第一話 「俺の妹と幼馴染が何か険悪な感」
出会いの無い主人公、天宮寺泰正。
ファションモデルをやっている泰正の妹、天宮寺可憐。
泰正の幼馴染、永見理沙。
たちが繰り広げる恋愛群像劇!
「今日も出会い無しかぁ……。」
道端を歩きながら俺は、溜息混じりに呟いた。
俺の名前は天宮時泰正。23歳独身。
仕事はイラストレーターをやっている。
今は大人気ライトノベル『妹がこの頃可愛すぎて困っています。』という作品を担当している。自分が担当している作品でなんだが、俺自身もその作品のファンである。なので仕事の方はすごく楽しく、充実している。のとは裏腹に、俺には出会いというものは無い…。何故なのだろうか?ナルシストだと思われるかも知れないが、顔はまぁイケメンとは言えないにしても、普通よりはほんの少し上だとは自分では思う。それに、休日の暇な時には、流行りの出会い系アプリなどを使ったりすることもある。それに編集の若い男たちと合コンに行ったりもする。だが、いい感じになったことが全く無い。
などと考えながら歩いていると、自宅についていた。
扉を開けて中に入ると、そこには妹の姿があった。
妹は天宮時可憐という。高校2年生でモデルをやっている。その整った顔立ちとスタイルの良さで、様々な年齢層から絶大な支持を得ている。家での、俺に対する態度を除けば、兄の俺から見てもなかなか可愛いと思ってしまうほどの才色兼備の美少女だ。こんな妹を持ったから、俺は目が肥えてしまって、他の女を自分から拒んでしまうのか?
「おにぃ!こんな時間まで何してたのよ!?」
と、可憐は少し頬を膨らませて問いただす。
「おっ、心配してくれんの?」
「はぁ?だっ誰が?おにぃの事なんて…ぜっ全然心配なんか…してないんだからね!」
「せっかくご飯作ったのに無駄になるのが嫌なだけだし…メールぐらいしろ!」
可憐は俺を指差すと、頬を膨らませながら言った。
「あっ…悪りぃマジで忘れてた本当ごめんな。せっかくお前が作ってくれてるのに……。」
それは、俺が悪かったと素直に謝ると、妹は分かればいいなどと、頬を赤く染め、そっぽを向きながら言った。
そういえば、何故可憐が作るのかと言うと、俺たちの両親は、二人とも海外出張が多い会社に勤務しており、自宅に帰ってくるのは、一年に二、三回ぐらいなのだ。なので俺と可憐は実質二人暮らしということになる。
「てか、なんで遅れたの?もっ、もしかして女の子とデートに!?」
「ほんと、残念ながら違うんですよねー。そんな出会い全く無いんですよ!」
「うん…わかってた。おにぃが…ねぇ」
「ほっとけよ!」
可憐はクスクスっと笑うと今度は頬を赤く染め、妙にもじもじしながら言う。
「おにぃには、もっと近くに出会いが転がってるんじゃ無い…、かな?」
「近くに?編集とかか?まぁ綺麗な人とかいるけどなんか別れて気まずくなって編集に行けないなんてことになったら困るしなぁ…。」
「いやいや、もっと近くだって!いっつも…いーっつも側にいるぐらいの…。」
「誰だよ…あぁ理沙とかか?あいつは、たまに来るだけでいつもじゃ無いだろ?幼馴染みで、仲はいいかもだけど…。」
理沙とは幼馴染で、昔からよく家に遊びに来る。理沙も可憐に負けず劣らずの美人だが、モデルやアイドルなどに全く興味が無のでスカウトなどはすべて断っていた。学校中の男子生徒から告白されていたのを何度も見たことがある。そんな美人に恋をするなど、俺はそんな無謀な事はしない。まぁ、理沙は歳こそ俺と同じだが、姉のようなものだからな…。
などと頭の中で考えていると…。
「もう!おにぃなんて知らない!勝手にしろ!このにぶちん!」
「なに怒ってんだよ?意味わかんねぇよ」
可憐は、ふんっ!といって階段を上って自分の部屋にはいっていった。
「はぁ?なんなんだ?JKは色々と難しいな。」
などと呟きながら、俺も階段を上り、自室に入った。
ベッドに座ると、カバンの中から担当編集に貰ったライトノベルを取り出す。俺がイラストを担当する作品『妹がこの頃可愛すぎて困ってます。』通称『妹こま』である。
『妹こま』は、俺のコンビである冬空流星先生のデビュー作にして、空前の大ヒット作となった。
「今回は、どうなんのかな?たしかオーダーは、妹
と主人公の風呂での鉢合わせ?だったかな…。」
ライトノベルではよくある展開ではあるが、そんなマンネリ化した展開でも、面白くしてしまうのが冬空先生だ。
ワクワクしながらページを捲ると、引き込まれてしまい、ページをめくる手が止まらなくなった。
しばらくして、読み終わると強い高揚感を覚えた。
「今回も最高だったな。流石冬空先生だ。こんな人とコンビがくめるなんて光栄極まり無いな。」
感動冷めやらぬうちにこの気持ちを伝えようと、俺は携帯を取り、冬空先生にメッセージを送る。
『今回も最高でした。次号も期待してます。』
と送ると、数十秒で返信が帰ってきた。
「うわっ…、もう帰って来た!相変わらず早いな。こ
の人一日中パソコンと睨めっこでもしてんのか?」
などと考えながら、メールの文面を見た。
『いえいえ、天宮時さんのイラストあってのこの作品です。私一人だけでは、この作品は、全く成立しないと思います。妹こまは、私と天宮時さん二人だから成立するんです。』
と帰ってきて、俺は感動のあまり泣いてしまいそうになった。デビューしてまだ日は浅いが、天才との呼び声高いラノベ作家から、俺の絵があってこその妹こまだと言われしまっては、感動するに決まっている。思わず叫んでしまったら、隣の可憐の部屋からドンドンと壁を叩く音が聞こえた。うるさいというサインだ。時計を見ると、夜中だという事に気付いた。
こんな時間に先生にメッセージを送ってしまって迷惑だっただろうか?俺は、反省して、もう寝る事にした。
◇
翌朝、携帯のアラームに叩き起こされた。
ラノベだと、こういう時は、妹が起こしてくれるのが定石だが、現実でそんな事は無い(少なくとも天宮時家では)アラームを止め、そのまま携帯を取り、カレンダーを見る。今日は理沙と出かける約束をしていた。
これはデートなどではなく、服を買ったりラノベやらの本を買ったりというありきたりなお出かけだ。
理沙が家にきてくれる事になっている。
「理沙が来る前に、風呂にでも入っておくか。目も覚めるし。」
そんな事を呟きながら風呂に向かった。
脱衣所に着いて服を脱ぐと、風呂の扉を開けた。
するとそこには……。
——可憐の姿があった……。
おいおいおい…これ『妹こま』と全く同じ展開じゃねーか!!!
「かかか、可憐!入ってたのか!?」
俺は慌てて目を背け、下半身をタオルで隠した。
だが、一瞬見えた妹の胸は、あまり成長していないように感じた。
「ひゃっ///おっ、おにぃ!なななんで入ってきてんの!入浴中のふだ見えなかったの!?」
「わ悪りぃ…寝ぼけてたんだ」
「いや…、ラノベじゃ無いんだからさ…。てか、早く出け!!変態!シスコン!死ね!」
「ほんと、すいませんしたぁ!!」
俺は全裸のまま着替えを持って、脱衣所にを飛び出した。リビングで着替えようと走って向っていたら、リビングに行く途中にある玄関には、理沙の姿があった。本日二度目の修羅場。しかも、一方的に見られただけで、ラッキースケベもクソも無い。
「きゃっ///泰正?なな、何で裸なの?露出狂?」
「おい!最後の一言なんだよ!てか、なんでこの状況で冷静にボケれるんだよ?」
俺はタオルで、下半身を隠しながら言う。
「いや~、それほどでも~、少ししかないよ~。」
「いや…、何があるんだよ。つーか、褒めてないし!ここで少し待ってろ着替えて来る。事情は後でちゃんと話すから…。」
理沙は、「わかった」と、言うと、携帯を弄り始めた。正直ホッとした。理沙が本気で恥ずかしがり、変態などと言って、家を出て行ってしまったら、どう弁解すれば良いのか分からないし、何より理沙との関係を壊したく無い。俺にとって大切な幼馴染兼友達だからな。着替えを済ませ、リビングに向かった。
「理沙待たせたな。それと…さっきは、すまなかった…。」
「いや大丈夫だよ…でもなんで全裸だったのやっぱりろしゅ——」
「それは無い」
きっぱりと断言し、経緯を話した…
このまま露出狂だと思われたままでは敵わないからな。
「へ~、眠気にこじつけて覗きですか~?泰正だーいーたんー。」
「だから、そんなんじゃ…」
「わかってるって!泰正はそんな事しないって。」
「分かってくれてよかったー!お前との関係が壊れたら本当どうしようかと思った…」
俺は、ホッと胸を撫で下ろす。
「や、泰正は、そんなに私と一緒にいたいの?」
「そんなの当たり前だろ?お前は大切な幼馴染なんだから!」
「へっ…、へ~そ~なんだ。ふぅ~ん…いいよ!じゃあこれからも宜しくね!泰正!」
理沙は笑顔で言った。その笑顔は反則的なくらい可愛いく、ドキッときてしまった。
「じゃあ行こっか!」
と言って、理沙は腕を組んできた。
そして、俺の腕に柔らかい感触が……。
「お…、おい!理沙!そっ、そんなにくっつくなって…」
「別にい~じゃん!だって私と泰正は~両おも……。」
「よくねーよ…、ってか最後何て言ったんだ?」
理沙は、頬を赤くしながらなんでもないなどと言って、俺をポコポコ殴ってきた。
すげー可愛いなぁ…と、俺がデレデレしていると、可憐が風呂から上がって来た。
「おにぃさっきは、おにぃが悪る…、ゲッ…メス豚」
「どっちが?その貧相な胸見せつけて、誘惑してた人にそんなこと言われたくないんだけど…」
理沙は、呆れたように嫌味を言った。
「はぁ?なっ何言ってんの?にぃにが、勝手に入ってきたの!」
はい。ごもっともです。申し訳ありません。謝罪ははさて置き、こいつらは、顔を合わせるといつも喧嘩になる。昔はすごく仲が良く、あの二人が一緒に、料理を作ってくれたのを、良く覚えている。
「また食いたいなぁ…。」
しまった。思っていたことが、つい声に出てしまった。
「ん?何が?」
二人が同時に、同じ質問をしてきた。
こいつら本当は仲良いんじゃないのか?
「えっとな、お前らさ、昔二人で仲良く俺に料理作ってくれたよな。それをまた食べたいなー…、って思ってな。」
二人は、驚いてポカンとした顔でこちらを観ていた。
「おにぃ…、何で?いつも私が作ってあげてるじゃん?」
確かに味は、あの時と変わらない…いや、あの時よりも美味いが…。
「俺は、料理というよりも、大好きなお前達が、昔のように仲良くしてほしいんだよ。」
俺がそう言うと、二人は顔を真っ赤にして、顔を見合わせていた。
「泰正そう言うのなら…。」
「おにぃがそう言うのなら…。」
二人が、同時に呟いた。やっぱり仲いいんじゃないか?
「じゃあこれからも宜しくね。メスブ…理沙さん。」
「うん宜しく。これからはライバルね。貧に…可憐ちゃん!」
おいおい…、大丈夫なのか?てかライバルってなんだ?頼むよマジで仲良くしてくれよ…と心配しつつ仲良くなってくれることを期待してしまう俺であった。
この頃、ラノベ作家を描くラノベが多いような気がします。なので逆にイラストレーターの物語を書いて見ました。これからもどんどん投稿していくので感想、レビューよろしくお願いたします。