかしい。声が裏返ってしまった。
緊張しすぎだな。リラックスだ〜、リラックス。
俺は大人だ。そこら辺の高校生ラノベ主人公とは年季が違う。
「天宮時先生…、いや、天宮時さん。私、好きなんです。ファンなんです。」
き、き、き、キタァァァ!!
やっぱり、篠崎さんは告白のするために俺を呼び出したのか。
「妹さんの。」
◇
「きゃははは!で、その女の人が好きなのは、おにぃじゃなく、私だったわけ?」
「そうだよ。この泥棒猫め。」
その後、篠崎さんに妹の魅力を延々と聞かされ、ショック&疲れ度MAXだった俺だが、家に帰って来るとすぐに、可憐の部屋に殴り込みにいった。
結果、爆笑されてしまっているのだが…。
「いやー、モテる女は辛いねー。」
「女にまでモテてどーすんだ!」
俺はどちらにもモテないが!
まぁ、男にモテてどうすんだって、話だが…。
「百合とか?よくない?」
うーむ、確かにありかもな。
篠崎さん×可憐か……。
『あん///やめて、篠崎さん耳ダメ…っ!』
『あらあら、耳だけで此処もこんなに濡らしてしまって、可憐さんはエッチですね。』
『らって、篠崎さんがぁ///ソコも同時にされたらぁ…、あたしぃ!』
『良いんですよ、思う存分昇天なさって。』
『い、逝くぅぅぅ///真っ白になって〜、しんじゃう〜!』
えっ、エロい!
妹でこんな事を考える俺は、やはり変態なのだろう。
だが、別に変態でもいいや。と、思わせるほどの楽園がそこにはあった。
「おにぃ!顔がエロい!絶対想像したでしょ?」
「は?してねーし!?耳が///とか、思ってないし!」
「耳?」
あっ、やばっ…。
「マニアックすぎでしょ!ベーシックにしろし!」
「いや、ベーシックっ言ったって、お前胸ないし。」
俺が話し終えるとほぼ同時、コンマ一秒のタイムラグなしに、俺の土手っ腹に可憐の渾身のストレートが入る。
酷い激痛と後悔が俺を襲う。
あんな事言うんじゃ無かった。
「可憐…、お前は胸がメインウエポンじゃない…。」
「うっさい!死ね!馬鹿にぃに!」
意識が遠のく。
全く、実の兄を本気で殴るんじゃねぇよ。
◇
目が覚めると、俺の後頭部には、極上の感触が広がっていた。
目を開けると、可憐のニヤケ顔があった。
「なぁ…、これってどう言う状況?」
寝起きの呂律が回らない中、可憐に切実な疑問を投げかける。
「膝枕。」
「えっ?」
「膝枕。」
「いや、それは解ったけど、何故?」
「おにぃが、あたしの魅力はおっぱい以外っていったから、だから。」
可憐は頬を赤く染め、俺から目を逸らしながら言う。
ふぅん、俺に言われたからか…、じゃあ、胸を褒めてたら、胸枕とかワンチャンあったんじゃないか?惜しい事をした。まな板とはいえ、女の子の胸の上で寝るなんて、男のロマンすぎるだろ!膝枕もだけど!
「で?どうなの?」
「どうなのと言われますと?」
「寝心地。」
「それはもう最高。毎日これで寝たいと本気で思ってる。」
「ふ、ふぅん。そうなんだ、おにぃは、あたしの足がそんなに好きなんだ。やっぱおにぃは、妹大好きのシスコンにぃにだね。」
シスコンか…。そうかも知れないな。
なんだかんだ言っても、妹は可愛いし、離れると寂しい。
それに、可憐がいないと俺は何も出来ないし、憎らしいところもあるが、できた妹だと心の底から思う。
「シスコンの兄ちゃんはこのまま妹のふとももで眠りたいのだがいいか?」
「ええっ…、もう!しょーがないなー、おにぃが寝付くまでしててあげる。えへへ、おにぃはどーしようもないシスコンだな〜。」
「ぐ〜ぐ〜。」
「って、寝てるし!しょうがないおにぃだな〜。まぁ、それが好きなんだけどさ。」
ってことで、おにぃのシスコン説が確定し、あのメスブタより一足先におにぃのハートを射止めたのは、あたし、天宮時可憐なのでしたー!
でも、おにぃがデートするって言った時は、心臓止まるかと思ったよ。
おにぃは生まれた時からあたしのおにぃな訳で、あたしだけのおにぃなの!
これまでも、これからもずっとおにぃを支え続ける。
妹として、ひとりの女の子として、そして……。
おにぃのパートナーの冬空流星として……。
先ずは、ご閲覧有難うございました。それと、投稿が非常に遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
何故遅れたかと申しますと、僕自身、あまりこの作品が好きではなくて、いろんなものを書いては投稿し、書いては投稿し、自身が好きなジャンルを模索しておりました。この作品は、僕がラノベを書き始めて、一番最初に書いた作品です。そして、僕の作品の中で頭一つ抜けて人気な作品です。なので、このままPV数が伸びれば、本気で書きたいと思いますので、何卒宜しくお願い致します。